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Interview

『金がすべてを狂わせる』コミカライズは作者自ら引き寄せた!? リアルさを生むインプット方法を詳しく解説

小説投稿プラットフォーム『Teller Novel(以下テラーノベル)』では、日々コミカライズされる作品やクリエイターが続出しています。
『Teller Novel more(テラーノベルモア)』は、コミカライズされた原作小説の制作エピソードや裏側など、創作活動のヒントとなるコンテンツをお届け!
今回は『金がすべてを狂わせる』『異常心理犯 VS 未来視探偵』の2作品が立て続けにコミカライズされた、ミステリー作家の田中静人さんにインタビュー。
第1弾では『金がすべてを狂わせる』コミカライズのきっかけや、田中さんが普段実践されているストーリー作りのプロセスについてもお話しいただきました。作中の“リアルな会話”を生み出すインプットの秘密にも迫ります!

編集者との二人三脚も。『金がすべてを狂わせる』誕生ストーリー

Teller Novel more編集部(以下TNM編集部)
いつも素敵な作品を発表してくださり、本当にありがとうございます! 昨年10月から『ホンコミ』を皮切りに、全国電子書店での配信がスタートした『金がすべてを狂わせる』は、どんなストーリーですか?

田中静人さん(以下田中さん)
貧乏な兄弟が、親しくしている老人が隠している大金を見つけてしまってから、人生が大きく狂ってしまうお話、かな。

TNM編集部
ありがとうございます。この作品の創作や、テラーノベルに投稿していただいたきっかけをお聞かせいただけますか。

田中さん
まず編集者さんから「3億円事件を題材にしたお話を書いてみませんか?」とご提案があって。 それで原型となるプロットを出したんですけど、現実の事件をモデルにすることがNGになり、今の形になりました。

TNM編集部
テラーノベルが提示したテーマから、オーダーメイドのように考えてくださったんですね。

田中さん
そうですね。

TNM編集部
提案があった時点で、コミカライズなどの展開はすでに予定されていたんですか?

田中さん
記憶は曖昧なんですけど、当初の段階でもう「マルチ展開したい」ってお話があったんですね。なので編集部からは、「なるべく映像化しやすい展開を心がけて書きましょう!」ってアドバイスがあったと記憶しています。

TNM編集部
ずいぶん簡単に言いますね(笑)。

田中さん
(笑)。初めに編集部に提出した段階で、編集者さんと「ここはこうしましょう」「ここはこうしましょう」と、電話で何度もやりとりしました。

TNM編集部
そうだったんですね。

田中さん
はい。「この時間に打ち合わせしましょう!」って、仕事終わりにファミレスで電話をしながら、ずっと書いてた記憶がありますね。大変でしたが、とてもありがたかったです。
編集者さんからの「こうしたらもっと良くなりますよ」ってアドバイスを取り入れて書いたので、それが良かったんじゃないかなと思ってますね。

コミカライズのチャンスは、意外なところに転がっていた!?

TNM編集部
コミカライズが決まったときのお気持ちで、覚えていることはありますか?

田中さん
時系列的には『異常心理犯 VS 未来視探偵』のコミカライズが最初に決まって、次にこちらのお話をいただいたんです。コミカライズが決まったことよりも、その経緯のほうがうれしかったですね。
ユーナさん(編集部注:国内Webtoonのヒットメーカーであるユーナ株式会社)の社長さんが、私の作品を愛読されていたらしくて。

TNM編集部
そんなことが!
 
田中さん
はい。それがきっかけで『金がすべてを狂わせる』のコミカライズが決まったと聞きました。

TNM編集部
もうしっかり関係者の中にファンの方がいらっしゃって、すごいですね(驚)。業界の方ってアンテナを張って、常に色々な作品に触れていらっしゃいますよね。

田中さん
とてもありがたいお話ですね。

TNM編集部
田中さんの数ある作品の中で『金がすべてを狂わせる』が原作に決まったわけですが、ご自身では何が決め手になったんだと思われますか?

田中さん
お話をいただいたときは、「この作品なんだ!」って驚きが大きかったんですね。「なんでかな」って考えると、お金に関するトラブルって、やっぱり多くの人にとって普遍的なテーマじゃないですか。「身近だから」っていうのが決め手なんじゃないかなと。それぐらいしか思い浮かばない(笑)。
あとは先ほどのお話と重複しちゃうんですけど、制作当初から編集者さんと「どうすれば次へ次へと読み進めてもらえるか」と考えて、密にやり取りしていた内容をどんどん取り込んでいったので、それがウケたんじゃないかなって思っています。

田中静人さん流・ストーリー作りのプロセスは“逆算”型

TNM編集部
金銭トラブルのような普遍的なテーマにも、創作のきっかけになるネタがあるんですね。

田中さん
うーん、基本的には自分は、テーマで作品を考えたりはしないんです。自分が書きたい物語が、「こういうテーマだったんだな」って、後から気付くことが多くて。

TNM編集部
そうなんですね。では原案はどういった形でできるんでしょうか。

田中さん
基本的に僕はストーリーから思い浮かぶタイプで、「こういうシーンを書きたい!」っていうのが、スタート地点なんです。
例えば、感動的なシーンだとか悲劇的なシーンだとか、そういう一場面だけが、まず頭の中に浮かぶ。
それで「その場面に至るにはどうしたらいいか?」「なぜその場面に至ったのか?」と突き詰めていくとストーリーが広がっていって、必然的に冒頭も決まってくる。
キャラクターも、「こういう物語なら、じゃあこういうキャラクターが必要だよな」とどんどん広がっていく……って感じですね。

TNM編集部
そんなプロセスなんですね。登場人物の細かい設定や、登場人物同士の入り組んだ人間模様なども、まずワンシーンを思い浮かべてから、繋げていくんですか?

田中さん
基本的にはそうなりますね。

TNM編集部
そうやって作品ができていくんですね! テラーノベルで『金がすべてを狂わせる』を投稿してみて、読者さんの反応は狙い通りでしたか?

田中さん
それが、編集者さんと期待していた反応と、微妙に異なっていることもあったんです。自分でも迷っていたある展開について、一部の読者さんから「これだけはありえない」みたいなコメントがあって。
最終的な結末はすでに決まってはいたんですけど、コメントをきっかけに「どうしたらよかったんだろうな」って考えちゃいましたね。やっぱり読者さんの生の声って気持ちがダイレクトに届くので、その分グサッとくるんですよ。

自分の作品がマンガになった感想は?

TNM編集部
ああ……(泣)。自分でも迷ってらっしゃった部分だと、なおのこと心に残りますよね。チャールズ後藤さんのマンガを実際にご覧になったときは、どう思われましたか。

田中さん
やっぱり「漫画家さんってすごいな〜!」って思いましたね。自分も原作を書いている段階である程度、頭の中に映像を作ってはいるんですけど、いざ実際に漫画になったのを見ると、自分の想像をはるかに超えて提示してくれます。
「こういう解釈もあるんだ」とかネームの段階で毎回新たな驚きがあって、「着想がすごいな」と思うこともあります。

TNM編集部
そうなんですね。「ここはすごい!」と感じた漫画家さんの表現はありましたか?

田中さん
そうですね。佐竹さん(『金がすべてを狂わせる』の主要登場人物)が殺意を見せる、原作でも結構大事な場面があって。マンガの画風もあって、おどろおどろしさというか、文字だけでは伝わらない雰囲気や怖さが可視化されていて、本当にすごいなって思いました

TNM編集部
逆に、なにかネガティブなギャップはありましたか。

田中さん
あんまり感じたことはないですね。自分は漫画の表現に関しては素人なので、「これが1番いい表現なんだろうな」ってすぐに受け入れられました。だから気になった点って、ほとんどないですね。

キャラを取り巻く“リアルな雰囲気”の生み出し方って?

TNM編集部
それはよかったです。あと私、田中さんにすごくお聞きしたいなと思っていたことがあって。
田中さんの作品には、幅広い年代の人物が登場しますよね。
ママ友に聞いたことのあるような、小学生の女の子同士の陰湿なやり取りの雰囲気や、大人びた高校生同士の会話のリアルさについ引き込まれてしまいますが、こういう細かい掛け合いの言葉のチョイスとか、そういうセンスはどうやって磨かれるのかな? って。

田中さん
自分の場合、何十年も前の記憶ですけど、忘れずに残っていることが多いんですよ。それを掘り起こして作品に落とし込んでいったら、結果的にリアルになったんだと思います。
スマホのありなしとかそういう時代背景の違いはありますが、本質的な部分はあんまり変わらないと思うんです。なので当時の記憶のままに書いているといいますか……。

TNM編集部
そうなんですね(驚)。じゃあ、例えば真奈ちゃん(『金がすべてを狂わせる』の主人公で、小学生の女の子)の同級生とのやり取りは、田中さんのなかの「小学生の女の子」の記憶を掘り起こして書いているんでしょうか。

田中さん
そうですね。あとは小学生が主人公の漫画や小説を読んで、「こう書けば読者は違和感なく受け入れられるかな」っていうのをある程度ストックしておく。実際の体験と創作物を組み合わせることで、ある程度リアルに近づくのかなと思っています。 小学生を主人公にするなら、小学校を舞台にした作品を読むのも大事だと思いますね。

膨大な候補からピッタリの資料を選ぶ、インプットのコツ

TNM編集部
例えば「小学生が主人公の少女漫画を読もう」といっても、すごく色々なジャンルがあるじゃないですか。どうやって作品をチョイスされているんですか。

田中さん
僕には姉がいて、姉の『りぼん』とか、少女漫画をずっと傍らで読んでいたんです。そういう背景もあって、この年代になってもある程度は自然に読む習慣がありました。そこから、 自分が書こうとしている作品に合う舞台や設定を参考にするようにしています。それだけでは足りないときは、新たに探して読んで参考にして……の繰り返しですね。

TNM編集部
なるほど。どうやってイメージしている作品にたどり着くんですか? なにか独自の方法があるんでしょうか。

田中さん
まずはGoogleで単語をいくつか入れて検索してみます。それで、出た検索結果から、一番売れている作品を見てみる。そこから派生して、今度はAmazonでも「自分の作風に近いかな」とかそういうニッチな部分まで検索してみると、Googleとは結構違った結果が出てくるんです。
なかには無料で読める作品もあるので、それをどんどん自分のスマホに入れていって、空き時間に読むようにして。「あ、これ面白いな」って思ったら、続刊を読んでみるとか。なのでもう本当に物量作戦と言いますか(笑)。どんどんどんどん読んでみてっていう……。

TNM編集部
じゃあ下調べというか、作品に至るまでにも、作品に関するインプットにかなり時間をかけていらっしゃるんですね。

田中さん
そうですね。ある程度はかけているつもりです。

TNM編集部
作品を書きながら並行してインプットするのか、それともインプットし尽くしてから作品を書くのかでいうと、どちらに近いですか?

田中さん
状況によりけりですね。依頼があった場合は「書きつつ、プロットを進めつつ、インプットする」が基本軸になるんですけど、作品を書いていない時期は、自分の書きたい内容の調べ物をして……っていう、インプット中心の生活になります。

TNM編集部
作家さんにお話を伺うと、本当にすごいインプット量だな、と思うことばかりです。

自らの作品がコミカライズのチャンスを引き寄せたという、なんとも強運なエピソードは非常に印象的ですね!
次回は田中さんの物量インプット作戦(!?)から生まれたテラーノベルの人気作品『異常心理犯 VS 未来視探偵』のコミカライズ裏話をうかがいます。
魅力的なキャラクターの作り方について、ご自身の考え方も語ってくださっています。第2弾もぜひお楽しみに!

田中静人さんの作品はコチラ

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今回協力いただいたクリエイター

田中静人さん(テラーノベル公式作家)

『陽気な死体は、ぼくの知らない空を見ていた』が『このミステリーがすごい!』大賞(宝島社)で「超隠し玉」を受賞し、作家デビュー。

テラーノベル作品一覧
https://teller.jp/user/18uq3movi0pmd-8475266895
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http://sakkanoaidokusho.com/
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TNM編集部 土屋

不定期にネトフリ廃人になります。子どもたちが寝たあと、バブを入れた湯船でひっそりTNやWebコミックを読むのが好物。

  1. 多様なジャンルを手掛ける作家にインタビューしてみたら、エンタメ事情が既にエンタメだった

  2. 『学級裁判デスゲーム』原作者・雨宮黄英さんに聞く、コミカライズや創作の裏話

  3. ミステリー作家・田中静人さんが実践する“ダメなときの気分転換”のレベルが高すぎた

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