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『異常心理犯 VS 未来視探偵』原作者・田中静人さんに聞く、“魅力と共感”の作り方

小説投稿プラットフォーム『Teller Novel(以下テラーノベル)』のコミカライズプロジェクトや裏側のエピソードを紹介する『Teller Novel more(以下TNM)』。
今回は『金がすべてを狂わせる』『異常心理犯 VS 未来視探偵』の2作品が立て続けにコミカライズされた、ミステリー作家の田中静人さんにインタビュー!
第2弾となる今回は、『comic Killa(コミック・キラ)』(ぶんか社)でコミカライズされた『異常心理犯 VS 未来視探偵』制作の背景や、共感されるキャラクター作りのために意識しているポイントも教えていただきました。

インタビュー第1弾や、作品はココから!

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『金がすべてを狂わせる』コミカライズの裏側やストーリーの作り方、“リアルさ”を生み出すインプット方法を聞いちゃいました!

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『異常心理犯 VS 未来視探偵』ってどんなストーリー?

Teller Novel more編集部(以下TNM編集部)
2作品のうち『異常心理犯 VS 未来視探偵』のコミカライズが初めに決定したと伺いました。こちらはどんなストーリーですか?

田中静人さん(以下田中さん)
未来を見ることのできる高校生が、プロファイリングの得意な同級生と協力して異常心理犯を追うお話です。
編集者さんと「新作どうしましょうか」という話になって、いくつか候補があった中で、一番感触が良かった原案を掘り下げて作品にしました。

TNM編集部
作中にはプロファイリングに関する知識が出てきたり、ストーカーの分類を解説するシーンがあったりしますが、作品を書くにあたって、その分野の専門書を読み込まれたんでしょうか。

田中さん
前から興味があって、もともと資料は読んでいました。書くにあたって、改めて詳しく読み込みましたね。

TNM編集部
普段のインプットがそのまま活きた作品なんですね。田中さんはご興味の幅がすごく広いですよね。

田中さん
興味の幅を狭めると「このジャンルを書きませんか」と具体的なお話をもらったときに対応できないなと思って。なるべく幅を広げて読むようにはしていますね。

TNM編集部
原案がいくつかあった中で決定したとのことですが、常に何本も書きたい作品がある状態なんですか?

田中さん
そうですね。基本的には書きたいものをストックしていて、依頼があったら何かしら対応できるように心がけています。

TNM編集部
そうなんですね(驚)! いつも何本ぐらいのストーリーを、どんな粒度で考えていらっしゃるんですか。

田中さん
現状は、3本並行して考えてます。今自分が一番書きたいものを中心にどんどん掘り下げていって、他にも別軸で書きたいものがあった場合は、それに関する物語や他の作家さんの物語など、空き時間に資料を読んだりしながら作品の筋を書いて、プロットを煮詰めていく……みたいな、そんな感じの並行作業ですね。

TNM編集部
『異常心理犯 VS 未来視探偵』は冒頭で紹介いただいたようにキャラクターや筋書きがとても特徴的な作品ですが、何か着想のきっかけはありましたか?

田中さん
スティーヴン・キングの、『デッドゾーン』って作品(編集部注:昏睡から目覚め未来が予知できるようになった主人公の運命を描いたSF小説)があるんですよ。それを読んだときに、めちゃくちゃ感動して。
「いつか自分なりの『デッドゾーン』を書いてみたい」っていう思いが根底にあったんです。

作品のコミカライズで驚いたのは? 制作プロセスも聞いてみた

TNM編集部
そんな経緯があったんですね! 作品がコミカライズして、いいギャップ、悪いギャップはありましたか。

田中さん
いいギャップはですね、「ここ感動させたいな」って部分が原作にあったんですけど、そこがすごく丁寧に、自分の想像以上にきれいに表現されていたことです。
あとは悪いギャップというわけではないんですが、主人公の2人が、作品の中で同性愛を思わせるような場面があって。原作を書いているときは一切考えてなかったので、「こういう解釈もあるんだな」と。びっくりしたって意味ではギャップでしたね〜。

TNM編集部
そのシーンはそのままイキにしたんですか。

田中さん
もちろん 「そのままでいってください!」で(笑)。

TNM編集部
そうでしたか、ありがとうございます。毎回、どんなプロセスで漫画作品になっていくんですか。

田中さん
まずキャラクターデザインとかネームが来る。で、ネームを読んでみて、「ここはこうした方がいいんじゃないか」ってフィードバックを送ると、修正されたネームと、こちらのエクスキューズの回答が届く。
確認して「わかりました」って送ると、しばらくして完成原稿が届いて、それを最終確認する……って流れですね。

TNM編集部
どのくらいの期間をかけて、1話完成されるんですか。

田中さん
期間で言うと、ひと月に2話くらい。

TNM編集部
大体2〜3週間ほどかけて完成させるスピード感でしょうか。思った以上にスピーディ(驚)! 『異常心理犯 VS 未来視探偵』は、原作とは違ったアレンジが加わっているお話もあるんですか?

田中さん
ありますね。特に最新話でも、原作には無かった展開が1話加わっていて、自分も推理しながら読んだんですけど、全然間違ってました(笑)。
そういうところも、新たな驚きというか。真剣に取り組んでいただいてありがたいなって、すごく思いましたね。

TNM編集部
そのアレンジは、漫画家の坂元輝弥さんの提案なんでしょうか。すごいですね。

田中さん
そうなんですよ。毎回メールが来るのが楽しみですね。

田中さんが思う、“魅力的なキャラクター”の生み出し方って?

TNM編集部
田中さんは「書きたい一場面」からストーリーを膨らませていくと伺いましたが、キャラクターはどんな風に考えたり、広げたりされていますか?

田中さん
「こういうジャンルの作品を書いてほしい」と提案をいただく場合や、自分自身が「このジャンルの作品を書きたい」って思ったときは、「そのジャンルに登場するには、どんな人物がふさわしいか」を突き詰めて、キャラクターから考えます。


例えば、不動産に関する作品のキャラクターなら、「事故物件に詳しい人」とか「事故物件に住みつく幽霊が見える人」だとか、「お祓いができる職業にしようかな」とかそういった感じで、ジャンルに関する登場人物を色々考えるのがスタートになりますね。

TNM編集部
なるほど〜。ご自身の中でたくさんブレストされた中から絞っていくんでしょうか。出し過ぎて収集つかなくなることはありませんか?

田中さん
キャラクターがブレるっていうか、一般的じゃないキャラクターになってしまうことが結構多いんです(笑)。突拍子もないキャラクターって確かに魅力的なんですけど、それが読者に受け入れられるかっていうと別の話で。
なるべく筋の通ったキャラクターを考えるようにはしてますけど、難しいですよね。編集さんの意見を聞きつつ調整することが多いです。

TNM編集部
「突拍子もないキャラクター」と「実際に作品に登場するキャラクター」の差分って、どこにあると思いますか?

田中さん
突拍子もない部分がありつつも、読者が「あー、あるある!」とか「そうだよね〜」って共感できる部分を差しはさむことが大事なんじゃないかなって思いますね。

TNM編集部
読者の共感を得られるポイントとして、意識しているところってありますか。

田中さん
突拍子もないキャラクターではありつつも、一般的な弱点があるだとか。 例えば「すんごい威張ってるキャラなんだけど、実は犬が嫌い」みたいな。
「普通の人にとっては大したことないけど、この人にとってはとても怖い」みたいな意外な弱点があると、共感を得られやすいんじゃないかなって思います。

TNM編集部
そうですね。田中さんのなかで、特に印象に残っているキャラクターはありますか?

田中さん
東野圭吾さんの『探偵ガリレオ』のガリレオ先生は、「すごく頭が良いけど、すごく子供が苦手」っていう。最初は「これどうなのかな」と思ったんですけど、それを活かした長編が出たときに納得というか驚きというか、「さすが東野圭吾さんだ!」って。
やっぱり弱点や欠点があると共感を得やすいなって、本当に思いましたね。

TNM編集部
「それってどうなん?」っていう象徴的なポイントということですね。ご自身の作品のキャラクターについても、作品中に出てこないにしろ、そういった設定を細かく考えているんでしょうか。

田中さん
そうですね。なるべく入れるようにしてます。

TNM編集部
『異常心理犯 VS 未来視探偵』の拓くん(主人公)は、別に欠点ではないと思うんですが、結構女の子が好きですよね(笑)。確かにキャラとしてすごく印象に残ります。ああいう感じですか?

田中さん
そうですね。あと恭一(もう一人の主人公)も、「人に触れられない」ってもう、明確な弱点があるじゃないですか。あれは目立つ弱点ですが、「読者さんに分かりやすく共感してもらいたいな」となるべく考えてますね。

キャラクターの膨らませ方、共感ポイントの作り方など、参考になるお話が盛りだくさんの田中静人さんインタビュー第2弾、いかがでしたか?
第3弾では田中さんの創作歴や、創作に行き詰まったときの突破法、気分転換についてもお聞きしてみました。田中さんが実践されているという意外な方法も教えていただきましたので、ぜひお楽しみに!

田中静人さんの作品はコチラ

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今回協力いただいたクリエイター

田中静人さん(テラーノベル公式作家)

『陽気な死体は、ぼくの知らない空を見ていた』が『このミステリーがすごい!』大賞(宝島社)で「超隠し玉」を受賞し、作家デビュー。

テラーノベル作品一覧
https://teller.jp/user/18uq3movi0pmd-8475266895
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http://sakkanoaidokusho.com/
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https://twitter.com/kanatan_jg

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TNM編集部 土屋

不定期にネトフリ廃人になります。子どもたちが寝たあと、バブを入れた湯船でひっそりTNやWebコミックを読むのが好物。

  1. 多様なジャンルを手掛ける作家にインタビューしてみたら、エンタメ事情が既にエンタメだった

  2. 『学級裁判デスゲーム』原作者・雨宮黄英さんに聞く、コミカライズや創作の裏話

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