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それからそいつは、ぽつりぽつりと、拙い韓国語で、自らの身の上を話し始めた。
中学2年になってふた月も経たない内に、親の仕事の都合で、日本から韓国にやって来たこと。今は現地の日本人学校に通っていること。1日でも早く、この国での生活に馴染むべく、韓国語を勉強していること。それでも日本人であることを知られたくなくて、常に人目を避けながら日々を過ごしていること。
「ただでさえ、日本と韓国の関係は、良くありませんから……」
「でも、ヒョンニムにはもう俺がいるんだぜ。俺は100パーセント、お前の味方なんだぜ」
背中に手を置いてそう宣う。するとそいつは漸く、少しだけ笑った。
「貴方は……いつも此処に、遊びに来るんですか」
「毎日じゃないけど、よく来るんだぜ。それが?」
「その……また、会いに、来てくれますか」
期待と望みに震える瞳の奥に、俺の顔が映る。答えは当然、一択しかない。
「勿論なんだぜ!」
「そうだヒョンニム……名前は?」
「……菊です」
「良い名前だな。俺はヨンス!宜しくなんだぜ」
「ええ……此方こそ」