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「2人に仕事を任せてみない?」
「…は?」
「私が行ってるギルドに頼れる人が居るんだけどね、その人世話好きだし強いから怪我の心配もないと思うけど?」
「…どうせお前も裏切るんだろ?」
サーナルガの赤い瞳はとても暗く、絶望を知っている目だった
私は座り込んでいる彼の前にしゃがみ込んだ
『君と私で契約しない?裏切らないし、裏切らせない、君にはピッタリじゃない?』
「…どうやってだ?」
私は少し黙り込んだ、彼とした契約は『質問に答えてもらう』と言う契約だからだ
「…弟と妹、幸せにしたいんでしょ?なら潔くこの契約に乗る事をおすすめするよ」
私はそう言ってフッと笑った
今こそ前世の狂人の笑顔を使う時と思った
彼の顔は絶望でも驚きでも無く、無表情だった
「…弟と妹に手を出したらただじゃおかないからな」
サーナルガはそう言って立ち上がる
「今週の土曜、その頼れる人とやらに合わせろ、移動費は払えないぞ?」
「それぐらい私が払うよ、弟と妹にも手を出さない」
そう言うと彼は私から目を逸らして歩いて行った
ー1ーAの寮ー
「ただいまー」
靴を脱ぎながらリビングに届くぐらいの声で言うと部屋の中から「おかえり」と言う声が聞こえた、誰かのおかえりを聞くのはいつぶりだろう
部屋に入るとクラスメイトが何人か自由に過ごしていた、ソファーに座ると階段から足音がした、
「おかえりなさい、お疲れ様です」
階段からリュータルが降りてきた、手には分厚い本があり、髪も解かれているから自分の時間を過ごしていたのだろう
「ただいま、別に降りてこなくてよかったのに…」
「…昔っからこうゆうので、嫌でしたか?」
「…?、いいや!嬉しいよ」
リュートルの声のトーンがいつもより低い気がした、瞳が震えている
「そういえばファイアールは居ないの?」
話を変えようとリュートルに聞くと彼は気まずそうに顔を背けた
「…たでーま」
顔や手に血が付いたファイアールがリビングに入って来た
「…どした?」
「はぁ…全く貴方って人は、とりあえず体でも洗ってきてください、湯は張ってありますよ」
「世話焼きだなてめぇは…」
ファイアールはそう言って浴室に向かおうとして、突然少しだけ足を止めた
「…あんがと」
リビングに居る人全員が固まった、皆んなの視線がファイアールに向くと彼は舌打ちをしてまた歩いてった
「あいつお礼言えるんだ…」
「礼儀はしっかりしてるんですね」
リュートルと目が合うとお互いフッと笑ってしまった
「そういえば、ファイアール何したか知ってる?」
「…先輩に喧嘩売られたから買ったそうですよ、勝ったらしいです」
私はファイアールが想像以上に問題児だと気づいた、そして諦めた
「勝ったならいっか」
「よくないです」
リビングで適当に過ごしているとしばらくしてファイアールが風呂から上がってきた
半袖のラフな服からは腕の火傷が見える、 髪はまだ濡れてるからタオルを被っている
そんな彼を見てリュートルはファイアールを自分が座っているソファーに座らせて彼が頭に被っていたタオルを使って髪を拭いていた
「ファイアール、さっきの血って返り血?」
「それ以外あるかよ」
「あなたが傷ついてる可能性があったから聞いたんですよ?」
「うるせぇ、んな訳あるか」
また口喧嘩だ、でもこんな喧嘩してても髪を拭かれるのには抵抗していない所は少し可愛い、これがツンデレか
「…抵抗しないんですね」
「して欲しいのか?」
「面倒くさいので嫌です」
リュートルの手はずっと動いている、昔っから面倒を見る事が多かったのだろうか
「リュートルって妹か弟居たの?」
「いいえ、”居なかったと思いますよ”」
なぜそんな言い方をするのだろうか、まるで家族構成を知らないような言い方だ
「そう言えばなんですけど、ファイアールのその片目って何があったんですか?その火傷も」
「…俺に勝てたら教えてやるよ♪」
ファイアールはそう言うと顔をリュートルの方に向けて舌を出した
「…やはりあなたは礼儀がなってませんね」
「礼儀なんて知らねぇからな、しゃーねぇだろ?」
「…じゃあ私には教えてくれるよね?」
「てめぇには絶対教えねぇ」
「なんで!?私ファイアールに勝ってるよ!?」
ファイアールはどうやら私の事が嫌いなのだろう、めっちゃ冷たい
炎魔法使いなのに…
「教えるにしてもまだ信頼が足りねぇし、戦うのはお互いが了承してからだ、だから戦うのはまたいつかだ」
「やった!じゃあいつ戦う?明日?明後日?あーでも土曜日は無理だな…なんなら今すぐでもいいよ!」
「ほんっとわかりやすいよな、てめぇ」
ファイアールはため息をついて前を向く
「…ファイアールお願いがあるんですけど、土曜日にある店の魔導書を買ってきてくれません?」
ファイアールの髪を拭き終わったリュートルがタオルを畳みながら言う
「…自分で行けよ」
「外に行きたくないんです」
「どこの引きこもりじゃてめぇ、無理だ俺は土曜に用事があるんだ」
ファイアールはそう言うと畳まれたタオルをリュートルから奪って自分の部屋に持って行った
ー土曜日、1ーAの寮の玄関ー
「ファイアール、覚えてますね?」
「あーはいはい、しゃーなしな」
2人が玄関で話をしている、ファイアールは襟があるシャツに軽めの上着を着ている、私はフードっぽい薄生地の上着にスカートを履いている
「行ってらっしゃい」
人に見送られるのはいつぶりだろう、とても嬉しかった
「行ってきます」
私とファイアールの声が被ったその時、玄関が少しの笑い声に包まれた
外に出た私は昨日の事を思い出しながら歩いていく、ファイアールとは商店街で別れ、私は馬車の近くの時計台の近くで立つ
彼らは絶対に何かがあった人達だ、なぜわかるかって?私も同じだったからだ