「おぉ〜!らだセンお疲れ様っス!」
「あぁ…ぐちつぼ、君…お疲れ様」
「今帰りっスカ?」
「うん。…あ、でも今から買い出しに行かなきゃいけないんだよ…ごめんね?」
「何謝ってんスカ!俺も行きますよ⭐️」
「え…でも」
「良いんス!どうせ「隣」なんだから!遠慮なく言って下さい!ね!!」
「う、うん…、ありがとう…?」
歯茎を見せながら笑う彼は隣の家に住んでいる「ぐちつぼ」と言う男だった。
後輩で僕のことを先輩と呼ぶ彼は部活の帰り道に必ずと言って良いほど遭遇率が高い。
待っているのかと聞けば、部活終わりが一緒だからという理由で、まぁ結局は待っていたらしい。
疎遠だった彼とは中学に上がると同時に親の関係で親しくなった。
その頃はヤンチャだったのか、奇抜な髪の毛やピアスを開けている彼に、僕は勝手に苦手意識を持っていた。
だが話してみると人当たりも良く、とても接しやすい人間であることが分かった。
良い人オーラ全開の彼が口を開く。
「あっ!そういえばまた出たらしいですね!」
大袈裟に今思い出したと言わんばかりの表情をする彼が僕の瞳を覗き込む。
「な、何が…?」
「あれですよ。あの…あぁ、」
今回は本当に忘れていたようだ。
「『館の悪霊』!」
「…悪霊?」
僕らの通っている学校には様々な「噂」が飛び交っている。
その中でも彼の言った「館の悪霊」は現に面白半分で入った生徒を何人も行方不明にしている。
誰がやったかは知らないが…
「何でも今回は女子生徒もいたらしいんすけど、やっぱり男子生徒だけが掻っ攫われて行くらしいっスネ」
「へぇ〜…」
そういう噂ごとには興味の無い僕が買う物をカゴに入れ終えレジに向かおうとする…が、
後ろから右腕を引っ張られる。
何事かと振り向いてみれば、少し色の抜けた緑がつむじを向けていた。
下を向いている顔を覗くのも不謹慎かと思い、レジに向かう足を止めたままつむじを見つめる。
数秒後に上がった頭と共に、結ばれていた彼の口が開く。
「らっだぁさんは…、らだセンは行かない、ですよね…?」
今にも泣きそうな顔をする彼が何を知っているのか、何を聞いて来たのか僕には分からなかった。
だから冗談だと思った。
「あ〜…たぶん?」
「………そうですか」
腕を力なく離される。
レジに向かう俺の足とは反対に、ぐちつぼの足はその場に止まったままだった。
何なんだよ…一体。
コメント
7件
後輩が優しくていいなぁ……私はそういう後輩居ないからなぁ(´;ω;`) あ、ちなみにアイコンらっだぁの絵に変えました!これからこれでやって行くのでよろしくお願いします!(˶' ᵕ ' ˶)
いい人達だ…こんな後輩…羨ましいぃ…僕のとこめっちゃヤンチャなんですよ…ほんとッヤンキーかっての…ww…ぁ…フォロー前から好きでした!頑張ってください!
可愛い後輩だぁ...😁