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菊が作った朝食のメニューは、どれも絶品だった。改めて、日本食は日本食で美味いなぁ……と思っていると、菊がこう訊ねてきた。
「その、ヨンスさんが良ければ……一緒に散歩なんて、どうでしょうか」
「……散歩?」
「隅田川沿いに公園があるんですよ。気分転換に良いかな、と」
「良いけれど……ばれないよな?」
「なるべく人通りの少ないルートを選んで行きますので、ご安心を」
────そんなわけで菊と向かった、隅田川沿いの公園。まだ時間帯が午前ということもあり、人はあまり多くない。
堂々と聳え立つスカイツリーと、陽光に照らされ水面を煌めかせる隅田川。俺と菊は穴場にあるベンチに並んで座り、自販機で買った缶コーヒーを片手に、のんびりとそれを眺めていた。
「思えば……貴方と初めて出会った場所も、こういう感じの公園でしたね。川のほとりの……」
「そういえば……そうだな」
「あの時私は韓国にいましたから……漢江でしたっけ」
「ああ。漢江なんだぜ。お前、本読んでたろ」
「ふふ、其処まで覚えてるんですか」
春の兆しを匂わせる、穏やかな空気の中────俺は微笑む菊を伊達眼鏡越しに見つめながら、当時のことを思い返していた。