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せめて、寝ているか調子のいい日であってほしい。
そう思いながら病院まで車を飛ばす。
「….ついた。ここだよ。」
「っえ…?ここって….」
「….。」
おらふくんの問いには答えず、病室までの道を進む。
「….?これって…」
おらふくんが病室の入り口にある名前を見て言う。
「ああ、おらふくんは知らないんだっけ。それ、おんりーの本名だよ。」
「えっ?じゃ、じゃあ今おんりーは…」
「…ここに、入院してる。」
「そ、そんなっ…なんか悪い病気とかですか?それとも怪我でもしたんですか?」
「…病気…なのかな。」
おらふくんに、全て説明した。
若年性健忘症の記憶障害について、
おんりーの現状、
なぜおらふくんに黙っていたか、
まだ元に戻る可能性はあること、
….たまに、自身のことすら忘れてしまうこと。
「…じゃ、じゃあ…おんりーは僕のことを..?」
「うん。おらふくんのことを想って、ここにいるんだよ。」
「そ、そんな…一番つらいの…おんりーやのに….」
「…うん。」
「…俺には、なんも言ってくれんかったのって…俺を….」
「おらふくんに心配かけたくないからって。」
「….中、入ってもいいですか。」
「…いいよ。」
カララ…
「….。」
そこにはベッドにスウスウと寝息をたてるおんりーが横たわっていた。
少し、安心した。
「….おんりぃ…」
おらふくんが近付いて、近くの椅子に座る。
「…俺のことなんかええのに。なんでいっつも自分のことは考えんかなぁ….」
そっと顔に手を添える。
「なぁ、おんりぃ….」
なんとも言えないような表情。
きっと、おらふくんのなかでもいろいろ混乱しているんだろう。
「….ごめんなぁ…」
耐えかねたかのように、目から涙が溢れていく。
「….俺のことなんて忘れてもええよ…」
眠るおんりーの髪をくしゃくしゃと撫でながら言う。
「…それで…おんりーが辛い思いせんですむなら…」
「っん….」
「….おんりー?」
おんりーの目がゆっくりと開けられる。
せめて、せめておらふくんのことは覚えている日であってほしいと願った。
でも────
「….?だ、れ….ですか?」