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--風の音だけがやけに耳に残っていた。
ざわ……ざわ……と砂利が転がる乾いた風。
その不気味な静けさに、まぶたの裏がざわつく。
「ここ、どこだ……?」
目を開けた瞬間、俺は理解できなかった。
ひび割れた天井、剥き出しの鉄骨、世界一の高さを誇っていた、タワーの崩壊跡。
海辺に近いのだろうか、波音が耳に響く。
目覚める前の記憶が無い。俺は気絶していたのだろうか。ただ、今分かるのは、自分以外の人の気配が全くしない………
もう、自分の知ってる世界ではなくなっているということだ。
「とりあえず、探索するしかないのか……?」
海は濁って、砂地にはゴミが積み重なるように流れ着いていた。
車も、ビルも。ガラスは粉々で道路だったであろう所に散乱している。
ふと、近くの公園を見ると、そこには小さく、そこだけ切り抜いたような、幻想的な花畑があった。
こんなに世界が荒れているのに対し、この場所だけは空気が澄んで、風の音が花を踊らせていた。
「綺麗………。」
「だよね、私もそう思う。」
「___っ!? 」
驚いて振り返る。
そこに立っていたのは、薄桃色のワンピースを着た、優しそうな女の子だった_____