「…確かに。書類は全部消えてる…」
ノートパソコンに残しておいた依頼内容が何者かの手によって綺麗さっぱり削除されていた。
最悪、自分とは違う組織の者も来ていた為、そっちから依頼内容を回して貰うことも出来るが…
「…あの組織って…まさか……」
俺は一度、その組織と遭遇した事があった。
今回みたいに依頼が被り、先に忍び込んだあちらの組織員が問題を起こしその一件は幕を閉じた。
その時も確か…
「…アイツらだった、か」
らっだぁの仕事が気になって来てみたはいいものの目立った行動は許されない。
下手をすれば見つかって怒られるだろう。
それを避ける為にはアイツにバレないよう、コソコソと尾行するしかなかった。
らっだぁが一番初めに向かったのは「書斎」という場所だった。
部屋の壁には、アートなのでは無いかと疑うほどにみっちりと本が敷き詰められていた。
そんな部屋の真ん中に置いてある木造の机。
背丈の高い椅子に腰を掛けながら、何やら机に置いてある白い紙に集中を向けているらっだぁ。
それをコンちゃんと壁伝いに眺めていると、突然ガタッと言う音と共に上から人が降ってくる。
「己青鬼め!この手で撃ち倒してくれる…!」
腰にあった刀をらっだぁの首に目掛けて思い切り振る男。
いや、姿は黒い布で隠されていて分からないが、声質的に彼は男だろう。
まるで忍者だ。
「らっd」
「しー…」
慌てて走り出ようとするコンちゃんの後ろ襟を引き寄せ、布の上から口を押さえる。
何が何だか分からない様子のコンちゃんに、俺は自分の口に指を当てて静かにするよう促す。
すぐに言うことを聞いてくれたコンちゃんは、らっだぁが狙われる部屋の中を覗く。
ほら。やっぱりな。
いつ、どのように動けば、らっだぁが忍者の首にナイフを突きつける事ができるだろうか。
「言え。何処からの指示で来た?」
これまでに聞いた事の無い声が聞こえる。
らっだぁから発せられているものだと気がつくのに少し時間がかかったのは、自分たちが位置する場所かららっだぁの顔が見えなかったからだ。
いや、それ以前にらっだぁがこんなに「低い声」を出せることを「知らなかった」こともあるだろう。
らっだぁ、お前は…
ザシュッ___
鮮血が宙を舞う。
それと同時に、黒く光るらっだぁの瞳が一瞬見えた気がした。
俺らの知らない、
「らっだぁ」になってしまったんか?
コメント
5件
おあ......ドンマイ刺客
初コメ失礼します! ここまでイッキ読みさせて頂きました!冷酷な黒い瞳...知らなかった 1面がそんな感じだと、ショック?恐怖?ですね...。 没入感半端ないです!
知らなかったっていいな……なんか切ないけど( ´-` ) この物語が学校行く原動力になってて、毎日ワクワクしてます(*´︶`)