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『今度うちの近くで夏祭りがあるんですけど、みんなで行きません?』
ドズルさんから朝のミーティングで突然言われた。
急な話だったけど、意外とみんな乗り気で、
『夏祭り!いいじゃん!』
『射的とか、楽しいですよね』
『おんりーちゃん景品全部取ってそうだなw』
「りんご飴とかあるんすかね!」
もちろん僕もすごく楽しみだった。
『うちで浴衣みんなの分買ったんで当日はそれ着てまわりましょうよ。』
『え?ドズルさん5人分買ったんですか?』
『うん。まぁ嫁ちゃんのも含めたら6人分だけどね。』
『流石社長ー!』
『でも俺浴衣の着方とか分かんないよ?』
『そこは嫁ちゃんがやってくれるんで、安心してください。』
『みるく氏すげぇ…』
ぼんさんが浴衣….
見たい。
当日。一旦ドズルさんちに行って、浴衣に着替えてからお祭り会場に集合だった。僕が行った時はおんりーがいて、もう着替え終わっていた。
「あっ!おんりー!」
おんりーは若竹色の浴衣だった。いかにも和風な、しかし派手すぎない模様で、とても似合っていた。
「あ、おらふくん。」
「おんりーの浴衣めっちゃ似合っとるよ!」
「そう?普段着ることないから分かんないや。」
「色とかめっちゃおんりーっぽい!流石ドズルさん!」
「…うん、そうだね。にしても、ぼんさんもmenもまだなんだよね。」
「そーなの?..,まぁいつものことか。」
「…確かに。はやくおらふくんも着替えなよ。」
「うん!みるくさん、よろしくお願いします!」
「ぼんさん遅いなー…」
集合時間はとっくに過ぎている。他のメンバーはもうお祭りに行ってしまった。僕は、ぼんさんが来たとき誰もいないのは可哀想なので待っている。というか、ぼんさんとまわるつもりだったから別にいいけど。
「あ!おらふくーん!ごめん遅くなっちゃった!」
いつものサングラスをかけていないぼんさんが手を振っている。ドズルさんから借りたであろう下駄をカランコロンいわせながら歩いている。遠くからでも分かる高身長。そして浴衣。
予想通り紫色というか藤色の浴衣で、上に濃い紫の上着みたいなやつを羽織っていた。
「も、もー!ぼんさん遅いっすよ!なにしてたんすか?」
「ちょっと昼寝してたらうっかり…ごめんね?」
「もぉー、しっかりしてくださいよ?」
まぁ、ぼんさんらしいですけどね。
「うん。ところで…もしかして他のみんなってもう行っちゃった?」
「まさかそんなに待たせちゃったなんて…ごめんなさい…」
「だから、もういいですって!お祭り楽しみましょうよ!」
「うん…おらふくんの浴衣、めっちゃかわいい。」
「かわいいって….褒めてんすかそれ。」
「褒めてるよ?めちゃくちゃ似合ってる。」
「あ、ありがとうございます….」
な、なんか恥ずかしい…
「おらふくんの浴衣は雪の柄なんだね。」
「は、はい。ドズルさんが僕っぽいからって。」
僕の浴衣は水色で、雪の結晶の柄だった。
「…ぼんさんも似合ってますよ。…かっこいいです。」
「…そう?ありがと。」
一瞬驚いたような顔をした後、優しい微笑をこちらに向けて、僕の頭にポンポンと手を置く。
思わずドキッとしてしまった。
「そ、それじゃあ行きましょうよ!最初なにします?金魚すくいとかやってみたいです!」
「いいね。勝負する?」
「いいっすよ?負けた方がなんか奢りで!」
「ふふっ。いいよ。」
ぼんさんマイクラとかゲーム結構苦手そうだし、りんご飴でも奢ってもらおうかな。
「嘘だ….」
「あれ?おらふくんもう破けちゃったの?」
ニヤニヤしながらこっちを見てくる。
僕が3匹目をすくおうとすると、自分のポイが破けた。
でも、ぼんさんの器には5匹の金魚が入っている上、まだポイは破けていない。
「くっそぉ….勝てると思ってたのに…」
「じゃ、俺の勝ちだね?」
「くうぅ….」
悔しい。
「おじさーん、俺もこの辺でやめとくわ。この子の金魚袋に入れてあげてよ。俺のは返すから。」
「ぼんさん、金魚いらないんですか?」
「んー。まぁ、たくさんいてもね。俺じゃ飼いきれないからさ。」
「…そうっすね。」
優しい人だ、と思う。どうせ僕がやりたいって言ったからやっただけで、金魚が欲しかった訳じゃないんだろう。
「なににするんすかー?」
「んー…りんご飴とか?」
「あ、じゃあ自分のも買おっかなー」
「え?一緒に食べよーよ。」
「…いいんですか?」
「うん。そのつもりで言ったし。」
「じゃ、じゃあ一個だけ買いますか。」
二人で一個だけのりんご飴を食べるために歩いた。