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1−7

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2022年09月29日

#ファンタジー#一次創作#ちょいエロ#BL#創作BL
ni-a-No-a

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「シュマリ、アナタまた仕事をほったらかしにして」

幼馴染のロウェンナはいつも寡黙なくせに、時々目聡く指摘してくることがあった。

「残っている仕事に気がついたならロウェンナ、お前がやればいいだろ?」

「はぁ……わざとなのね、アナタ」

「さぁ、どうだか」

執行官の仕事は面倒なものばかりだった。

借金まみれの奴から身包みを剥がしたり、養育費を払わない男から金をむしり取ったり、子供を引き渡さない狂った女から子供を引き剥がしたり。

手間も時間もかかる仕事ばかり。

親のため、一族のため、王に国に使える仕事に就いたもののシュマリにとっては、毎日が苦痛でしかなかった。

「呆れた。とにかく、残ってる仕事片付けないと明日裁判長に怒られるわよ」

「ああ、わかったよ」

一人歩き出すロウェンナの背中を見送り、シュマリは彼女とは反対方向に歩き出した。

(残ってる仕事って……アルコール中毒者から金を巻き上げるっていうやつだろ。下らん、そんな仕事あいつ一人で十分だ…)

心の中で悪態をついて路地裏に入ったのが間違いだった。

気がついたら真っ黒なお面のような物を被った者たちに囲まれ、そして、暴行を受けた。

振り下ろされる棒が、いつしか刃物になり、痛みと恐怖で心が震え上がった。

唯一見えている目には、憎悪の感情しか宿っていなかった。

何度も何度も振り下ろされる刃物。

血が、地面と着ている服を真っ赤に染めた。

痛い。

痛い。

助けて。

やめろ。

死にたくない。

痛い。

痛い。

痛い。

どうして自分がこんな目に。

やめろ。

死ぬ。

死んでしまう。

ああ、

嫌だ。

こんな最期なんて……。

誰か、

助けて───。





「うわああっ!!」

自分の叫び声で目が覚めた。

「ヴェイユ?」

声が聞こえて振り返ると、ルトが心配した面持ちでこちらを見ていた。

「ヴィノシュ…さん…」

嫌な汗をかいていた。

手足はひどく冷えるし、震えが止まらなかった。

「顔色がまだ悪い……ほら、横になって…」

しかし、シュマリは首を横に振る。

「ヴィノシュさん…俺…」

「少し混乱しただけだよ。今は、大丈夫かな?触れても」

遠慮がちにルトが聞くと、シュマリは小さく頷いたので彼はそっと手を握り締めた。

「………」

「冷えているね、寒い?」

その問いに、また首を横に振る。

「ヴィノシュさん、彼は…」

「町の自警団の人だよ。町中に魔物が数匹現れたみたいでね」

「魔物が…」

「うん。町にある食べ物を狙ってね、冬場はよく現れるんだ。いつもは自警団が対処するんだけど、彼らではどうにもならないときに私が呼ばれるんだ」

「それで魔物は?」

「問題無く倒してきたよ」

ルトはやんわりと微笑む。

「だから、大丈夫。安心して」

冷えた手を撫でる。

「………」

シュマリを見つめる目は、いつも優しかった。

「私はね、ヴェイユ。君を幸せにしなきゃいけないと思ってるんだ」

「え?」

驚くシュマリを見て、ルトはいつになく真剣な表情になる。

「あのとき、私が見て見ぬふりをすれば君はあのまま息を引き取っていたはず」

「………」

「苦痛からも恐怖からも解放されていたはずなんだ」

「………」

「でも私は、私のエゴで君を助け、生かしたんだ。だから、助かってよかった、生きててよかったって思えるような人生にしてあげなきゃいけないと思ってる」

「それは、少し背負い過ぎな気もしますけど…」

「そうかな?そんなことはないよ。誰だって好きな人には幸せになってほしいと思うものだろ?」

「……好き、な人」

「そう。好きな人」

ルトは左手を伸ばし、シュマリの頬に触れる。

「大好きな人…」

「でも、私は男で…」

「そこは関係無いよ。好きになってしまったのだから」

クスリと笑みをこぼし、そっと抱き寄せる。

「っ!?」

「ずっとこうしたかった……。震えて怯える君を、抱き締めて大丈夫だよって。私は、君を、ヴェイユをけして裏切らないよって…伝えたかった……」

「ヴィノシュさん…」

「ヴェイユが例えここから離れてしまっても、私は遠くから君を見守っているから。君が、幸せになれるように……」

「………」

ふわりと香るのは、高貴な薔薇の香り。

「ヴィノシュさん」

「なんだい?」

「良い香り……ですね」

「ふふっそうだろ?自慢の香りだよ」

「……なんだか、とても、安心出来る香りです」

シュマリは小さく息を吐いた。

「あの日、あのとき、私を拾ってくれたのが貴方でよかった……」

シュマリもルトの背中に腕を回す。

「ヴェイユ…」

「なんですか?ヴィノシュさん」

「これ以上はダメだ」

「え?」

「自制が効かなくなる」

ゆっくりと手を離すルト。

キョトンとした顔でシュマリが見つめると、その唇に指が触れた。

「嫌なら嫌と言ってほしい。私はけして、君を傷付けたいわけでも、無理やりしたいわけでもないから」

「ヴィノシュさん……」

シュマリはフッと笑みをこぼす。

「やっぱり貴方は過保護です。私はもう立派な大人なんですから」

「ヴェイユ……」

「ね…ルトさん」

伸ばされた手。

「愛してるよ…シュマリ…」

交わされた口付け。

深い愛に包まれて、シュマリの中にあった恐怖心はゆっくりと溶けていった───。





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2022年10月08日

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Kn×Br←Na 没だしほとんど内容ない…あと双子組しか出てないねワロタ☆