テラーノベル
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中学校の入学式、桜の花びらが舞う校舎の廊下で、僕――空大は床に大の字に寝転がっていた。
「もう、何やってんの空大。急に抱きついたら危ないじゃん!」
目の前で、駿斗が怪我がないか心配そうに覗き込んでくる。その瞳は濁り一つなく、ガラス玉みたいに綺麗だ。この清らかさに、僕はいつも狂わされそうになる。
「……駿斗と同じクラスじゃなかったら、空大、寂しくて死んじゃうかも」
起き上がり、制服の砂を払いながら、僕はわざとらしく溜息をついた。心臓はうるさいくらい脈打っている。これだけ言えば、少しは僕の執着に気づいてくれるだろうか。
「寂死……!? それは大変だ! 空大、大丈夫? 保健室行く?」
駿斗は本気で顔を青くして、僕の額に手を当ててきた。ひんやりした手のひらが心地よくて、同時に、猛烈な頭痛が僕を襲う。
(……は? 保健室? なんでそうなるわけ?)
違う。僕が欲しいのは、そんなトモダチとしての心配じゃない。「俺も空大と同じクラスがいい」とか「俺も空大と同じクラスじゃなかったら寂しい」とか、そういう言葉だ。
「……もういい。保健室は行かない」
「えっ、でも死んじゃうかもしれないんだろ? 先生に診てもらおう!」
大真面目に僕の腕を引っ張ろうとする駿斗を見て、僕の胸の奥で、どす黒くて甘い感情がぐちゃぐちゃにかき混ぜられる。愛しくて、愛しくて、いっそこの手で壊してしまいたい。この純粋な瞳が、僕の歪んだ独占欲に恐怖する瞬間を見てみたい。そんな、殺したいほどの憎らしさと、狂おしいほどの好きが、僕の中でいつも喧嘩をしている。
「……駿斗」「なに? どこか痛む?」
覗き込んでくる無防備な顔。僕は駿斗の腕を強く掴み返し、わざと意地悪に口角を上げた。
「……なんでもない。ほら、教室行くよ。僕の隣の席、絶対譲らないからね」
そう言って歩き出す僕の後ろを、駿斗は
「待ってよ空大ー!」
と無邪気に追いかけてくる。僕の重すぎる愛に、こいつが気づく日は、一体いつになるんだろう。
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