Teller Novel

ホームホラーミステリー青春恋愛ドラマファンタジーノベル

綺麗な人

2022年08月05日

カラスと人間の問題の話

#創作#オリキャラ#一次創作#フィクション
()

()


私は日山結月(ヒノヤマ ユヅキ)。

ごく普通の女子高生だ。

勉強をして、運動をして、友達と遊んで、どこにでもいるような人間である。

そんな私の悩みは夢野温人について。

彼はボサッとした髪の毛、猫背、そして綺麗な顔立ちをしている。

私は綺麗な人が好きだ。もちろん尊敬の意として。

だから、私は綺麗な外見を持っているにも関わらず、魅せようとしない彼に不満を抱いている。

もったいない。


ある日私は彼にある頼みをした。


『ねぇ、夢野君。』

高校に入って初めての文化祭準備日。

私のクラスはメイド喫茶。

男女問わず推薦された人がメイドになるという、在り来たりなものだ。

もちろん希望する人もメイドになれる。

メイドにならない人は小道具や服装の作成、料理をする、テーブルクロスを調える、ドリンクやおまけの飴の買い出し、これらに分けられている。

そこで私は、彼に輝いて貰いたいと、ある提案を持ち掛けた。

『夢野君の顔だったらきっとメイド服が似合うわ。だから推薦しても良いかしら?』

朝見和と筒井守と三人で飾りの制作作業をしていた彼は、『え゛』と濁った返事をした。

あまりにも唐突だったし、メイドになれと言われたのだから動揺して当たり前だ。

『へぇ~、良いやん!ハル、メイドやってみたら?』

私の言葉を支持する朝見和。

彼もまた綺麗な顔をしているが、どこか気味の悪さを感じるので距離をおいている。

しかし私の言葉を支持してくれるのはありがたい。

朝見和の発言に慌てて彼は首を横に振った。

『俺男だし…愛想も良くないから嫌や。ごめん』

性別と対応を理由に彼は断る。

困ったな。

どうにかして彼を魅せたいのだが、否定されてしまってはどうしようもない。

私は無理強いはあまりしたくない主義だし、これ以上は押せない。

また勝手に推薦することも出来ない。

『朝見も一緒にやったら?せやったら夢野もやるやろ』

唯一話しに参加していなかった筒井守がそう言った。

私や他二人は筒井に視線を向ける。

全員に見られて居心地が悪そうにする筒井。なんか言えよ、と不快そうである。

『何で俺?筒井でも良くない?』

朝見は珍しく不満そうに反論した。

メイド服を着たくないのだろう。私としては問題ないのだが。

『いや、俺は朝見ほどイケメンじゃないし、夢野とやったらお前の方が仲ええやろ。』

なるほど。

確かにこの中では外見は劣っている。

そして夢野との友情も朝見ほど繋がっていない。

あまり仲良くない筒井より朝見の方が一緒にするとなると、やりやすくなるだろう。

そういう考えか。

しかし…朝見は不満そうなままだ。

『三人分作れるわよ。メイドを希望する人が少ないから服担当者がありに余ってね。』

暇そうにしている服担当の人達を指さしてそう言う。

二人が嫌ならば三人でしてしまえば良いと思ったが、三人とも不服そうだ。

『男のメイド服とか誰得だよ。』

なんとか逃れようと筒井は抵抗する。

『日山がやれば良くね?ハルと。』

朝見は私に指を指し、押し付けるように述べる。

別に私はメイドをしても構わないが、夢野は納得するのだろうか。

『何で俺は絶対メイドになる流れになってんの?』

ムス、と少し頬を膨らませている。

確かに夢野は絶対にメイド、という仮定で話していた。

不満になるのも仕方がない。

ハァー、と大きくため息を吐く私。

『分かった。夢野君にメイドをやって貰うのは諦めるわ。しつこくせがんで悪かったわ。じゃあ作業に戻ってちょうだい。』

もう無理そうだなと思った私は、今回諦める事にする。

冷たく言い放った私は、その場から離れて自席に戻る。

戻るときに、夢野が『ごめんなさい』と謝っていた。

『良い子やな…。メイドにしたかった』

ポツリと独り言を呟き、今日は終わった。


文化祭当日、売り上げは上々と言ったところだ。

自主的にメイドを希望した人達は楽しげにやっている。

私が気にしている夢野温人も裏側で料理を頑張っている。

まさかの料理担当の一人が風邪で休みになり、慌てていたところ、自ら代役になってくれた。

なぜか、朝見も挙手して本来より一人増えたが…。

まあ多いに越したことはないだろう。

私も料理担当として頑張らなければ。

『夢野って和君にべったりよね~』

ふと、隣で料理をしていた友人の手塚八重(テヅカ ヤエ)がそんなことを言った。

八重はあの朝見和に恋心を抱いている女子の一人だ。

朝見は顔は良いのでモテるし、八重のような子は沢山いる。

私はあれを好まないが、友人の事なのでその恋は応援している。

『何か…いつも一緒におるくない?』

確かにいつ見ても二人は一緒にいる気がする。

しかし、夢野から朝見へ、と言うより、朝見から夢野へ、ってイメージが私の中である。

朝見に恋をしている八重の前だから言わないが、恐らく朝見は夢野の事が好きなのだろう。

…同性愛、か。

最近そんな人達が増えてきた気がする。

元から多くいたのかもしれないが、こんなオープンにしていなかったはずだ。

時代が変わってきているから、ジェンダーレスの考えを持つ人が多くなってきたのだろう。

『あんな不細工な夢野が和君にくっつくなよって思うの』

聞き捨てならない言葉が八重の口から出てきた。

夢野が不細工だって?全く見る目がないのね。

『夢野君は結構綺麗な顔をしているわよ。朝見君に劣らないほどにね。』

ああ、大変。ホットケーキが焦げそうだわ。

話をしていて注意を怠ってしまった。

急いでひっくり返し、なんとか真っ黒焦げは避けられたようだ。

『嘘言わんといてよ。夢野は不細工だって。皆そう言っとるよ?』

首を傾げて、私が可笑しいと言っているような表情だ。

周りに流されやすい子なんだから。

『夢野君!手空いてたら来て!』

夢野の方は見ずに、取り敢えず呼び掛ける。

夢野は朝見に何かを告げてこちらにやってきた。

私の横に立って『どうしたん?』と首を傾げている。

『ほら見なさい、この綺麗な顔を』

私は長い長い夢野の前髪をかき上げて、八重に夢野の顔を見せる。

八重は面倒臭そうに夢野の顔を見る。

反応は思っていた通りのものだった。

『分かった?噂なのよ、あなたが聞いていたものは。』

八重は申し訳なさそうに頷き、夢野に謝っていた。

八重は素直な子だからすぐに人の言葉を信じてしまう。

素直なのは構わないのだが、思い込みが激しいのが残念なところだ。

『用は終わったわ。戻って良いよ。』

夢野の方を向きそう告げる。

夢野は前髪を直しつつ頷いて、定位置に戻っていった。


文化祭が終わって数日後。

クラスにある噂が流れた。

それは夢野温人が殺人鬼の子供だということである。


噂の発端は唐崎久美と黛飛鳥の話からだった。

夢野の顔を見た唐崎が、知り合いから教えて貰っていた殺人鬼の息子、つまり夢野温人の事を話してしまい、それを聞いた誰かがその噂を広げた模様。

噂は広がれば広がるほど形を変えて大きな事になっていく。

おかげで夢野は虐められるようになった。

筒井守を中心に。


私があの時、夢野の顔を皆に見えるように見せなければこんなことにならなかったのではないか。

そう思う時がある。

あの時、八重のみならず多くの裏側の人が夢野の顔を見ていた。

その時唐崎もいた。

だから、もしかすると…なんて思ってしまう。

夢野が前髪で顔を隠していた。自分の顔を見られたくないから。

なのに私がそれを退けてしまった。

夢野と話しても、夢野はいつも通りに対応するし怒ってはいない、そう思いたい。

私のせいで噂が広がっただなんて思いたくもない。


私は…悪くないよ、ね?


()

()

プロフィール

前後に投稿された作品

第1話

朽縄紫苑の決意

チャット小説を探す

  • ホラー
  • ミステリー
  • 青春恋愛
  • ドラマ
  • ファンタジー
  • 大人ロマンス
Teller Novel

ホラーから恋愛まで!
日本最大級のチャット小説サイト
Teller Novel [ テラーノベル ]

スマホアプリでサクサク快適!

Apple StoreGoogle Play Store

© Teller Novel Inc.