「よーし、収録始めまーす。準備おっけ?」
「大丈夫でーす!」
「チートっ!チートっ!」
「おらふくん、まだチートって決まった訳じゃないからね?」
「でも最近チート多いじゃないですか?」
「じゃあ逆にチートにならない可能性の方が多くない?」
「はっ….!確かに!」
「まぁまぁ…とにかく、オープニング撮りますよー」
「はーい。」
いつもどおり。
そのはずだった。
「どもっ!ドズルです!そしてっ!」
「Bonjour、ぼんじゅうるだ、どーもでーす!」
「そぉしてっ!」
「…っ!….?!」
声が、出ない。
「…おんりーちゃん?」
「…おんりーどした?回線悪いん?」
「声が入ってないけど…」
「…っ…ヒュッ…!」
「…おんりー、大丈夫?」
文字を打てばいいことに気付いて、急いでチャットに打つ。
《声が、出なく》
言わない方が良いのかもしれない。
言わなければバレない。
彼の人に心配かけたくない。
あなたは優しいから、きっと不安にさせてしまう。
《…すいません、回線が悪いみたいです》
「あれ?そうなん?じゃあ、おんりーだけチャットで会話することになるんかね。」
「おんりーちゃんだけチャットなのw」
「会話にラグが起きそうで逆に面白そうっすねw」
「…じゃ、今回おんりーはチャットで参加ということで。」
《こんにちは、おんりーです。》
「じゃ、次おらふくん!」
「あ、そういえばオープニングだったwどうも皆さんこんちゃっちゃ!おらふくんです!」
「そぉしてっ!」
「あいおつです!おおはらです!今回、おんりーちゃんの分まで喋り尽くします。」
《頼むわw》
「おんりー直々に頼まれちゃったねmen」
「頑張りまぁす!」
「威勢いいなw」
「やー、鬼畜だったぁ!!」
「ぼんさん結構頑張ってましたもんねw」
「menはホントに喋り続けてたねw」
「頑張りました!喉ががらがらです!」
「お疲れw」
「結局おんりー回線直らんかったねー」
「ずっとチャットでなんとかなっちゃったねぇ」
《ねー》
「ねー」
「まぁ、こんなのもたまには面白いんじゃないですかね?」
「それもそうねー」
「と、いうことで!今回はこんなところでまた次の動画でお会いしましょう!それでは!」
「「ばいばーい!」」
《ばいばーい》
「おんりーチャットでばいばい言っとるwかわええw」
「じゃ、今日の収録ここまででーす。お疲れさまでした!」
「おつかれちゃんでーす!men飯食いに行こーぜー」
「お、いいっすねぇ!ぼんさん奢ってくれます?」
「図々しいなwまぁいいけどね。」
「じゃ、抜けまーす」
「はーい。おつかれー」
「僕もご飯食べるんで、抜けますねー」
「んー、お疲れさまー」
テロン
「….おんりー。」
《はい》
「…回線悪い訳じゃないよね?最初キーボードの音入ってたし。」
ばれてた。
ここまでばれたら、隠さなくても言いかもしれない。
《はい。》
「…体調悪かった?」
《…そういうわけではないですが》
《声が出なくなってしまって》
「….っ!なんで、教えてくれなかったの?僕じゃ言いにくかった?」
《…そういうことではないです。》
《…心配かけたくなかったので。》
「…おんりーは、優しいけどね?たまには、頼ってくれていいんだよ。」
《…はい。》
「…声が出ないって、急に?過度なストレスとかが考えられるけど…なんか心当たりある?」
過度なストレス。
心当たりしかない。
でも、貴方のことだから、言えない。
《…わからないです。》
「そっ…かぁ。…おんりー、今から会える?」
今から?ドズルさんに?
《….会え…ます。》
「ん。じゃあ、僕今からそっち行くね?」
テロン
少し片付けをしないと。
そう思って立ち上がる前に試してみる。
「ぁっ…..!..っ…」
やっぱり声は出ない。
ただ無意味に息が吐かれるだけ。
急なことで驚いたけど、実はその反面、
少し楽になれるような気がした。
もう、このまま声が出ないままなら、
貴方と会わなくても….いいかなっ…て…
あれ?
なんで、なんか視界が歪んで…
手に落ちたのが涙で、自分が泣いているのだと、やっと理解した。
…ドズルさんに会えないなんて、
想像しただけでも涙が出てくるのに、
会わないようになんて出来るわけがないや。
涙を手の甲で拭いながら笑う。
会っても会わなくても辛いなんて。
…こんなにも悲しい感情は、知りたくなかった。
コメント
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良すぎる…好き…