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土日のいずれかに漢江公園に立ち寄れば、菊は必ず何処かで本を読んでいて、会うことが出来た。
やがて交流を重ねていくうちに、韓国語もみるみる上達し、笑顔を見せてくれるようになった。そして、日本の地理や文化についても、時折教えてくれた。俺にはそれが、とてもとても嬉しくて。
しかしそれは、突然やって来て。
「……日本に、帰ることになりました」
あれから3年後。菊は俺に、確かにそう言った。
「帰るって……いつなんだぜ」
「今月の末です。父の赴任期間が終わったので……」
元々決まっていたことなのですがね、と、寂しく笑う菊。俺は彼の右手を掴み、言った。
「でも、俺とお前は、チングなんだぜ!」
「ヨンス、さん……」
「お前と離れ離れになっても、俺は……っ」
すると菊は、俺にあるものを差し出した。それはルーズリーフの切れ端だった。
「私の実家の住所と、携帯のメールアドレスです。離れていても、友達ですよ」
「菊…………」
俺は涙ながらに……それを受け取って頷いた。