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『あれ、その栞どうしたの?』
ソファに座り本を読んでいる彼の横に座ると、テーブルの上に見慣れない栞が置いてあった。
手作りの押し花の栞のようでかなり長いこと使っているのか、少し汚れや傷も見える。
「あぁ、それ。小学生の頃作ったやつ」
ふ、と懐かしそうに微笑んで彼は栞を大事そうに手に取る。
『へぇ、一静くんが作ったんだ。小学生からずっと使ってるの?』
「うん。」
『物持ちいいねぇ』
「…俺の思い出だからね。」
『思い出?』
「そう。この挟んでる花、初恋の子に貰ってさ」
『はつこ…』
彼の意外な台詞に思わず言葉が途切れる。
いや、小学生の頃のことだし…と思ってはみるけど、あんな愛おしそうな表情されたら少しもやっとする。
まだその子のこと、忘れられないのかな。
「どうかした?」
固まっている私を不思議に思ったのか、彼は顔を覗き込んで私の頬を指でなぞる。
『…あっ、いや、なんでもない』
「ん~、そう?…ねぇ、初恋の子、誰か知りたい?」
『…え』どうしよう。知りたい、けど、知りたくない。返事を考えあぐねて視線を彷徨わせていると
「はは、知りたいけど知りたくないって感じ?」
彼に思っていることを言い当てられ、目を見開く。
「かわいー顔」
そう言うと彼はちゅ、ちゅ、と軽いキスを頬やおでこにたくさん降らせる。
『あ、あの…一静くん…?』
「俺の初恋の相手はね、○○だよ」
『えっ…!?』
「昔の自分に嫉妬しちゃった?」
愉しそうな笑みを浮かべて問われ、嬉しさやら恥ずかしさやらで顔が熱くなっていくのを感じる。
「顔真っ赤笑」
『~~っ…一静くんが思わせ振りなこと言うからぁ…っ!』
「ごめん、○○の反応見たくてつい、ね笑」
『もうっ!』
「ごめんって笑…ほら、今からいっぱい愛してあげるから許して?」
そう言うと、彼の掌が頬を包み込み、唇が重ねられた。