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side藤澤
「も…とき…?」
夜中の0時を回る頃、マンションの裏道を歩いていると、血だらけの元貴と、血だらけで倒れている人が居た。俺の声に気づいた元貴が倒れた人から目を離して俺を見て不気味な笑顔を作った。
「涼ちゃん?…見ちゃったかあ。」
体の向きを変えて俺の方に近づいてくる元貴の右手には鋭い刃物を握っていた。
元貴の今の笑った顔は狂気じみていて、心底元貴だとは思えなかった。どんどんと近づいてくる元貴に逃げるように後退りをして、後退りしながら後ろで倒れている人の顔を目を細めて見ると、それは今日の番組収録で共演した人だった。
目を丸めて元貴の顔を見ると、街灯で照らされた元貴の顔が俺の顔の近くで笑った。
「…!」
「なんで驚くの。なーんも怖くないよ?」
涼ちゃんの為なんだから、とまた目を細めて笑った。実はといえば、その共演した人は俺にわいせつ行為というか、とにかくボディタッチが異常な程多かった。オテンキのりさんとか、いつも仲良くさせてもらってる人ならいいんだけど、今日共演した人は本当に初めてで、初対面だったから怖かった。
多分、今なんでこうなってるのかは分かる。
ミセス1人でも出ている番組収録は絶対に元貴がカット前のやつを目を通していて、多分、本当に多分それでイラついたんだろう。なんにせよ俺と元貴は付き合っているからで、元貴は俺にありえないほど執着しているから。元貴の愛はおかしいほど重くて、狂気的で全部、おかしい愛だった。でも、そんな元貴から離れられなくなっちゃったんだよね。
…これが依存ってやつかな、手遅れだもん、こんなの。
「…涼ちゃんは、内緒にしてくれるよね?」
俺の肩に手を置いて元貴がそう言った。俺はえ、、とその場に固まった。すると元貴が俺の腰をナイフを捨てた右手で引き寄せてギュッと抱き締めた。
「もとき…?」
「…俺、殺しちゃった。でもめっちゃ今スッキリしてる。」
「…ふふ、ありがとうもとき…」
元貴が、俺の事を信用出来ないって言うなら、元貴の手で俺を殺していいよ。
元貴なら、殺されても構わないよ。むしろ、最期なら元貴の手で終わらせて。