暗闇の森の中、静かに響く足音。
まどかがフクロウの魔力を高めているその時、不意に新たな影が現れた。
「……?」
まどかがわずかに眉をひそめる。
フクロウが敵意を感じ、鋭い鳴き声を上げた。
「おいおい、騒がしいな。」
低く、冷静な声が響いた。
サブ、萌香、みりん──そしてまどかが、その声の主を見つめる。
木陰から現れたのは、赤い目をした少年。
「誰や、お前?」 みりんが長剣を構える。
「名前はレイス・ワイル。放浪者だ。」
レイスは一歩前に出て、ゆっくりと彼らを見渡した。
「貴族っぽい雰囲気だな。」 サブが銃を下ろさずに言う。
「まあな。元・吸血貴族だ。」
レイスは薄く笑い、ポケットから小さなカプセルを取り出す。
カプセルの中には、どろりとした赤い液体──血液が入っていた。
「さて、状況を見させてもらったが……勇者だの、男嫌いだの、魔物化けの術だの、随分と面白いことをしているな。」
まどかは興味深そうにレイスを見つめる。
「吸血鬼がわざわざこんなところに何の用?」
「……」
レイスは静かに目を細めると、まどかのフクロウに視線を移した。
「そいつ、強いな。」
「当然よ。私の使い魔だもの。」
「ほう……」
レイスは手に持った血液のカプセルを軽く振った。
「試してみるか。」
その言葉と同時に、カプセルが割れ、中の血液が宙に舞った。
「……!」
血液はレイスの指先へと引き寄せられ、まるで意思を持つかのように蠢く。
「血を操る能力……か。」 まどかが呟く。
レイスは指を一振りすると、血液が鋭い刃のように形を変えた。
「さて、どっちが強いか試してみようか。」
静寂が走る。
次の瞬間、まどかのフクロウが鋭い鳴き声を上げ、レイスの血の刃へと向かっていった──。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!