テラーノベル
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問は僕の耳を触るのが好きだ。
理由は「何となく落ち着くから」らしい。
僕は落ち着かないからやめて欲しいのだけれど、今も問の膝の上で耳たぶを揉まれている。おかげで読んでいる本の内容が頭に入ってこない。
抗議するべく上を向くと、気持ち悪いくらいにこにこしている問と目が合う。
いつもなら僕の方が身長が高いから見上げることは無いけれど、今は僕がほぼ寝るような姿勢になっているのに対して問はソファに深く座っているため、身長差が逆になったように感じる。
「落ち着かないんだけど」
「?僕は落ち着くよ」
いや、そうじゃないだろ。やる気のないごまかしに思わず苦笑する。
「だってぷにぷにしてて気持ちいいんだもん」
頭を振って妨害しようとしても効果は無く、本の文字を目で追うことにした。
暫くして、ふと「こいつ自分が触られたらどんな反応するんだろう」と好奇心が湧いてきて、勢いよく起き上がった。
「っびっくりした」
顎ぶつけるとこだった、と何故か僕の頭をさする問。
そんなことはお構い無しに、僕は問の隣に座って腕を広げる。
「ほら、交代」
足痺れたでしょ、と首を傾げてみせると、問は素直に僕に身体を預けた。
「じゃあ失礼しまーす」
「…っえ、」
目の前の耳に手を触れようとした瞬間、反射で動いたかのような速さでそれを阻まれた。
「まって、これ僕駄目なやつだ」
え?と呟いて試しにもう一度手を近づけると、熱っぽい吐息が聞こえてきて鼓動が早くなる。
「…その、近付くだけで反応しちゃうっていうか…」
嘘だろ。僕はてっきり問は所謂「攻め」だと思ってたんだけどな。
自ら弱みを差し出してきているようなもので、なんにせよこれはチャンス。そんな僕の企みは筒抜けらしく、しまったと息をのむ音が聞こえた。
へえ、と低く囁くと、それに合わせて問の身体が震えて、僕の加虐心を煽る。
逃げてしまわないように左腕で抱きしめて、右手の指で耳をなぞる。
「っねえ、やだ…っ!」
何の時とは言わないが、いつもは僕を見下ろして妖しく笑う彼が、今は僕の下で快楽を堪えているのを見て優越感や背徳感に似た感情を覚える。
問は焦って僕の手を引き剥がそうとするけど、上手く力が入らないのか大した抵抗にはなっていない。
「嫌じゃないでしょ、感じてるくせに」
「っ!ちが、うし…っ」
自分の中の何かに確実に火がつくのを感じながら、ゾクゾクと湧く欲望のままに耳に歯を立てる。
「ひぁっ!?」
驚きからか快楽からか、問の身体が大きく跳ねる。そのまま耳、首筋、肩とキスを落とすと、弱々しい嬌声が僕の理性を揺さぶった。
「言ちゃん、っ」
必死に僕の名前を呼びながらこちらに身体を向けようとする姿があまりにも可愛くて、つい抱きしめる手を緩める。
「なに?」
すると、問は振り向いて僕の目を見つめた。
「きす、するなら口にしてよ」
ああ、やっぱり敵わないな。涙目で扇情的な笑みを浮かべるその顔を見たら、誰だって呑み込まれるだろう。
どちらからともなく唇を重ねて、気が付けば押し倒されていたのは僕だった。
「っは、ぁ」
服の中に手が侵入してきて腰をゆるゆると撫でられると、淡い刺激で吐息が洩れる。仕返しだとでも言いたいのだろう、わざわざ僕の弱い腰ばかりに紅い痕が残される。
DNAは同じなのに弱い場所は違うのか、なんて余裕の無い頭で考えていると、「…だーめ、僕のことだけ考えて」と指を絡められる。さっきまでの大人しさはどこへやら、いつの間にか主導権は問に移っていた。
問の耳に触れようと伸ばした手は途中で掴まれて、指に舌が這わされる。
「っ問、」
「…覚悟してよ」
真っ直ぐにこちらを見据える瞳に、僕は思わず目を逸らした。
コメント
4件
いやあ、かわいすぎるやろ…
めっちゃ可愛い〜………!!!