テラーノベル
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独りぼっちだと思ってしまう夜がある。
目を開けて、隣で寝ている弟の顔を見つめながら小さくため息をつく。
幼い頃の夜に初めて僕を襲った不安が、未だ消えずに何度もぶり返している。
僕は夜が嫌いだ。
夜は暗く静かで、精神的な疲労が溜まっている時は呑まれそうになる。勉強をしていればそんなことは気にせずにいられるけれど、その前に沈んでしまうと浮くことが出来なくなる。
今だって、1人じゃないのに。最愛の弟がそばに居るのに。寂しさでもなく虚しさでもなく、とにかく正体の分からない不安感が募る。身体が冷たくて、布団を被っているのに寒く感じる。
最近は無かったんだけど。疲れてるんだろうか。
ずっと変わらない自分の弱さに嫌気がさして、無意識に下唇を噛んでいた。
寝ているとはいえ今の顔を言に向けていたくなくて、言とは反対方向に寝返りを打つ。
夜は気分が落ちやすいだけだから。寝れば元に戻るから。そう言い聞かせて目を瞑るも、そんなもので不安が消える訳もなく。
今日は寝れないな、とぼんやり思った瞬間、身体が優しい体温に包まれた。
「…起きてたの?」
そう問うても返事はなく、代わりに頭を撫でられた。
普段なら「子供扱いすんなよ!」とツッコんだはずだけど、今日ばかりは素直に享受する。
すると、言の方に身体が引き寄せられて密着度とともに体温が上がり、次第に眠気がやってきた。
眠気で回らない呂律のまま「…ありがとう」と伝えると、首元に唇が寄せられる。
顔の熱を誤魔化すように目を閉じて、僕を抱きしめる手をそっと握った。
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