ピンポンを鳴らす。
「おんりー、来たよ。」
返事はない。やっぱり体調が悪いのかも知れない。
ドアノブに手を掛けると、鍵が掛かっていなかった。
「….おんりー?入るよ?」
いつも実況とかするときにいる部屋に向かう。
扉は閉まってたからノックしてみる。
コンコン
「おんりー?大丈夫?」
「っぁ、……っ!」
微かに、声にならない声が聞こえる。
「…っ!ごめん、入るね。」
扉を開けると、涙で濡れた顔を手で覆ったおんりーがいた。
「…っおんりー?」
「….ゃっ!….はっ….」
「…ほんとに、声出ないんだね。」
コクコクと首を振る。
「….おんりー、最近寝れてないの?」
目の下にうっすら隈が見える。
「…僕で良ければ、話聞くよ?だから────」
「….っど、…ズルさんは、どうして、俺のところに来てくれた..んですか?」
おんりーがゆっくりと声を出す。
でもやっぱり、やっと聞き取れる程度で、声とは言えない声だ。
「…無理して声出しちゃだめだよ。喉を痛めるから。….僕がここに来た理由?そんなのおんりーが心配だから…」
「…っどずる、さんにとって、俺は、仲間ですか?」
掠れた声で言う。
「…仲間だよ。大事な。」
「っおれにとって、あなたは、大事な人なんですよ!」
「…僕も、おんりーは大事な」
「あなたとは、違うんですよ!」
やっぱり掠れた声で叫ぶ。
「…おんりー?」
「おれは、….好きなんですよ、あなたが。…恋しちゃってるんです。」
「….え?」
「….でも、どずる、さんは、好きになっても…俺にできること…は、ないから…」
気付いたらおんりーを抱き締めていた。
「….っ!離して、ください!」
「…離せないよ。」
おんりーが僕を離そうと抵抗しているが、僕の方が力は強い。
「…少しだけ、話させて?」
少し、おんりーの力が緩む。
喉を痛めるとか言っておいて話すのは、少し変な話だけど。
「…どうして言ってくれなかったの。」
「….っいえる、わけ、ない、じゃないですか。」
「…そっか。」
おんりーの腕がだらんと下ろされる。
「…っあなたに、恋はしちゃ、だめだった…んですよ。」
気付けば、おんりーの声は涙声になっていた。
「…嫁ちゃんがいるから?」
「…っそれ、も、ですけど、」
「…同性だから?」
「…はい。」
「….そんなこと、僕は──」
こんなことを言う資格は、僕にはない。
「….どずるさん。」
ゆるゆると、僕の腕のなかから抜けて行く。
「…もう、大丈夫です。」
気付けば声は元に戻っていた。
ただ、その声はなにかを諦めたような、悲しげで、まるで壊れそうな声だった。
「…ありがとうございました。」
「おんりー、僕は」
「もう、いいです。….すみません、少しだけでいいので、一人にしてください。」
「…わかった。」
部屋を出る。
おんりー、僕はね。
会ったときからずっと、君が好きだよ。
でも、僕はパートナーがいるから、伝えられなくて、気持ちを押し殺してきた。
…本当は、おんりーの方が辛い思いをしてたの?
気付いてあげられなくて、ごめん。
僕は、おんりーが同性だとしても、おんりーが好きだよ。
….そう伝えられたら、どれだけ楽か。
伝えてしまったら、嫁ちゃんを裏切ることになるし、
今のなにかが崩れてしまう気がする。
だから、言えない。
でもこのままだと、きっとおんりーは辛い思いをし続けてしまう。
じゃあ、僕はどうすれば────
コメント
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少しだけ昔の道徳?思い出したw…めっちゃいい話ですやん!
ちょっと泣きそう…とてもいい話…続き、楽しみにしてますね
悲しそうなおんりーちゃん… かわいそう… 悲しい…