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第1話「俺たち、いけない関係(物理)」
朝、目が覚めたらまろがいた。
……なんで?
いや、昨日までは確かに俺、一人暮らししてたはず。
気まぐれで夜中に「一人焼肉パーティー」とかして、腹が爆発しそうになって寝落ちしたのは覚えてる。
なのに、今、俺のベッドの上には――
「おはよう、ないこぉ~♡」
関西訛りで甘えた声が響いた。
目を開けると、まろの顔が数センチ。
お前、近い。近すぎる。
ていうかなんで俺の腕の中で寝てんの!?
「な、なにこれ!? どういう状況!?」
「ん~、俺にもようわからんけどなぁ……昨日、気づいたら一緒に寝とったんや」
「は???」
「なんかさ、夢の中でお前が『抱いて』って――」
「言ってねぇ!!!!!」
ベッドから転げ落ちた。床に背中を強打。
脳が痛ぇ。心も痛ぇ。
「ていうか! 服! 服!! 着てる!?」
「着てるで?」
まろが掛け布団をめくる。中には――
パジャマ上下、完璧装備。
ついでに、靴下まで履いてる。
安心感しかない。
「……なんや、つまらん顔して」
「いやつまらなくねぇよ!? 朝から寿命縮んだわ!」
「ええやん、仲ええ証拠や」
「仲ええにも限度があるわ!!」
まろは笑いながら、布団からのそのそと出てきた。
髪ボサボサで、寝起きのくせにやけに色っぽい。
……いや違う違う、そういう方向に考えるな俺。
これはギャグ。そう、ギャグ空間なんだ。
「てか、朝メシある?」
「冷蔵庫に卵あるけど……」
「よっしゃ、オムライス作ったる」
「は? お前料理できんの?」
「舐めんな。オムライスは愛の料理やで」
「それなんのジャンル?」
「乙女ゲーム」
わけがわからねぇ。
そして、10分後――
「できたで! ないこ♡」
目の前に置かれた皿。
ケチャップで書かれた文字には、でっかくこう書いてあった。
『スキ♡(友情)』
「なんで友情つけた!?」
「いやぁ、誤解されたら困るやん?」
「すでに誤解しかねぇわ!!!」
その瞬間、卵の下から“ウィンナー”が転がり出てきた。
リアルな形状、妙な光沢。
見た目があまりに危険すぎる。
「おいまろ、なんだこれ」
「愛の証や」
「違う意味で通報案件や!!!」
俺は思わずスプーンを投げた。
まろがそれを片手でキャッチ。
何この無駄なかっこよさ。
「ええ反応や。朝から脳みそバグらせるの楽しいわ」
「お前の存在がバグだよ……」
結局、オムライスは味だけはうまかった。
腹立つけど。
***
朝食後。
洗面所で顔を洗っていると、まろが後ろに立っていた。
まただ。距離が近ぇ。
「な、なに?」
「歯磨き粉、貸して」
「あるだろ自分の!」
「お前の味がええねん」
「は???」
「ミント強めの男の味や」
「説明の方向性間違ってんだよ!!」
まろは笑いながら俺の横に立ち、同じ鏡に映った。
肩が触れそう。いや、触れた。
なんか、顔が赤くなった。俺の。
まろがニヤニヤしながら囁く。
「ないこ、顔赤いで?」
「熱だよ熱! お前のせいで熱出た!」
「そうか……うつしてええか?」
「いらねぇよ!!!」
口を近づけてくるな。
歯磨き粉吹き出すぞ。
***
その日の昼。
結局まろは「今日は帰らへん」宣言をかましてきた。
なんでお前そんなノリ軽いんだよ。
「ないこ、俺、今日お前んち泊まるわ」
「は!? 朝からずっといるやん!」
「いやぁ、ベッド柔らかかったし」
「お前……目的それか」
「あと、お前の匂いが好きや」
「今なんて!?」
「柔軟剤の話や」
「心臓止まるかと思ったわ!!!」
ほんっと、いちいち言い回しが卑猥なんだよこの男。
内容は健全なのに、なぜか下ネタ感が漂う。
言葉の才能、間違った方向に使ってる。
***
夜。
風呂上がりの俺。タオルで髪を拭きながらリビングへ出ると――
ソファでくつろぐまろ。Tシャツ一枚。
……おい、なんでズボン履いてない。
「まろ」
「ん?」
「お前、なんでパンツ一丁?」
「風通しええやろ?」
「家ちゃうやろお前ん家!!!」
「ええやん、俺らもう心のパンツは脱ぎ合ってるし」
「どんな比喩だよ!!!」
言葉の暴力。
俺の理性が何度もクラッシュしていく。
「てか、お前風呂入れよ」
「一緒に入る?」
「入らねぇよ!!!!」
脳死しそう。
もうほんと、これ以上いたら理性が蒸発する。
俺はベッドへ逃げ込んだ。
***
夜中。
ふと目を開けると、横に誰かの気配。
……またまろだ。
「おい……なんで入ってきてんだよ」
「寒かったんや」
「布団取んな!」
「いや、温もりがな……」
「なにロマンチック風にすんな!!!」
布団の中で押し合いへし合い。
結果――俺が押し負けた。
まろの胸のあたりに頭を押し付けられる。
ぬくい。心拍音が近い。
「……なぁ、まろ」
「ん?」
「これ、客観的に見たら完全にアウトだよな」
「せやな」
「でも、お前、やめねぇんだろ」
「うん。おもろいし」
「お前ほんと性格悪ぃな」
「褒め言葉として受け取っとくわ」
……なんか、もう抵抗する気力もなくなってきた。
この関係、いろいろ意味で“いけない”気がするけど、まぁギリギリセーフってことにしとこう。
「なぁ、ないこ」
「ん?」
「明日の朝、パンケーキ焼いたる」
「それはええけど、またケチャップでなんか書くなよ」
「じゃあチョコで♡書くわ」
「アウトだっつってんだろ!!!」
笑いながらまろが肩を震わせる。
俺もつられて笑った。
なんか、もう色々くだらなすぎて。
――こうして、俺とまろの“いけない関係(物理)”が始まった。