翌日。俺が目を覚ますと、何処からともなく良い匂いが。目を擦りつつリビングに赴くと、先に起きていた菊が朝食を作ってくれていた。
「おはよう御座います、ヨンスさん。もうすぐ出来るので、座って待っていて下さいね」
「……ん、コマウォヨ」
菊は鍋をかき混ぜて、二人分の汁物を作っていた。色や匂いからして……これは味噌汁。
味噌汁なんて、数年前にソウルの日本料理店で飲んだっきりだなぁ……と思いながら、食卓の席から菊を観察する。とても手際が良く、みるみる内におかずが出来上がっていく。
暫くして、俺と菊、二人分の朝食が完成した。テーブルに並べられるのは、先程の味噌汁に加え、炊きたてのご飯と、焼き鮭と、ほうれん草のおひたしと、卵焼き。韓国料理とはまた違った彩りが、俺の食欲と興味をそそる。
「ヨンスさんの口に合えば良いですが……」
少し心配そうに、菊がそう言う。そんな彼に、俺は笑って答えた。
「お前の作ったものなら、どれも絶対美味しいんだぜ。だから大丈夫なんだぜ」
それから二人で向かい合い、「いただきます」と手を合わせた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!