君達は鏡に映るものを見て何を思う?
〜〜〜♪〜〜🎶♫
ピアノの音色が聞こえてくる
「そろそろ行こうかな……」
ポツリと呟いた俺の言葉が暗い部屋に響く
今はピアノの発表会…
この暗い部屋には今は俺しか居ない
ふと…視線を部屋の隅に置いてある鏡にやる
「…なんでこんな所にあるんだ…….?」
俺は気になってその鏡の前に行こうと足を動かす
「結構大きいな…」
くすんだピンク色の布が被せてある丸い縦長の鏡を見て俺はそう言った
「………..」
俺は無言で鏡に掛かってある布をめくった
「………………..」
めくるとそこには肩まで伸ばした髪をおろしている自分が映っていた
「…..吐き気がする…………」
俺は顔を顰めて吐き捨てるように言った
「…….やっぱり発表会だからって髪を降ろすんじゃなかったな…….」
俺はブツブツと数分前の自分に恨みを込めつつおろしていた髪を一つの三つ編みにした
「……これでよし」
やはり髪を降ろすと気分が悪くなる
……..虐められてた時の…弱い自分を思い出してしまうから…….
「…….思い出す……というより弱い自分が大っ嫌いなだけだがな…..w」
誰もいない静かな部屋に俺の声が静かに響く
「……..」
俺は三つ編みをした自分が映った鏡に静かに手を合わせた
「………冷たい….」
鏡だから当たり前だ…なのに少し寂いと思ってしまう
「……..何を思ってるんだ俺は…昔の自分みたいな事を考えるなんて…俺は昔の俺じゃない…….俺は俺だ…弱い時自分とは違うんだ…」
俺は首を振って自分に言い聞かせる様に呟いた
「……..?」
ふと、ほのかに鏡の自分と俺が手を合わせてた部分が暖かくなった
「……..俺の体温が鏡に移ったのか…….」
先程まで氷のように冷たかったのが嘘のような優しい暖かさだった
「…….ハハッ…俺は何したいんだろうなぁ……弱かった自分を消したくて一人称を変えたり服装も全くジャンルの違うものを着たり…」
俺は自傷気味に笑う
「何したって俺は俺なのに…昔も今も関係ない…」
段々と自分のしている事への嫌悪感に変わっていく
「……これ以上自分を見たくない…..弱かった昔の自分も今の自分も…..」
俺は掛かっていた布に手をかけた
〜〜〜〜〜♬♪〜ーーーパチパチパチ
拍手の音が聞こえ、俺は顔をあげた
「….俺の番は次の次か…..行かないと…」
『…..消えたいの…?』
「…….ッ‼︎」
ふと…誰もいないはずなのに声が聞こえたように感じ、俺は視線を鏡に戻した
「………….気のせい…だよな…….」
視線を戻してもそこに映っているのは髪を三つ編みにした俺がいるだけ
「……出よ…」
俺は居心地の悪さを感じて布を掛け直すのを忘れて舞台袖に向かった
「…….何もしたくないなぁ…自分が気持ち悪い…疲れたや…….確かに俺は消えたいのかもな…」
弱音を吐きつつ……….自分が消える事を願って…
『気のせいじゃないよ…………』
【プログラム◯番…◆◆◆◆さんの演奏です。曲はーーーーー】
…僕の番がやってきた
「……」
僕は無言で立ち上がり、舞台へ上がった
視線を観客席へ向けると色んな人が僕の方へ視線を向けている
「…….」
僕は静かにお辞儀をして椅子へ座る
「………スウッ」
数を数え…一呼吸し、僕はピアノを弾く
〜〜〜♩〜♪♬
〜♪ーーーー
演奏が終わると僕はお辞儀をした
拍手が鳴り響く…
僕は静かに舞台袖に戻る
舞台袖に戻ると僕は直ぐにあの鏡がある場所に向かう
ガチャッ
音を立ててドアが開く
「………」
僕は無言のまま鏡の前に立つ
そこに映っているのはーー
「アハハッ」
誰もいない部屋に狂ったように笑う僕の声が響く
「……..安心して…ちゃんと君の分まで僕が頑張るから…」
そう言いながら僕は鏡に手を合わせた
〜〜〜♪〜〜♬
ピアノの音が聞こえてきた
僕は顔を上げて
「………君が弾いた曲…僕も聞いてみたかったなぁ……..」
ポツリ…と、僕がそう呟いたら
『ごめんね…でももう俺は疲れたよ…』
「ッ⁉︎」
僕は驚きつつ勢いよく顔を鏡の方に向けた
「…..」
でも映っているのは髪をおろした僕が居るだけ…でも僕は
「そっか…疲れたならしょうがないね…」
見えないけど側にいるんでしょう?
「君は頑張ったよ…」
任せて…今から僕が君として生きるから
「だから…」
鏡は氷のように冷たい
「後は僕に任せてゆっくりおやすみ……….昔の僕…」
そう言って僕は鏡に手を合わせながら目を瞑った
少しだけ…….ほんのりと手を合わせている部分が暖かくなった気がした……..
コメント
2件
カンヒュ以外も最高でしたグフッ(尊死)
へ…?やべぇ癖になる…いい闇具合だ…!