「花火のように咲く君に」確か、そんな題名だった。
去年の夏、私は写真の展示会へ足を運んだ。
鬱陶しいほど眩しい午後の光が差し込む店内には、
無数の“夏”を閉じ込めた写真が並んでいた。
海、ひまわり、入道雲——どれも定番で、完成度の高いものばかり。
私はそれらを一つひとつ眺めていた。
その中に、一枚だけ、空気の違う写真があった。
題名は「花火のように咲く君に」。
花火の写真か、人を撮ったものだろうと思いながら、私はその写真を見上げた。
けれど、そこに映っていたのは、花火でも、人でもなく——屋上から見える夕焼けだった。
正直、どこにでもありそうな写真だった。
それなのに、なぜだろう。視線を離すことができなかった。
まるで、何かを忘れてはいけないと訴えかけてくるようで。
胸の奥が、じんわりと痛んだ。
この人は、どんな思いでこの題名をつけたのだろう。
気になって、撮影者の名前を見た。
——大学一年生、佐藤梨々。
この人はどんな思いで、写真を撮ったんだろう。
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