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ちょ、明博君のクラスメイト◯すよ?明博君とゴゴちゃん虐めるってどゆこと?許さない。てかゴゴちゃんを◯していいのは太宰さんとドス君とシグマくんとぼk(((ん"ん"だけだからね??^_^ 明博君のお父さんとお母さんもやり過ぎはよくない!でもやはり神作品なのでいつもニヤニヤしながら見てしまう…!
ゴーゴリが弱ってるとことかほんとに愛してるって感じなんでめっちゃありがたいです!
「大地が凍てつく冬、本来は左利きなのを無理矢理矯正され、俺は、多数派の右利きでペンを握っていた
「おいッッ……!!!!!何でぼーっとしてんだよ!!!!さっさと勉強しろ!!クズ!!!」
普段、書斎に入り浸り1秒足らず筆を走らせて居る御父様は今日は珍しく僕の元へやって来た
然し、褒めるなんて事はしない。御父様は兄さんの裏切りで激昂しているから、だから褒めてくれないんだ………きっと。
「はい、御父様。申し訳ッ……!!」
今日も何時もと何も変わらず、御父様は怒りのままに俺を怒鳴り付ける。
長男だから、跡継ぎだから、名家だから。一分一秒を家に捧げなければ生らない。皆がプレイステーションをして、スマートフォンを持って、友達と出掛けたり、遊んだりしている間も勉強しなければ成らない。そうしないと人間なんだと認めてすら貰えないから。
でも、僕は幸せだ。だって、御父様と御母様は神様だから。特技も趣味も才能も友人も何にも無い僕を唯一愛して、僕の将来の為に付きっきりで何にも出来ない僕を叱ってくれる、何も無い僕の全てだ
御父様だって、兄さんが勝手に金を持って逃げて傷付いてるんだ、きっとそうだ。
独り、カーテンにより閉ざされた部屋で左から右へと一寸の狂いも無く字を走らせていく。たった一秒でさえも留まることも知らず一年も二年も三年も先の事を書き連ね、終わりを知らない知識の群が脳髄を呑み込み侵す
時計も太陽も何も無く、時間が全く無いまま気づいたら夜が訪れ、家内さんが料理を運んでくれる。
家内さんも家内さんで僕の事を心配してはくれている様だけど、御父様と御母様には逆らえないようだ
黙って机に向かい続ける僕を見て落ち着いたのか、御父様は僕の腹を殴り、去っていった
黙々と問題を解いた後、隙を見計らって勉強机の引き出しを開けた
其の引き出しの中には小さな小瓶が入っていて其の中には深淵のマリンブルーと真紅を燦めかせる二匹の番のスプレンデンスが悠々と泳いでいた
「君はとっても綺麗で残酷な程に華やかだ、そして、ごめんね。此処から出してあげれなくて」
彼等はひらりと優雅に舞い踊るだけで決して助ける事はない、何故ならば彼等は意思疎通は出来るものの此の小瓶から出たら死んでしまうから。
でも、思った事を言える唯一無二の友達だった。御父様と御母様に監視されているから酷く美麗な彼には長くは逢えない、ただ、彼等は大切な事を教えてくれる
“別にいいんだ。だって私達は君の友達だから。”
「ありがとう。君達も冬だから風邪、引かない様にね」
皆んなみたいに彼等は酷い事を言わない、絶対に僕の背中を押して励ましてくれる。正に親友、心の友だった。暫く小さな軽い小瓶を額に当て、其の冷たさを感じて居たが、コツリ……コツリ……と控えめな足音が聞こえ、またそっと小瓶を戻した。
「明博様。御食事が出来上がりました。直ちに其方へお運びしますので御支度御願いします」
「えぇ。態々此処まで、有難う御座います。其れでは、僕は少々御花を摘みに行って来ますね。」
礼儀正しく頭を下げた彼女に僕も会釈をして、手を洗いに行く。真冬には似合わない冷水を手に流し、ごしごしと汚れが残らない様にきちんと洗う。目立った汚れが無くなり、丁寧にハンカチーフで拭き取った後、再び自室へと戻った。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
「有難う御座います。生命に感謝、頂きます。」
そう謂えば、昔は敬語すらまともに出来なくてよく父さんに殴られてたな……懐かしい
皿の上に豪勢に盛り付けられたのは、大漁の刺身の盛り合わせ。其れを彩るかのように生首が鎮座している
其れが目に入った瞬間、強烈な吐き気を憶えてしまって必死に口を押さえた
「う”ッッ…………」
父さん、?何で、どうして?僕が、何か、した、?
…………嗚呼、そう謂えば、今回のテスト。一睡もせずに勉強したせいで四点も落としてしまって合計点が五百点へ行けなかったから、か。
「折角作って下さったのに済みません、一寸体調が優れないので今晩の晩餐は要りません、本当に申し訳ありません。」
心配そうに此方を見詰めていた家内さんだったが、深く深く頭を下げると直ぐに部屋を去っていった。
当に其の瞬間、ずっとずっと、堪えてきたものが出て来てしまった
「お” ぅ”ぇぇ゙…………ッ、ゔぇっ、ごほッ……げほッ……」
そういや今日、何も喰って無かったな、
だからか胃液しかでない、喉がヒリヒリして気持ちわりぃ…………でも、こんな事、している暇ない、さっさと勉強しないと。
俺は手の物を乱雑に拭き取り、また書斎へと向かった
「……と……の化学反応は……だから、式は…………此時の留意点は…………」
気を落ち着かせる様に適当に取った参考書を開き、筆をただ、走らせた。自習用のノートは何百冊にも及び、俺の右手はたこと水膨れだらけで何とも醜い
「あ、…………」
そんな事を考えているとふと高い音を鳴らし錆びたシャープペンシルが手から零れ落ちる。気が付くと腕毎痙攣が止まらずカタカタと慄えている
其れでも震える手を抑えつつ、再び筆を執った。
此処まで、がんばったら……とうさんも、むかしみたいにほめてくれるかな、?
「おい!!!起きろ!!!塵滓!!!」
酷く身体が痛い、骨が軋む様な鈍い苦痛が迸る。
あぁ、そう、こいつらに体育館裏に突然呼び出されて、強引に引き摺って連れてこられたと思ったら集団でリンチされて、殴られて気絶状態だったのか。
「何呑気に寝てんだよド屑!!!!良い御身分だなぁ???」
「そんなに殴られたいのかぁ?御曹司君はぁ」
「なぁ、此奴ムカつくからさっさと殺そうぜ」
………………いいよ。寧ろこのまま殺してくれ
家では二十四時間監視され続けて、禄に部屋すら出られないから刃物だなんて論外。死ぬ事なんか出来ない永久の牢獄。
それくらいなら、もう、いっその事、
「ころして……くれ…………」
心の声が出た瞬間……奴等は下劣な笑いを見せた。そりゃあそうか。はは、死にたいだなんて、俺……可怪しいのかな。でも、俺もう疲れたよ。何で親の七光だとか俺も御曹司に産まれたかったとか、謂われなくちゃだめなの?
俺だって辛いよ、”普通”の暮らしがしたい”……普通”になりたい……ただ、其れ丈なのに。
「其れなら御望通り通り…………!!!」
駄目だ、ガキの頃に二階から落とされたときの傷が開いてしまったようだ、
「ねぇ、何してるの?辞めなよ。こんな事、酷い、もう頭から血が出てて意識が朦朧としてるじゃん。」
出来損ないの俺を助けてくれるだなんて、…………一体、誰、?
「やっぱり止めておいて善かった……あ……君、大丈夫?」
「あ…………」
朦朧とした混濁した意識の中。馬鹿らしいけれど、初恋をした。そう、当に人生で初めての恋。勉強漬けだった人生において唯一無二の希望だった
「大丈夫、キミは僕が護るから。」
何処か慌てた様子で僕を抱き上げた彼は保健室へといち早く向かってくれた
俺よりも二十センチ程高く所謂モデル体型でスラッとしている彼は白髪に近い美しい銀をはためかせていて、パッチリと開かれた両の眼は硝子玉のように透き通っており、今迄見た何よりも綺麗だった
若干息を切らしながらとたとたと保健室に忙しなく向かって行った
「はぁっ……はぁっ…………!!ついたぁ!!」
やっと保健室に着いた彼だったが、今日は運の悪いことに養護教諭の先生が居らずベッドに俺を乗せた彼は困惑していた
「あれ、先生いない?あ、!!今日出張だぁ!!!どうしよ……まず、消毒?其れ共…………」
「まず……傷口を水で洗い流して消毒して……その後にガーゼか包帯で傷口を覆って血がつかない様にしないと……」
慌てふためく彼を置いてその間に淡々と傷口の処理をし、再びベッドに横たわると彼は目をキラキラと輝かせていた
「す、すごいね!!!御医者さんみたいだった!!!」
「まあ…………」
すっかり綺麗になった傷口に彼は興味津々な様で瑞々とその整った顔を寄せて来る。こ、此れって、キ、キ、キ、キスの距離…………駄目、心臓がバクバクして治まらない
「僕…………何にも出来なかったなぁ、」
しょんぼりとした様子の彼は何だか好きなおもちゃを取り上げられた犬の様で愛らしい。両の眉を下げ物悲しそうな表情を浮かべる彼は突然何かを思い付いた様で、ぴょこりと立ち上がった。
「いたいのいたいの〜飛んでけ!!」
柔らかい笑みを浮かべてそう言った彼は酷く純粋で、僕の額の傷口に向けて魔法を掛けた。不思議なことにすっと胸の傷みも傷口も消え入って……軽々身体が動かせるようになっていった
「あ!!そう謂えばもうお昼御飯の時間だよね?僕……明博君の分、持ってくるよ!!!」
「あぁ、有り難うね」
彼はまるで、嵐のような人だ。また大袈裟に走り出した彼を優しく見守り、ベッドに身を預け、胸を撫で下ろす
「…………この腕の事、バレなくて良かった。」
ズキリと傷む腕はシャープペンシルの先端で抉られており醜い姿となってしまっている。
僕の醜い部分毎、彼に認めて愛してもらえたなら、どれだけ嬉しかったか…………
「どうしたの?表情暗いよ?ほら、明博君のお弁当!持ってきちゃった!!」
いつの間にか表情に出てしまっていたのか彼は僕の頭を数回優しく撫で下ろす。そして何とか身体を起こして机へとよろけながら向かう、どうやら彼も一緒に食べる様で向こう側の席へと腰掛けた。
彼が持ってきてくれた弁当を開けると一面の白米……僕が詰めたものだ
「日の丸弁当ってやつ?美味しそう!!」
本当は料理なんてさせてもらえなくてわからないだけなんだけど、子供のように純粋な彼を見ていると自然とこの弁当も美味しく思えてきた。
「君はサンドイッチ?美味しそうだね。」
「ヘヘ〜〜お母さんにおしえてもらったんだ!!」
「そうなんだ!何時か僕にも作り方、教えてよ!」
他愛も無い雑談を話しつつ、味の無い白米を食べ進める
なんの味の無いはずなのに何故かとっても白米だけの質素な弁当が美味しく感じた。
のに、食べ進んで行く毎に異変を感じた
「………………?」
何だかお米とは違う、箸に硬い感触が…………は、
食べ進めていく度に全貌を現したのは焦げ茶色の何らかの物体………頭部があり、未だに微弱に脈打っている
「………………お”げぇッ……!!うぇッ……うぇっ……う”ッ、」
また、か、お弁当に虫を入れられるのは。米と米の合間でモゾモゾと蠢く其れは既に四肢がなく辛うじてなけなしの生をつないでいる様だった。
ぽたぽたとそれらの上に吐き出されたものの中には黒い斑点の様なものもあり……僕は全ての意味を察しとった
「お”ッぇ……え”……ッ、ぇ、あ、」
どろどろのそれと質素な弁当が混ざり合って、其の中から黒い其れが浮き彫りになって居るのが目に入ってしまい、再び吐き出してしまった。嗚呼、食事中に……こんな、御下品な事を……してしまって、厭な気分にさせてしまって、優しい彼でも流石に嫌われてしまっただろう。
暫くフラッシュバックしては嗚咽が続き、胃液やら何やらが弁当箱の中に飛び込んだ
こんな所を見せてしまって申し訳ない……
「…………ごめんね。折角持って来てくれたのに」
「いいや!!全然気にしてないよ!!体調悪そうだけど、病院に行くかい?」
病院…………でも、此の前体調が悪くて早退した時目が開けれない位殴られたからな、其の時のせいでまだ片耳が聞こえない……でもこれも御父様が俺を護ろうとして居るんだ、
だって、御父様が虐待………だなんてそんな、こと
「…………明博くん、?」
「あ、別にいいよ。其れと後もう一寸で掃除の時間じゃないかい?僕も行くよ。」
取り敢えず弁当箱を閉じ、開かないように固定して汚れた机をティシュペーパーで拭き取り消毒しておいた
使った物を整え、弁当を持って教室に戻った
「俺って何年何組だっけ………」
そう謂えば俺、ずっと家に籠もって勉強させられてたから学校に来るの久々だな……学校のレベルは生温いとかなんとかでずっと難しいのをやらされていたからな。アレは本当勘弁………一睡も出来なかった
「三年C組だよ!!それじゃあ僕はA組だから、じゃあね!!」
眩しい笑顔を満面に浮かべた彼は足早く去ってしまった
此処で呼び止める事が出来ないから、何時迄も僕はおこちゃまなのだろう
「あッ……じゃあね」
別クラスか……道理で見たことなかったのか。でも一年生なら会う機会無いや…………諦めるしか無いのだろうか
彼に謂われた教室へと足を運ぶと掃除中の様でバケツの水を掛けられた
「どの面下げて現れてんだよ!!気分悪い………」
「俺等掃除面倒くせぇから後は頼むわw」
顔面に雑巾を投げ付けられ、見えない視界の中手探りで周囲を拭いた。蜘蛛の子を散らすように逃げていった彼等によって教室には僕独りで、ただ黙々と床を拭いて雑巾がけをした。実家の屋敷を雑巾がけするよりは遥かにましだ
と自分をなんとか鼓舞して教室を雑巾がけして、モップ掛けして、意図的に汚された床を箒で掃いて。「クズ」やら「気持ち悪い」やら「死ね」やら書かれた黒板を消して…………
「何律儀に掃除してんだよ!!つまんねぇな!!」
途中でずかずかと足を踏み入れた彼奴等は、あろう事か教室に思い切り塗装用のペンキをぶち撒けた
…………また掃除しなければ、退学だ
あれ、何時まで続くのだろう、虐められては家で虐待を受けて、泣いて自分を傷付けて…………僕の居場所なんても何処にも、無いんじゃないんか、?
「わぁ……此れは酷い、明博君、雑巾貸して!!僕も手伝うよ!!」
ただ呆然と真紅のペンキを見つめていた僕の肩を叩いた彼はテキパキとペンキを拭き取り始めた
はっとした僕もモップで必死になって教室を掃除した
「どうして、君みたいな人気者が……?僕なんかを助けてくれるの?」
「ふふ、其れはね…………」
白い吐息を吐きながら頬を赤らめた彼はやや俯いた
と同時にキーンコーンカーンコーンと無慈悲なチャイムが鳴り彼は気が付いた様で、また自身の教室へと帰って行った。
つまらぬ授業が始まり、終わり、始まり、終わる。
頭の中は彼の事で埋め尽くされており、あるはずの無い恥辱が脳髄を塗り替え彼の温もりに狂う
何時しか、彼と共になら雑巾を噛みしだいた様なこの苦痛も乗り越えられるのだろうか。とさもしい妄想が木霊する
相対制的にあっと終わった時間が愛おしく、暮れゆく夕焼けを仰ぎ乍らとぼとぼとしょぼくれながら帰宅した
家の敷居を跨ぎ、靴を並べていると何時もより厳しい顔をした御父様が見窄らしい僕を見下し眼前で扉を閉めた
「え、…………?御父様、?御父様!!どうして、開けてくださいよ……!!」
酷く困惑し扉を控えめに叩いていると鬼の形相の父さんがとあるプリントを見せてきた
其の手には西真明博の記名と二十一点と書かれた数学の学期末テストがあった
違う……俺はこんな字じゃないし、五教科……しかも数学でこんな点数取るわけ無い。第一……こんな簡単な問題、此の俺が間違える理由絶対にない。
「何故此の解答用紙を隠していたんだ!!此の出来損ないのグズめ!!もう御前は西真家には必要無い!!!出て行け!!!!今度の全国共通テストで一番を取るまで御前は西真家とは認めない!!!早くあんなの!!!消しておけばよかった!!!!」
其れと共に、”とっくの昔に”何も入って無かった瓶が投げつけられた
嘘…………スプレンデンスは、?
父さんはぴしゃりと燦然な音を立て、鍵を締めた。もう家には入るなと言うことだろう
父さん……?何で…………?何で俺を認めてくれないの…………?そうだ、一番を取ればまた俺を見てくれるかもしれない……!!父さんは神様だから、父さん捨てられたら俺なんか直ぐに野垂れ死ぬ。優しい父さんは俺の為にしてくれているんだ……!!!
はは……、まるで、肺が凍りそうだ、
「はぁ…………ッ、はぁ……ッ」
そ、そうだ、今此処はハイフン5℃程、どうせ外だから凍え死ぬだけ俺は二番だから一番の奴を殺せば良いだけだ!!!何でもっと早く気付かなかったのだろうか……!!!一番を殺せば俺が一番!!!!其れでいいじゃないか、ハハ、大丈夫、また、出来る、俺なら。
隠し持っていたカッターナイフを震える手に握り締め、夜に呑まれる街を練り歩く。確か、彼奴の名前は……露西亜からの留学生で、ゴーゴリって名前だった。
「此処の家、の二階。」
屋根やら何やらを持ち前の運動神経で攀じ登り、じりじりと二階へと迫って行く。
そっと硝子を叩き割り身体中から血を流しながらポタポタと血液の垂れる両手にカッターナイフを握り締め暗闇で顔の見えぬ相手に向かって振り上げた
神の悪戯なのか、その時だけ月光が妖艶に辺りを照らし月に照らされた寝顔が明らかになる。
「え…………君は……僕の……」
然し、力の籠もった其れは振り降ろされてしまい標準を外して彼の左の眼に忌々しい傷を刻み付ける
余りにも大きい後悔と罪悪感に逃げようとすると飛び起きた彼が僕の身体を抱き締めた
密着させる様に強くハグをした彼は片手を僕の後頭部に回し、撫で下ろした
「いいこ、いいこ。よくがんばったね、えらいよ。
あきひろくんはいいこ。」
「え……は、ぇ…………」
何が何だか解らない、何故、彼は僕の名を知っているのだろう。
「よくがんばったね、もう頑張らなくて良いんだよ、他の誰が見捨てても僕が守ってあげるから」
でも、なぜだか酷く安心する…………まるで、昔の母さんに会ってるみたい、
「よしよし、頑張ったね、きみは良い子だよ
声を抑えて泣いてるのも、みんながこわくてこわくて堪らないのも解かるよ……無理しないでね」
鼻水と泪で顔中ぐちゃぐちゃになって、優しく僕を受け入れる彼に泣き付く、
薄暗く僕達を照らす黎明の中、彼の物悲しそうな顔が朧に脳内に残った。
其の儘、彼の家で一晩を過ごし申し訳なく想いながら朝御飯を御馳走になって彼より一寸遅れて学校に行くと異常が起こった
「…………お早う、」
――――――虐めが無くなった。
其れは急な事だった、こんなの可怪しい。
ノートも隠されない。教科書も破られない、弁当に虫も入れられない。水も掛けられない、
こんなの有り得ない
途轍もなく、嫌な予感がする。
「ねぇ、明博君、今日もうち……泊まっていく?両親、いないんだ。明博くんがいると安心するからさ。僕はちょっと遅くなっちゃうから一緒には帰れないけど、」
柔らかに微笑んだ彼の首元には痛々しい痣があった
…………昨日には無かったものだ。其れなのに、何故……真逆、
放課後。彼奴等に聴いた、そう。最悪の想定を
「お前等、真逆…………標的をニコライ君に変えたな?」
訝しげな表情で奴等に問い掛ける、どうか。杞憂であってくれ。
だが、帰って来た返答は無慈悲な物だったよ
「嗚呼、そうだよwww彼奴、御前の事が好きだから自分には何しても良いから助けてあげてって言って来たんだよwwwww数年前にwwwwでも、服脱がせてもちんこ扱かせても抵抗しないからさw男だけど顔は可愛いから使ってやってるだけwwwwwまぁ、元々ケツ掘られてたみたいだしwww御前にも貸してやろうか?wwwww」
「はーッ、はぁーーッ、…………」
堪えろ、堪えろ、コレは罠だ、此処で俺を怒らせて手を上げさせようとして居る。落ち着け、耐えろ、キレるな…………耐えろ……耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ
「おーおー怖い怖い、じゃあ俺帰るから…………じゃあな。」
殺したい、彼奴が憎い、殺したい…………そんな憎悪やら、何やらが黒く渦巻いて死にそうだ。
取り敢えず、もう彼の家に戻ろう、其の方がいい…………
もう、此処からは正直、よく覚えて居ない
彼の家に帰ると作り置きの惣菜と其の上にはメモで出掛けてきますとだけ書き記されて居た
駄目だ、言っちゃ駄目…………途轍も無く厭な予感がする、
なのに、なのに、何も出来なかった。屑だから……鈍間だから…………駄目な子だから、産まれてこない方が良い子だから。
死ねば良いんだ。そう、死ねばこんな事にならなかった。僕と言う存在が居なければこんな事にはならなかった。………………彼は殺されなかった、
それから3日も経って、結局帰って来なかった彼を探しに誰も来て居ない早朝から学校へと向かった
そして、僕の机には変わり果て、唯の肉塊と化した彼が居た。冬場とはいえ暖房の効いた部屋にでも放置されてしまったのだろう
「痛いの痛いの飛んで行け……痛いの痛いの飛んで行け……痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、痛いの痛いの飛んで行け、」
そんな”まじない”効くはず無いのに、心を無くした様で狂った様に肉塊にずっと言い続けた
だって、彼が言った時は効いたのだから………きっと、彼はいつも通りヘラリと笑って起き上がって、受け止めてくれるだろう
もう腐敗が進んでいて涙の跡が残る顔、剥き出しなった身体にはイカ臭い白濁が這っていて其の中にはつい最近のものもあった。そう、其れは屍になっても尚屈辱を受けたと言う事だった
「お!やっと来た!!!いやー、其れ?キモいから捨てたんだよwww塵箱に「黙れ!!!!御前は存在してて良い人間じゃ無い、死ね。今直ぐ、此処で!!!!」
走馬燈の様に、これ迄の事がフラッシュバックする。そこから気付いたら死体が転がっていて、いつの間にか捕まって死刑だ。
全てを仕向けたクソ親父は俺の面会に来て怒鳴るだけ怒鳴って行った。何がしたいんだろ
「…………明博、御前……何でこんな、」
すっかり看守として責務を全うしてる兄貴が口を覆い、檻の中の俺を見下した
俺達は瓜二つな癖に性格は真逆、こいつは俺を置いて出て行った、
「兄貴こそ、何処行ってたの?」
「…………あの後、県外に働きに出て、グレて……でも今は良い嫁さんに出会ってね。二人の子供がいるよ。……明博は何で此処にいるの?」
はは、何だよ、裏切った兄貴が幸せになって、従順だった俺は大切な人を失って、この世の中クソだ
「………………大切なひとを殺されたんだ。そう、あの人は人の心を知らない怪物だった俺を人間にしてくれた、大切な人だったんだ…………」
「じゃあな、兄貴……嫁さん、大切にしろよ?」
キザに手を振って、解き放たれた暗い暗いの檻から猛獣は囲われた正方形に仁王立ちした。
泣くこと、喚く事も怒ることせずニヒルで何処か乾いた笑みを浮かべた彼は静寂を纏いその場に立った
「被告人、最期に言い遺す事は?」
そう問われた時、彼の脳内には嘗て性的暴行を受けていて自身に助けを求めた少年の事を思い出した。
其時、彼の父親に二階の窓から投げ捨てられ記憶を失ってしまった事も、唯一無二の自身の友人は激怒した親により料理されて無理矢理食べさせられた事も。全てが虚しい哀しいただの妄想だった事も。
「…………最後に、君は僕を人間にしてくれた、そう、俺の中の”救い”だよ。」
まだ、最期ではない事も
丑刻の時は満ち。参つの解は解かれた。彼は足場を無くし、手足がぶらりと浮く。そして、浮き彫りになったのは不気味に口角が上がった笑み
「おや、何故死ねないのだろう。可怪しいね」
彼は自身の犯した”原罪”と与えられた”厳罰”によって、「首吊り肢体」となったのだ。
実に滑稽な嗤い噺である」
「え…………?これ、何で僕と明博くんが出ているの、?どういう事……?」
水の惑星の最極端。極寒の荒地の主。西間明博、彼と姓を伴にする彼は酷く困惑していた
彼の入り浸る書斎部屋の中から「軒下の首吊り肢体」と云う本を見た彼は口を抑え絶句していた
妙に生々しい其れは現実の様でゴーゴリは何が何だか解らぬようだ
「あー、勝手に見ちゃ駄目だよ。”裙”は何にも知らなくて良いからね。」
彼の背後で妖艶に微笑む彼はゴーゴリの手から本を奪い取った。何時もの露西亜帽と背広を身に纏っていた。が、その額には何針か縫われた跡があった。
「軒下の首吊り肢体」――完。