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「____姉さんさ、髪…短く、なった、よね」
さらっと言うつもりが言葉が詰まる。
目が合わせられない。
「…?」
「ああ、そうだったね、僕…髪長かったね」
なんだか返答になってはいない。
だけど、だけどこれは仕方がないこと。
昔、私は姉さんと共に主様と過ごしていた。
それはもう毎日が楽しくて楽しくて、私はこんな日々が永遠と続くのだろうと勝手に思っていた。
でもそれはただの私の勝手な妄想だった。
私が酷い怪我をしてしまった時、姉さんは草を買いににでかけた。
そこから姉さんは帰ってこず、主様は姉さんの様子を見にいった。
そしてヒヅキ様は、血まみれの姉さんと帰ってきた。
姉さんは浅い息を繰り返し口からは血を流していた。
私は姉さんに駆け寄り
「姉さん!姉さん!どうしたの…?なにがあったの!」
と初めて声を荒げてしまった。
「琴音」
そう静かに主様が言う。
「…はい」
「湊は、あの近道の裏路地を通る途中に暴漢に____」
「…は?」
「そいつはどこなんですか?」
「…わからない」
「……そう、ですか」
「それより、最後になるかもしれない君の姉と話しなさい」
「は、い…」
そう言って主様は部屋を出ていった。
私は姉さんをベットに優しく置いて語りかける。
その時にはもう姉さんはなにかを悟っていたのだろう。
「…こと…ね、」
「!」
「なに、姉さん、どうしたの」
「ありがとう…ね、わたしのいもうとに…うまれてきてくれ、て…」
「姉さん…そんな…そんな言い方しないで?」
「いつもみたいに私のことからかってよ…」
「いつもみたいに笑ってよ…」
「なかないで…ことね…わたしは…私は大丈夫だから…わかるんだよ」
「ちょっと長い間…お別れ…だと思うけど…」
「必ず…必ずいつかまた笑い合えるから、ね…」
「っ…!」
「げほっげほ…はぁー…はぁー…っ、」
「姉さん…姉さん…!」
「あり、がとう……」
私は初めて姉さんが泣いているところを見た。
でも、この涙は、悲しみではない。
私は今もそう思っている。
今の姉さんには言わない。
“それ”を知っているのは私だけ、私の中だけの姉さんだから。
今の姉さんは昔とは少しづつ違う。
揶揄うのが好きなところは変わってない。
でも口調が変わったよね。
あと…一人称も私から僕になったね。
私は昔の姉さんが主様に淡い恋心を抱いていたのも知ってるんだよ。
私しか知らない姉さん、いつまでも変わらない思い出の中で。
____ゆっくりおやすみなさい