仕事終わりの帰り道
どんよりとした感情と薄暗く照らす蛍光灯が混じりあってどっと疲れる
冴えない足取りのまま歩いているとふとギターの音が聴こえてきた
遠くに目を向けてみると座り込んでいる男がいた
ギターを持って道で弾き語りをしているみたい
「拝啓、君に伝えなくちゃいけない言葉を書き溜めていく」
「シャンプーの匂いが消えないうちに早く会いに」
「離れていても心は近くだって思ってたいの」
恋について綴った曲のようだった
普段はあまり聴かないような歌詞だったけれどどこか惹かれる所があった
音楽が鳴り終わると私はその人へ声をかけた
「すみません!曲素敵だなと思って、これからも頑張ってください!」
貴方には私がどう見えたんだろう
ボロボロの会社員が声をかけて
疲れきった表情で⋯最悪だ
そんなことを考えていたら男は口を開いた
「ありがとうございます、また聴きにきてください」
ーーーー
目の前が真っ暗だった私にも日課ができた
帰り道この男に会いに行くこと
演奏を聴いては感謝を伝えて帰る、そんな日課が
でも少し気持ちが楽になった
「これから売れていくんだろうなぁ⋯」
そんなことを考えながら私は今日もあの人の元へ
ーーーー
雨が降っている
ノイズのような雨音の中私は傘を持っていなかったから急いで家へと向かう
今日もあの人はいた
けれどギターを持ってはいなくて
ただ道に突っ立っていた
「風邪引くよ!」
私は声をかけていた
⋯気づいた時にはいつもは1人の部屋に2人居た
いつもは道に座り込んでいた男と2人きりで
でも風邪をひかれたら貴方の演奏を聴けなくなると思って
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