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●前回の続きです
●モブの女性が出てきます
side【鳴海】
…..先ほどから保科が口を聞いてくれない。
約束を破ってしまったボクが悪いが、保科は一度怒るとしばらく口を聞いてくれないのだ。
謝ったりすれば許してくれるのだが、そんなすぐには許してくれない。
ということで、いつもやっている『ご機嫌取り』をすることにした。
「保科」
「……」
名前を呼んでも簡単には返事してくれない。
なので、今からとある店に向かう。保科が好きなものがある店へ。
「ちょっと出かけてくる」
無言で出ていくな、と言われてるため保科に一言かけて玄関へ向かう。
「……ん、」
きちんと小声で返事してくれる。保科の優しさだ。
玄関のドアノブに手をかける。
家から徒歩5分ほどにある、小さな店。
ケーキ屋であるそこに入ると、ドアの上についている鈴が鳴った。
「こんにちは、お客さん」
そこにいつもいる、女性の定員。
肩下まである茶髪が風に揺れ、靡いている。
特徴的なアホ毛がぴょこぴょこと揺れた。
「あ、鳴海隊長じゃないですか。」
「また会ったな」
ここにはよくくるので、いつのまにか常連客になりつつある。もっとも保科が行きたいと言うからくるのだが。
「今日は保科副隊長と一緒じゃないのですか?珍しいですね」
こいつはボクと保科の関係を知っている。最初は「親友」を装ったのだが、途中でバレてしまった。
けど他の人にバラすようなこともしなかったため、保科も特別に許している。
「今日もモンブランを買いに?」
「あぁ、保科を怒らせてしまってな」
「なるほど、でしたら新作のモンブランを作ったのですが、お2人にぜひ食べてもらいたいです」
「また試作品か?」
「毎回申し訳ございません」
いつもここに来ると、試作品のモンブランを食べてほしいと言われる。
完成品も食べてみたいが、他の客よりひと足先にモンブランを食べられるので、結構楽しんで食べている。
保科はモンブランならなんでもいいようで、いつも美味しそうに食べている。
「いや、構わない。用意してくれ」
「2つですね」
「あぁ」
「かしこまりました、少々お待ちを」
そう言って女性定員はレジを離れた。
「どうぞ」
数分後、女性定員は小さな袋を持ってやってきた。
あらかじめ置いておいた金を指差して
「金はそこに置いといたぞ」
と言った。
「ありがとうございます、またお越しください」
そう言って女性定員はにこっと微笑んだ。
その言葉と共に、ボクはドアを開けた。
「帰ってきたぞ」
モンブランが入った袋を机に置く。
ソファに座って本を読んでいた保科は、袋を置く音を聞いてチラリとこちらを見た。
「……それは?」
「お前の好きなものだ。知りたきゃこっちこい」
そう言って袋から箱を取り出す。保科はというと、気になったのかそーっと近づいてきた。
箱を開けると、小さく切ったチョコが乗ったモンブランが2つ。
「!」
匂いで気づいたのか、小さく「モンブランや」と呟いた。
「食べるだろ?」
「…食べる」
頷いてキッチンにある棚へと向かう。どうやら皿とフォークを持ってくるようだ。
「はい、これお前の分」
「ありがとうございます」
「美味しいです……!」
「だろ?」
頬を膨らませてハムスターのようにモンブランを食べる保科。
「機嫌なおったか?」
「はい、すみません……少し怒りすぎました」
「気にするな」
「ありがとうございます…ご馳走様です」
「ん」
ふ、と微笑む。保科は少し驚いたあと、ふふっと笑った。
ということで、ご機嫌取りは今日も成功した。