小説プラットフォーム『Teller Novel(テラーノベル)』で活躍する作家のコミカライズ事例をはじめ、創作に関するヒントをお届けする『Teller Novel more(テラーノベルモア)』。
前回は、『リアコイ!』がコミカライズされた畑下はるこさんのインタビュー第1弾をお届けしました。今回はその第2弾として、畑下はるこさんの創作キャリアにフォーカス。趣味として創作を楽しむことからスタートし、現在はフリーランスとして小説やゲームシナリオの制作を手がける畑下さんに、創作人生の始まりからキャリアを築くまでの道のりを伺いました。創作を仕事にしたいと考える方にとって、貴重なヒントが詰まった内容となっています。最後までぜひご覧ください!
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ゲームに劇まで!“なんでも書く”シナリオライター畑下さんの創作遍歴

Teller Novel more 編集部(以下TNM編集部)
畑下さんの創作活動について、可能な範囲でプロフィールと経歴を教えていただけますか。
畑下はるこさん(以下畑下さん)
10年少し、シナリオライターという仕事をしています。
基本的にゲームに関わるお仕事をしていて、いろんな家庭用ゲームのお話の一部分を書いたり、キャラクターのセリフを書いたり、イラストの発注をしたりしています。がっつりやる時は、ゲームの世界観やキャラクターの設定にも関わります。そして、たまに劇の台本制作もやっています。
TNM編集部
今はゲームのシナリオ制作がメインのお仕事になるんでしょうか。
畑下さん
はい。でも、書かせてくれるならなんでもやります。
TNM編集部
とても心強いですね。ゲームシナリオも脚本も小説も…と創作において多様なキャリアをお持ちなんですね。
畑下さん
そうですね。できることがいっぱいあった方が面白いので、いろんな方面の創作をやりたいと思っています。
ゲーム業界を目指していたはずが…?創作の才能が開花した瞬間

TNM編集部
創作活動を始められたきっかけや、始められたタイミングはどんな時でしたか。
畑下さん
中学生くらいの時、絵を描いたり小説を描いたりするオタク友達がいて、遊んでいるうちに自分も一緒に創作活動していたっていう感じですね。
TNM編集部
以前から創作がお好きだったんですね。
畑下さん
ずっと立派なオタクだったので(笑)。もともと自分も描いてみたい!という気持ちがありました。
絵と小説の両方を作るなかで、絵はあまり褒められなかったのに、小説はインターネット上で褒めてもらえることがめちゃめちゃ多かったんです。それで、「小説を書いて何かできるかもしれない!」と思って、文章を書くアルバイトに応募したら普通に通りました(笑)。
TNM編集部
素晴らしいですね。
畑下さん
「小説を書いて何かできるかもしれない!」から、今こんなことになっちゃいましたけど(笑)。
TNM編集部
とんとん拍子に話が進んでいきますね(驚)。
学生の頃に趣味として創作を始めて、成功体験を味わったことが創作キャリアの始まりだったと。当初から「小説家になりたい」という明確な夢があったのではなく、徐々に流れに乗るようにして今のお仕事に就かれたんですね。
畑下さん
はい、もともとはテレビゲームが好きで、ゲームのグラフィックを作る人になりたかったんです。
ただ、大学生くらいの頃に、どうにもその方面には才能がなさそうだ、と気が付いて。
だんだんと、なんでもいいから物を作ったり誰かを楽しませたりする方向で頑張りたいという夢に変わっていきました。そうしたら、小説などの今やっている方向性でできることがありそうだ、となったんです。

TNM編集部
そうでしたか。ゲームグラフィックの方面で才能がなさそうだと思った理由はなんでしたか。
畑下さん
芸術系の短大にいたんですけど、いい成績が取れなかったんです。
私は自分が納得できるものを作ればいいというタイプではなく、人が喜ぶものを作りたい人だったんです。この考えがベースとなって、人の評価に登らないものを作ることは自分が求めている方向と違うのかもしれないと気付きました。
TNM編集部
うんうん。喜ぶものを作りたいというマインド、素敵ですね。
それからは、アルバイトなどで物書きのお仕事をされていったんでしょうか。
畑下さん
はい、そうですね。
個人のお客様からリクエストをいただいたものを書くアルバイトがあったんですが、それがすごく調子が良かったんです。調子が良かった結果、最終的にアルバイトから正社員に登用されて。そこがゲーム会社だったのでそれからずっと本格的にゲーム制作をしていました。
TNM編集部
どんどん夢が現実化していきますね。
畑下さん
やれることをやっていたら普通に評価してもらえるんだな、というのはその時感じました(笑)。
フリー転身のきっかけはまさかの…!苦境を乗り越えた畑下さんのキャリアストーリー

TNM編集部
趣味から始まった創作がどんどん展開していくことに驚いていますが…そこから正社員を経て、現在のようにフリーで活動されるに至るまではどのような経緯があったのでしょうか。
畑下さん
楽しくない話になりますが…正社員時代、いろいろな付き合いの中でとんでもないパワハラを受けたことがあり、それをきっかけに外へ目を向けた結果いろいろとチャレンジをしてみたくなって、改めてフリーランスとして会社のお手伝いをしたり、在宅でお仕事を受けたりしてみました。
TNM編集部
それは大変でしたね。
畑下さん
本当に大変ではありました(笑)。
TNM編集部
当時の状況を知らないからこそ言える話ですが、今となってはすごくいい方向に進んでいらっしゃるので、勝手ながらいいきっかけになったとも捉えられますが、当事者としてはどうでしたか。
畑下さん
本当に悪い言い方をしてしまいますが、おかげ様でゲーム会社の正社員でしたという経歴を言えるようになったので、キャリアづくりにおいてはとてもいい経歴になりました。
TNM編集部
たくましいですね…。
畑下さん
いろんなことをやってみることは本当に楽しいし、思わぬところで役に立ったりするので今では良かったなと思っています。正社員を経験したことは本当に良かったです。
フリー転身時に仕事はどう掴む?リアルなフリーランスの働き方&案件獲得術

TNM編集部
正社員からフリーになる最初のタイミングで、どのようにお仕事を掴んでいったんでしょうか。
畑下さん
遠慮なく仲介会社を頼りました。
仕事って、あるところにはあるけれど、一人のところには回ってこないんです。
一度しっかりとお仕事をした経歴や感覚があれば、個人にも仕事が入ってくるようになるので、最初は同業者との繋がりに頼って、相談して…という感じでしたね。相談できる人がいなかったら、仲介会社を頼るなりしないと仕事が入ってこないなとは思います。
TNM編集部
そうだったんですね。
創作関連のお仕事をされている方の中には、どうやって仕事を得るかという部分で将来への不安を抱える方が多くいらっしゃるので、繋がりを活用してお仕事を掴んでいく話はとても大事なポイントだと感じます。
畑下さん
最終的には、お友達がいっぱいいる人は強いですね…。
私も顔が広い方ではないので、ちょっと辛い現実なんですけど…(笑)。
TNM編集部
クリエイター界隈も繋がりは大事ですよね。
畑下さん
大事ですね、すごく大事です。
TNM編集部
畑下さんは、今では本当に多くの実績を積まれていらっしゃいますよね。
畑下さん
はい、本当に皆さん大変よくしていただいて、ありがたいなと思っています…。
TNM編集部
素敵ですね。普段はいくつかのプロジェクトを並行して進められていらっしゃるんでしょうか。
畑下さん
そうですね。大体、締め切りが1ヶ月や2ヶ月程度のものが2〜3個ある状態にしておかないとまずいって感覚で仕事を受けています。
畑下さんは“The 理詰め”!企画やアイデアの生み出し方は?

TNM編集部
創作においてもいくつかお伺いしたく、物語のアイデアや企画は、いつもどのように生まれてくるんでしょうか。
畑下さん
モノにもよりますが、例えば『リアコイ!』だったら、最初は中学生ぐらいの方に読んでもらいたかったので、そこからどうアプローチすると読者の気持ちに届きやすいか、を本当にずっと考えます。
TNM編集部
どんなところからヒントを得られるんですか。
畑下さん
自分がその年や同じような環境だった時にどういうものが好きだったか、というのが一番取っかかりやすいです。
でも、いろんな作品を見たり聞いたりした中でアイデアが浮かぶことも本当に多いので、気分転換に何かを見ながら頭の中でずっと考えてますね。
TNM編集部
ひたすら考え抜かれるんですね。話のオチの作り方なんかも、いろんなところからヒントを得て考えるものでしょうか。
畑下さん
私は本当に理詰めで作っていってしまう人なので、そうですね。
昔、物を作るやり方を教えてもらった時に、“必要なことから決めていけ”と教わりました。
最終的にどういう気持ちを与えたいかとか、どんな人にどういう感情になってほしいかを考えていくと、どんどん選択肢が絞られていくんです。なので、最初に決めるべきところを決めると、ある程度自然に決まります。
TNM編集部
なんだか迷いなく作っていけそうですね。
畑下さんは直感型というよりは、本当に理詰めで行動派な制作スタイルですね。
畑下さん
何かつまずいた時に立ち返るのは、いつもそこな気がしますね。
私は突然アイデアが降ってくることが全然ないので、そのタイプの方がすごく羨ましいんです(笑)。
TNM編集部
突然アイデアが降ってくるタイプの作家さんも、たしかに多くいらっしゃいますね。
いろいろなスタイルの作家さんがいますが、畑下さんは私がインタビューする中で初めてのタイプです。
畑下さん
やった〜(笑)!
天才型にはなれないので、理詰めで頑張ってるんです…。
「詰まったら、大きいところを捨てる」ブレない物語を作るための思考法

TNM編集部
アイデアに詰まった時など、制作においてさまざまな点でつまずく瞬間があると思いますが、畑下さんはどう解決されていますか。
畑下さん
一旦…大きいところを捨てます。
TNM編集部
大きいところを捨てる、どういうことでしょうか。
畑下さん
私は、あらすじを考える段階でアイデアを叩いて叩いて理詰めで考えているので、後から急に矛盾が生じることはほとんどなく、詰まるのは最初にあらすじを考えているときくらいなんです。
つまり、その段階で詰まるってことは、ストーリーを構成する根本的なところが間違っているんじゃないかと思います。例えば、話のオチに向かっているのに、今のキャラクターの心情ではどうしてもこのオチにたどり着けないと感じた場合、オチか心情のどっちか捨てるしかないじゃないですか。
TNM編集部
はい。
畑下さん
だから、もう大きめのところをガツンと捨てて作り直しますね。
TNM編集部
自分が作り手側だと想像すると、そこにこだわってしまいそうですが、思い切って捨てるんですね。
畑下さん
心情とオチのうちどっちが大事かを考えて、「いや、こっちが大事だな」と思ったら、大事じゃない方は捨てます。
TNM編集部
すごい…そんな風に割り切って、理詰めで制作していける方って多くはいらっしゃらないのかなと思うんですけれども…。
畑下さん
こだわった方がいいものができる時もあるので人によりますが、私はそうしないと進まないと思ったら、これ以外では進められないんです。
TNM編集部
とても切り替え力が高いんですね。
畑下さん
そうなんですかね…。だったらすごく嬉しいです。
捨てたオチや心情も、この作品に合わなかっただけで別の作品で使えるかもしれないじゃないですか。だから、この作品で一番伝えたいことが何なのかに最大効率を出したいと考えています。作品の中でやりたいことだけど、この作品で伝えたいことの障害になっているなら、それは別の作品でやろうって考えるんです。

TNM編集部
“思い切って捨てる”という点のほかにも、心がけていることがあったら教えていただけますか。
畑下さん
“自分本位にならないように”しています。
ずっとずっと同じことを言ってしまいますが、自分のために作れるタイプではないんです。なので結局、私が作ったお話は読者に向かって話しかけていることになるんですね。
TNM編集部
はい。
畑下さん
だから、「こういうのっていいと思わない?」と話しかけている時に、それが素晴らしい内容だったとしても、伝わりづらかったら意味がないと思っているんです。なので、読んでいる人にわかりやすく、伝わりやすく、エゴにならない作品作りをしたいとずっと思っています。時には、あえて伝わりにくくすることもありますけれども。
TNM編集部
素晴らしいですね。本当に読者ファーストで制作されているのが伝わってきますね…。
作家を目指す方や創作に悩む方にアドバイス

TNM編集部
このメディアは、作家を目指してる方や現在進行形で作家をしている方に読んでいただくことが多いと思うのですが、悩める作家さんに向けてアドバイスはありますか。
畑下さん
たくさん作品を作って、自分が何を作りたい人なのかがわかってくると作るのがすごく楽しくなると思います。いろんなスタイルの人がいるから、自分は本当にこの方向でいいのかなとか、これで売れるのかなとか、認めてもらえるのかなとか考えますし、目指すところもいろいろあると思うんです。でも、自分が何を目標としているのか、そこに気付くことがまず大事だと思います。
例えば、昔の友達にどうしても本を出版する作家になりたいっていう人がいて、そのためにいろんなアプローチをしていたんです。でも、本を出すと言っても、いろいろあるじゃないですか。エッセイ本を出したいとか、小説を出したいとか。
その「自分が何をやりたいか」という目標がはっきりすると道筋が立てられるし、作ることそのものが楽しいんだとしたら、「じゃあこれを突き詰めよう」と方向性を決めることができると思います。
「作家になりたい」というと結構幅が広いので、“どんな作家さんになりたいのか”を考えると、将来の役に立つし、道筋も立てやすくなるし、何より楽しいかなって思います。
TNM編集部
なるほど…。制作においても目標を立てる場面においても、広いところから狭めて確度を高めていくという考えは共通していますね。
畑下さん
私は結局、あれもやりたいこれもやりたいといろいろやっちゃっているんですけど(笑)。
それはそれで新鮮で飽きないし、できているのでいいかな、と。
TNM編集部
いろいろやりたくなってしまいますよね(笑)。
ぜひこれからも多方面での活躍を楽しみにしています!
畑下さん
はい、誰かのお役に立てれば幸いです。本当にありがとうございました!
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今回協力いただいたクリエイター
畑下はるこさん(テラーノベル公式作家)

フリーのシナリオライター・プランナー。普段はゲームのシナリオを作っています。恋愛とファンタジーと猫が好き。