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Interview

『学級裁判デスゲーム』原作者・雨宮黄英さんに聞く、コミカライズや創作の裏話

才能あるクリエイターの作品を広く届けていくため、テラーノベルが積極的に行っているのが作品のコミカライズ。『Teller Novel more(テラーノベルモア)』ではコミカライズ事例やその裏側を中心に紹介しています!

本記事では「comic killa」(ぶんか社)で連載中の『土下座少女の下克上~生贄リベンジゲーム~』、3月より「くらげバンチ」(新潮社)での連載が開始した『学級裁判デスゲーム』など、数々のコミカライズが進行中のテラーノベル公式作家・雨宮黄英さんのインタビューをお届け。
テンポよくお話しくださった雨宮さんの雰囲気が伝わればうれしいです!

『学級裁判デスゲーム』コミカライズの流れ

Teller Novel more編集部(以下TNM編集部)
いつも素敵な作品をありがとうございます! この3月から「くらげバンチ」で連載開始した『学級裁判デスゲーム』はどんなストーリーですか?

雨宮黄英さん(以下雨宮さん)
裁判で全てを決める異質なクラスの中で、主人公の転校生が、殺されてしまった友人の敵をとるために、クラスの支配者と戦っていくエログロサスペンス……みたいな感じですね。

TNM編集部
エログロサスペンスに入るんですね! 私は(ある登場人物が非業の死を遂げて)「あれ!? この子亡くなるの!?」と衝撃を受けました。

雨宮さん
読者のミスリードを狙っているので、そこで驚いていただけたらうれしいですね。

TNM編集部
まんまと雨宮さんの術中にはまっております。

雨宮さん
一番うれしいですね(笑)。

TNM編集部
今回のコミカライズは、どんな流れで進行しましたか?

雨宮さん
もともと『土下座少女の下克上~生贄リベンジゲーム~』の原作(『隔離学級の生贄少女』)を書いている状況で、その時の担当さんから「『学級裁判デスゲーム』についてもコミカライズのお話があるんですが、進めてもOKですか?」とお知らせを受けまして。
それからしばらくして原稿やネームを送っていただいて、読んでみて……って感じですね。トントン拍子でお話しをいただいたので、驚きましたね。

漫画のネームを読んで、「絶対面白くなる」と確信

TNM編集部
テラーノベルで1番最初にコミカライズが決定したのは、『土下座少女の下克上~生贄リベンジゲーム~』でしたね。コミカライズが決定するときって、どんなお気持ちなんでしょうか。

雨宮さん
いやもう、すごくうれしいですよね、自分の作品が他のメディアになるっていうのは。
漫画家さんに絵描いていただくことで、新しい表現方法で読者の方に伝えていただけて、作家冥利に尽きます。自分もいち読者としてコミックを楽しむこともできますし、色々な層の方を楽しませられると思うと、本当にうれしいですよね。

TNM編集部
私たちもすごくうれしいです! 実際にネームをご覧になって、どんな感想を持たれましたか?

雨宮さん
どちらの作家さん(『学級裁判デスゲーム』の作画は野口夜行先生、『土下座少女の下克上~生贄リベンジゲーム~』の作画は田中ドリル先生)も、原作をしっかり読み込んで描いてくださってるなということがネームからすごく伝わってくるんですよね。もちろん作画を見たらもっとですけど。
ネームの段階でも作家さんのカラーがしっかり出ていて、得意な部分が伝わってきたり、「こういう表現があるのか」と思って勉強になったり。
『学級裁判デスゲーム』の野口夜行先生は感情表現がとても上手で、「この人物はどんなことを思ってるのだろう?」みたいな部分も、登場人物の表情でものすごく綺麗に表現してくださっています。

©野口夜行/新潮社 ©雨宮黄英/テラーノベル


『土下座少女の下克上~生贄リベンジゲーム~』の田中ドリル先生は、女性の怪しげな魅力を描くのがとても得意なんだなと。「これは絶対面白くなるな」と確信しました。

漫画:田中ドリル/ぶんか社
原作:雨宮黄英/「隔離学級の生贄少女」テラーノベル


TNM編集部
ネームでも漫画家さんの個性が感じられるんですね〜。原作も「今この登場人物はこんな表情で……」とイメージされながら書いてらっしゃるんですか?

雨宮さん
もちろんそうですね。どんなことを考えてるか、どんな顔をしてるかが思い浮かべられてないと、 文章に起こしても読者に伝わるわけがないと思うので。セリフひとつとっても、笑いながらなのか、泣きながら言ってるのかで意味が全く違ってくることもありますし。
特に文章だけのノベルでは、作者がどのくらいその情景をイメージできてるかが大事だと思ってるので、頭の中で映像や画像を浮かべながら書いてますね。

自身の原作と漫画のギャップは、どのくらい感じた?

TNM編集部
作者の解像度が高ければ高いほど、読者も引っ張れるということでしょうか。

雨宮さん
そうですね。読者の考え方が違うのは当たり前で、人それぞれだと思うんですけれどもね。1つの正解は作者の内に用意して書いていくべきで、読者が色々と考察するのは、また別の話かなと。

TNM編集部
それだけ解像度高く小説を書いていらっしゃると、いざネームや原稿を見たときに原作とのギャップは感じなかったんでしょうか。

雨宮さん
はい! ちゃんと伝わっていて良かったなと思いました。漫画家さんがしっかり理解をしようとしてくれたんだなと分かって、うれしかったですね。
「こういうシーンで、この表現はどうだろう」と、担当さんと(調整の)やりとりが発生することももちろんあるんですけれども。いただいたものをチェックして「問題ないな」でほとんどお返ししてる状況で、完全に原作を理解して描いてくださってるので、とても助かってます。

TNM編集部
そうでしたか。コミック制作側とのコミュニケーションで、難しいなと思われたことはなかったですか?

雨宮さん
基本的に担当さんが間にしっかり入ってくださっているので。漫画家さんと直接お話しするようなことはないんですけれども、自分の考えをしっかり先方に伝えていただいて、返ってくる内容もほとんど齟齬がない状況なので、円滑にコミュニケーションが取れているのではと思ってます。

コミカライズ作品に対する“自己分析”を聞いてみた

TNM編集部
それは良かったです! ありがとうございます。雨宮さんの数あるテラーノベル作品の中で、コミカライズされた作品についてはどんな印象でしたか?

雨宮さん
そうですね、結構手応えがあって、思い入れのある作品だなと。テラーさんでは短編や中編も多いんですけれども、 担当さんと色々話し合って考えながら長く書いた作品が選ばれています。僕の作品の中で選んでいただくとしたらこれかなと思ってますね。

TNM編集部
そうなんですね。短編は自分の中で完結して出すものが多くて、中編や長編は担当の編集と話し合いながら作ることが多いのでしょうか?

雨宮さん
短編ももちろん「どんなストーリーがいいかな」って担当さんとお話ししながら書きますね。
コミカライズで連載をしていくこともあって、長めの作品を選んでいただいたのかな。あとは自分の作品の中でも読者にとって特に刺激的で、ハラハラドキドキする2作品が選ばれたんじゃないかなとは思いますね。

TNM編集部
伏線が色々と散りばめられていたり……。

雨宮さん
そうそう。漫画にした時に読者の目を引きやすいってことで。『土下座少女〜』に関しては、絵にしたときにインパクトがある……みたいなこともあるかもしれません。完全な思い込みですが(笑)。

TNM編集部
絵柄にしたときのインパクトは、 確かに最初の設定ありきですよね。『学級裁判デスゲーム』も特徴的なストーリーですが、どんな風に思いつかれたんですか?

雨宮さん
その頃は担当さんとも「長編ホラーを書きたいね」って話をずっとしていまして。「読者に身近な学校の中で異質な出来事が起きるストーリーはどうかな」と考えたときに、「デスゲーム系もいいな」「頭脳戦のようなネタを書きたい」ってイメージが湧きました。
その中で、裁判のような形でお互いに議論して、応酬して、罰を受ける人間を決める……みたいなシステムがあったら面白そうだなーと考えていって、「書いてみよう」と思いましたね。

読者からのコメントが、何よりのモチベーション

TNM編集部
連載が始まって、読者さんの反応はいかがでしたか?

雨宮さん
毎回「続きが気になる」とコメントをくれる人もいれば、「面白い」という感想や、「続きはこうなるんじゃない?」と考察してくれる人もいて、色々な反応がうれしかったです。ちょっとチクチクしたコメントでも、「読んでくれてんだな」って内容ならうれしいんですよね(笑)。
テラーさんは、1話ごとに毎回気軽にコメントできるところに良さがあると思ってて、作家としてはすごくモチベーションが上がりますよね。

TNM編集部
作家さんに「コメントとどう向き合っていますか?」とお聞きすると、「全て読む」とおっしゃる方が100パーセントです!

雨宮さん
読みますよね〜やっぱり。作品がどう思われるか、書いてる人間が気にならないわけがないと思います。投稿を更新したばっかりのときなんか、暇さえあればコメント欄を更新することもあります(笑)。エゴサとかも結構しちゃいますね。

TNM編集部
雨宮さんはテラーノベル発だけでなく、他のプラットフォームからもコミカライズされている作品がたくさんありますが、コミカライズ作品のレビューなんかもご覧になるんですか?

雨宮さん
もちろんです! コミカライズされた作品も、別のメディアで発表された作品も、全部見ます。コメントがつく=作品を読んでくれてるってことなんで。読まれている事実を一番実感できて、うれしいんですよね。

「こんなの書きたい!」が降りてくるのは、どんなタイミング?

TNM編集部
『学級裁判〜』のときのように「あっこんな話を書きたい」というイメージが降りてくるのは、どんな瞬間なんですか?

雨宮さん
日常で何か面白いことや事件が起こったときに、それに対して「自分ならその後、こんな風に進めたいな〜」と勝手に展開を考えてしまうことがあって。そこからアイデアを思いつくことは結構ありました。
あとは「こんな面白いものを書ける人間がいるのか!」と衝撃を受ける作品に出合って対抗心が湧いたり、感動した作品に「自分もこんなすげぇの書きてえな〜!」と思ったり……。そういうことでもモチベーションが上がって、「何かやりたい!」って気持ちになりますね。

TNM編集部
外的な刺激やインプットから着想されることが割と多いんですね! つい考えちゃった時が作りどき、みたいな。

雨宮さん
そうです。何か考え始めると1日中考えてしまうことがよくあって。ガーっとメモを書いて、その日のうちにパソコンに向かって、とりあえず思いついたことを書いて。1日、2日経ってみてもまだ「面白い」と思えたら「よし書いていこう!」みたいな感じですね。

TNM編集部
一度寝かせるんですね〜。

雨宮さん
一番高い熱量で書くのもいいんですけど、自分の中で熱が続かないというか、後から読んでみたときに、「うーん、そうでもなかった」ってなるときがあるんですよね、難しいとこなんですけど。

TNM編集部
確かにありますよね(原稿は一度寝かせたいタイプ)。

雨宮さん
そうなんですよ。なのでとりあえず、アイデアに関しては全部まとめておくようにして。まとめておいたアイデア同士が組み合わさって、また別のアイデアが生まれることもありますので。

“ちょっとした物語”のタネは、身の回りにも転がっている

雨宮さん
あと、どうしても何かを捻り出さなきゃいけない! ってときは、何ていう方法か忘れちゃったんですけど、近くにあるものを指差して物語を作るんです。
例えば「写真」「テレビ」「扇風機」みたいに、その組み合わせでどんな物語が作れるか。そしたら面白い作品ができたことも何回かあって。短編や小編、一話完結の作品を書くときによく使いますね。

TNM編集部
そういう着想法というか、テンプレートを持っておくのも有効ですね。

雨宮さん
「短編をあと1本、すぐに書いてほしい」って締め切りがあるとか、コンテストがあって「とりあえず何か1つ送ろう」とか、「ちょっとした物語を書きたいな」と思ったときに、結構使えます。

TNM編集部
「ちょっとした物語を書きたいな」って欲求がすごくお洒落というか、作家さんならではだな〜と思いました(笑)。

雨宮さん
ありがとうございます(笑)。ブログの一記事で終わるような本当に短い物語とか、そういうのを書きたいなとふと思うとき、あるんですよね。何かを表現したいというか、世の中に何か思うところがあったときに、物語で発信したいって欲求。
例えば事件や事故があったときに、大っぴらに直接的な発信はしにくいことを、頭の中で物語にして表現していく感じ。何かのきっかけをもって物語を作るっていうのは、そういうこともありますね。

「コンテンツが大好き!」と生き生きと語ってくださった雨宮さんからは、「書くことが大好き」という創作への熱量もひしひしと感じられました。
次回は雨宮さんとエンタメコンテンツとの向き合い方や、意外なお仕事事情などをお聞きします!

雨宮黄英さんの作品はコチラ

\コミカライズされた作品をチェック!/
『学級裁判デスゲーム』を読む
『土下座少女の下克上~生贄リベンジゲーム~』を読む

\雨宮黄英さんによる原作はこちらから/
『学級裁判デスゲーム』を読む
『隔離学級の生贄少女』を読む

今回協力いただいたクリエイター

雨宮黄英さん(テラーノベル公式作家)

作家、シナリオライター。ホラー・ミステリー・サスペンスからコメディ作品まで、幅広いジャンルで執筆し、多数のコミカライズ実績を持つ。

テラーノベル作品一覧
https://teller.jp/user/2kwja1g6ffr71-8475273247
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https://twitter.com/Amamiyakie

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TNM編集部 土屋

不定期にネトフリ廃人になります。子どもたちが寝たあと、バブを入れた湯船でひっそりTNやWebコミックを読むのが好物。

  1. 多様なジャンルを手掛ける作家にインタビューしてみたら、エンタメ事情が既にエンタメだった

  2. 『学級裁判デスゲーム』原作者・雨宮黄英さんに聞く、コミカライズや創作の裏話

  3. ミステリー作家・田中静人さんが実践する“ダメなときの気分転換”のレベルが高すぎた

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