さて、みなさん。
おはよう、こんにちは、 こんばんは。
俺の名前は、大日本帝国……
海軍だ。
俺の兄と弟からは、 海、と呼び捨てに されている。
まぁ、今は色々と ワケがあって陸とは ずっと話せてないんだけどね。
今日は8月9日。
つまりは、俺の命日だ。
画面の前に居る 皆さんには、今日は 俺が戦争で見たものを 共有してみようと思う。
まぁ、どこか遠くの 知らない町で
誰かが経験している事だから。
映画でも見る感覚で、 気軽に見てほしいな。
まず、俺の生い立ちから 簡単に説明しようか。
俺は、1868年に 日本家の次男として 生まれた。
…ああ、君ら人間が 習う史実だと、 俺が一番初めに 生まれてるからね。
1868年、海軍の設立。 1871年、陸軍の設立。 1912年、航空隊の設立。
…まぁ、俺らの世界に この並びは関係ないから 一旦この史実は横へと 除けておいてくれ。
…まぁ、とりあえず 俺は次男だった。
陸自身が語っていたが、 気が付いたら俺がそこに 居たらしい。
ただのホラー映画だな。
海
生まれたその瞬間から 俺は国の化身だったから 一応物心はついていた。
日本語を書くことも 読むことも、話すことも 生まれたときから 全く不自由なかった。
でも、国そのものだった 俺には、
『心』
というものが 欠けていた。
だから平気で人を 殺しかけたことも あるし、その度に 陸に殴られていたのも 今となっては良い思い出。
もしその時陸に 善悪を教えられて いなかったら…きっと 俺は兄弟の中でも一番 早くあっちの世界へと 逝ったんだろうな。
生まれて数年経った頃、 俺は海軍をまとめる 重役に就いた。
そのタイミングで、 空も生まれると陸が 教えてくれた。
陸
海
陸
海
陸
まぁ、そんなことを ぐだぐだと言っている 間に空が生まれた。
空
きょとんとした笑顔を 浮かべ、空が初めて 言った言葉がそれだった。
陸
空
陸
海
そういうと、空は 『そっかぁ!』と、 嬉しそうな表情で パッと笑った。
そして、それから また数年後。
運命の 太平洋戦争が 始まった。
戦争はどんどん激化 していった。
大戦末期になれば 毎日のようにどこかが 焼夷弾で焼かれていた。
海
その日、俺はたまたま 空襲に遭ってしまった。
海
国民
この頃、陸と俺と空は 国民に『御国様』と 呼ばれていた。
仰々しくてそう 呼ばれるのは嫌いだったが、 まぁ今のご時世だと誰かを 崇めておかないと不安に なるのもわかるから そのまま放っておいた。
国民
海
俺はひたすら、軍服が 燃えるのも構わず 国民を助け続けた。
しばらくすると、米軍の B-29は去って行った。
…いや、違う。
別の地域に、空襲を しに行っただけだ。
海
陸は俺なんかよりも ずっと優秀だ。
きっと、たくさんの国民を 助けて今回の空襲も なんとか乗り切るだろう。
地面を見れば、炎が 上がり、ごうごうと 燃え続けている。
でも、ちょうど空を 見上げれば。
遠くへと落ちる焼夷弾が 陽に照らされ、きらきらと ガラス片の様に 輝いていた。
不謹慎だとは勿論 わかっていたが、ふと 口から言葉がつい 零れた。
海
…と。
その数日後、 8月6日。
空が死んだ。
陸
いつもは無表情で敵を 撃ち殺す陸も、空の遺体に しがみついて
大粒の涙をぼろぼろと こぼしていた。
当たり前だ。
空は俺たちの中で一番 若く、幼いのに
敵である米帝にあっさり 殺されてしまったのだから。
俺はひたすら、 泣きじゃくる陸の 背中をさすりながら 傍に居続ける事しか 出来なかった。
そして、来たる 8月9日。
俺はその日、長崎の 軍事施設を偵察に 来ていた。
海
陸
陸も俺も、満足して 帰ろうとしたその時 だった。
視界が真っ白に染まる。
海
反射的に、すぐそばに居た 陸を突き飛ばして建物の 影へと押し込んだ。
その刹那、
足の感覚が消えた。
強力な爆風と熱風が 吹き荒れ、一瞬にして 建物を崩落させていく。
これが、長崎に落とされた 2発目の原爆だった。
どれくらい時間が 経っただろうか。
多分恐らく、原爆が 落ちてからまだ1分も 経たないときだった。
陸
その時、俺の視界は 赤くてぼんやりしていたのを 覚えている。
猛烈な喉の渇きに 襲われて、つい陸に 水を持ってきてほしいと 頼むところだった。
でも、軍人の勘とでも 言うのだろうか。
この怪我では、もう すぐに死ぬことが分かった。
海
ぼんやりとする頭の どこかで考えた。
まだもっと、 生きていたい。
海
海
目の前で、陸が ぼろぼろとまた 泣いている。
海
陸
陸が慌てて無線機で 連絡を取ろうとしていた。
でも、もうその無線機は 熱波にやられて使えない ことを俺は悟る。
だから俺は、陸の 頬にそっと手を伸ばした。
海
陸
海
『陸ッ!!!!』
…そう叫べば、陸は 目を大きく見開いて 静止した。
多分、俺はそこから 何かを言ったはずなのだが どうにもそこらへんの 記憶はかなり曖昧だ。
なんとかして、話を し切って口を閉じた時、
俺の瞼が自然と 下がった。
気が付いたら、俺は 桜並木の下に 立っていた。
空
空も、立っていた。
海
空
海
そういうと、空は 申し訳なさそうな 表情をして薄く 微笑んだ。
その時、ふと 声が聞こえた。
『かい…そら…』と、 俺たちの名を呼ぶ小さな 声だった。
海
空
脳裏にまた、大粒の 涙をこぼして泣いて いる陸の表情が鮮明に 蘇る。
でも、それもまた 当たり前。
今度こそ、陸は
独りになって しまったのだから。
少し時間が経った頃、 俺は空に話しかけた。
海
空
海
空
空
海
俺はただ、考える。
短かった人生で、
俺は陸からの恩を 『死ぬ』という仇で 返してしまったんだと。
これは陸に謝っても 謝って謝り切れない事。
だから俺は、せめてもの 償いとして━━━…
陸のこれからの幸せを 心から願っていた。
Fin
本日8月9日は 長崎に原爆が落とされた 日となります。
今年で79年目。
どんどんと風化していく 戦争の傷跡を私たちは 受け継いで、抱えて
平和な世界を目指して 歩んでいけたらなと 思います。
では、番外編は これにて〆ようと 思います。
いつも以上に ぐちゃぐちゃで すみませんでした。
では、また次回。
コメント
28件
みんな…はだしのゲン読もう?もっと詳しく原爆の事実が分かるよ
8月9日…私の誕生日だ…
学校の国語の時間にやってた「たずねびと」今でも思い出すなぁ… 僕は、広島原爆、長崎原爆の時、まだ、生まれてませんでした。でも、テレビで広島原爆記念日という言葉に誘われて(?)気になって色々と調べてみたんです。こんなに悲惨だっとこは知りませんでした。たずねびとが国語の授業出で1番心に残ってます…