コメント
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妹子:物語的にはよかった。 最後の言葉が解釈的に不一致だった。
悠佑
ないこ
多分ずっと前の日 ふたりが話すのを横で聞いていた
悠佑
ないこ
悠佑
ないこ
ある程度の声量だったので 意図せずとも自分の耳に届いていた。 やはり少しは気になったので 自分も混ざろうと目を向けてみる。
悠佑
ないこ
そんなことを言いつつ、 彼はこちらに目をやった。 視線が交わるその瞬間 火が灯る様に顔を染めた彼。 それを見て少し恥ずかしくて 期待していいかもと思ってしまって。 いとも偶然目が合いましたよ、と 言わんばかりに顔を背けてしまった。
ないこ
彼も瞬時に目を逸らし、問うた彼へ向き直る。 ぱたぱたと振られている手は 大振りな嘘であることを 自ら主張しているような気がする。 黒髪の彼は察しきっていて 関することは言いそうにない。
悠佑
ないこ
悠佑
いふ
悠佑
ないこ
悠佑
この人絶対に分かっている。 ただ俺がどう、とは知らないので 自ら触れなければ大丈夫だろう。 そう思っていたのだが 完全にバレていたことは 後から知ったことであった。 俺用事あるから、と離れていった時 部屋に残ったのは2人だけ。 完全に静かな密室で気まずいような、 なんと言うか、という心情で 特に話せず仕事をしていた。
もう時間が残されていない時 どうしようもなくなって 想う彼に打ち明ける事を考えた、と言うより 診ていた彼にずいぶんと酷く怒られたので 仕方なく打ち明けようとなったのである。 取り敢えずは恋心を、という訳ではなく 病気の話をするだけだ。
悠佑
とはいえ抵抗がない、と言えば 嘘でしかないのだが。
いふ
会うなら配信の後にでも、と 帰る前に話をつけようと思っていた。 件の配信はいつもより早く過ぎる気がする。 雑談枠はすっと夜に溶けていき、 気が付けばエンディングを迎えていた。
ないこ
いふ
悠佑
配信切ったよー、と明るく言う彼。 お疲れ様、と横で片付けをしている彼の方は 明るいうちに早く言っておけ、とばかりに こちらを見て確認していた。
いふ
ないこ
顔を見て察したのだろう、 今思えば緊張で酷い顔をしていた気がする。
いふ
ないこ
そう言う彼はおもむろに 椅子へ正座をして直っていた。 真っ直ぐ見ている桃色の瞳は 俺の好きな彼そのものだ。
いふ
ないこ
悠佑
ないこ
違和感を探る聡い彼は この話の概要を掴み始めているだろう。 突然発された"奇病"というワード、 出てきた人物の関連性、 そして切り出した俺の違和感。
いふ
ないこ
いふ
ないこ
多分一人しかならない、という話を 聞いているのだろう。 困惑したように黒髪の彼に視線を移した。
悠佑
悠佑
これについてはどうしようもなかったと思う。 俺から分かることもなく、 一番詳しい人間からしても分からないことは 聞いたって何をしても無駄でしかない。
いふ
ないこ
普段あれだけ良い意味無神経で 残念イケメン、と言われるくらいの 異次元さを見せているくせに、 彼は持ち前の明るさで押し切らず こちらが辛いくらいに気を使ってくれる。 そんな所が大好きで、愛しさすらあって。
いふ
ないこ
悠佑
ないこ
バグ病 症状的には変声や視覚の変化 ノイズの可視化、変形が見られる 最終的には物質的な表の世界と 裏にあるシステムの狭間に 堕ちてしまう、とされている 治し方は一つ、好きな人と結ばれること
ないこ
悠佑
ないこ
いふ
ないこ
いふ
ないこ
いふ
ないこ
いふ
悠佑
ないこ
悠佑
ないこ
悠佑
いふ
悠佑
ないこ
いふ
悠佑
いふ
悠佑
いふ
そんなら、と腕の辺りを ぺちぺちと触れ始めた彼。 多分なにかしらを剥がしている。 その何かが肌を離れる度に ばちばちと電気の様な音が鳴り 視界がノイズを帯びてきた。 僅かな痛みが永続的に 内部を走っていく感覚がしている。
悠佑
ありがとう、と言おうとした口からは 声が発されることはなかった。 砂嵐か何かが発声をかき消している。
悠佑
あ、これやばいやつだ。 そう理解はした。
悠佑
そこから先は言わなかった。 早足で出ていく彼を見送って なんだか絶望したような。 彼と二人きりだ。
ないこ
声が出せないのに質問なんて、と 頭を過ぎていく。 それだけ困惑しているのだろう。 二つの質問は相対していて どちらとも返すことは出来ない。 彼に少しだけ微笑み返すと、 小さな声でごめん、と言うだけだった。
ないこ
ないこ
あなた以上に知ってる人は居ない、 そう言えれば良かったのに。 僕はただ頷くだけで、 彼を見据える事しか出来なかった。
ないこ
彼は俯いたままこちらを見なかった。
ないこ
僕が頷いていても こちらを見ようともしていない。 彼は誰が好きかなんて とうの昔から知っているから。
ないこ
僕が首を振ると、 彼は今にも泣きそうな顔で 僕に目線を向けている。 やめてくれ、そんな顔しないでくれ。
ないこ
多分どっちも分かっている。 好きな人の人生を壊すかもしれない。 多様性が認められた社会ですら "美麗な王子様"に固執して。 新世代だと型を崩しても 自分が一番気にしてるじゃないか。 そういう環境に身体を売る僕たちでは 幸せになれないんだって。
ないこ
少しぎこちないような、 そんな動きで跪く。 ソファに座る俺の足元で片方の手を握る。
ないこ
そうだ、俺は同じことをする。 好きだなんて言えなかった。 いくじなしだから。 ただ普通の恋人として寄り添えたら どれだけ楽だっただろうか。 果てしなく未来を模索しても 壊す可能性が否めなくて。
ないこ
だからさ、そうかすれて聞こえた。 続いた声にならない声は 手のひらの中に消えてしまった。
それに答えたかった、 だからノイズだらけの自分の声で 好きだって言いたかった、のに。 その音にすらならなかった。 それの代わりにと言うように ぱり、と粉々になるような感覚が 足元から蹂躙していく。
ないこ
ああ、もう時間なんだ。
少しづつ砕けていく体を見つめ 僕は改めて首を振った。
ないこ
おれ離さないから、そう言って きつく抱き締められる。 割れていく視界が見えなくなる前に 彼が見えていてよかった。
彼の背を撫でて、一緒に消えてしまわないように、少しだけ離して。 それでも、と彼は消えていく手をずっと握っていた。 僕は最後だから、もう遅いのはわかっていたけど 聞くに耐えないような音で言えた。
いふ