気まぐれ譚

そうしてミルと少し話しながら着替え始めた

うちは護衛や調査で生計を立てている 昔は他にも色々としていたが、ミルとの話し合いの末に今の内容に落ち着いた

ミルはなにかとクソガキ感が強い 一応精神だけは20なんだけどな、小学校3年までしか行ってないし仕方ないか

ミルはクソガキすぎてもう死んでなかったら5回は殺してた

そんなミルも、キョンシーである以上ミルをキョンシーにした奴がいる 一応そいつを見つけるのがミルの目的、だったんだが…

最近はそんなの関係なしに入り浸るクソガキになってきてる… 親が見たら絶交ものだわ…

俺たちは銃と弾丸、ちょっとした道具を用意して車に乗り込んだ

車で移動中に、ミルが突然話しかけてきた

そう言ってミルが見せてきたのは一つの童話だった

満面の笑みで笑いかけるミルを顔はほんと子供らしかった

ミルはその後も移動中はずっとその童話を読んでいた

童話を読み飽きたのか退屈そうにしていたミルが話しかけてきた

あたりを見回しても依頼主らしいお婆さんの姿は見当たらない

おどおどとした少女が後ろから肩を叩いて話しかけてきた

お婆ちゃん、多分依頼主のことを言っているのだろう

ミルはさっきまで読んでた童話の影響なのか目を輝かせて少女を見つめている

見たものの影響受けやすい所はやっぱり子供っぽいなと思いつつミルの頭を軽く叩く

少女は苦笑いで見つめている 俺だって依頼したのがこんな奴らだったら同じ反応する確信がある

ただでさえ貧困なのにこれ以上は仕事すらできなくなると思いすぐさまミルを止める

もうすぐ夜ということもあり、ひとまず近くの宿で寝泊まりすることにした

宿に入って俺が少し席を外しているうちに、どういうわけかミルと少女がポーカーをしていた しかし、見た感じだと結構仲良くなっているようだ

ウイスキーを飲みながら席につきそんなことを呟く

少女の手にはもうたった1枚の金貨しか残っていなかった ミルなんかに手を出すから…

少女は残っていた1枚の金貨を勢いよく机に置いた 絶対に後悔するだろうなと思いつつも俺はウイスキーを飲みながら眺めていた

ミルは勢いよく大量の金貨を机に置いた その金貨を見たとき俺は無性に嫌な予感がした

嫌な予感は的中した、最悪だ

俺が安堵の言葉を吐いたとき、少女が不敵に笑うのが見えた

少女の手には7のフォーカードが握られていた

高らかに叫ぶ少女とは反対に、ミルは膝から崩れ落ちていた かく言う俺も正直1ミリもミルが負けるとは思っていなかったから動揺している

ミルは初めての敗北と全財産を失った衝撃でかまともに話せそうにもなかった ほんとにどうするんだこれ

明らかに調子に乗っている少女はそんなことを言ってきたが、正直依頼とか関係なく1回殴ってやりたい そんな俺の思いとは裏腹にミルはすぐさま少女に土下座していた

そういうと少女はおそらく最初と同じ金額になるように俺たちに金貨を渡してきた

その後も俺たちはトランプを使ってババ抜きや七並べ、大富豪をやっていった 人数が人数だから七並べが地獄絵図になったのは言うまでもない 主にミルがまったくカードを出さなかったのが原因だが… そんなことをしているうちにいつの間にか俺たち3人は眠りについていた

紙をめくる音が響く

自分で聞いたくせに隊長は興味なさそうにこたえる

隊長の目がこちらを向く

さっきよりも明らかに隊長が口角を上げているのがわかる

隊長は鼻で笑っているけど、それは自分はそうはならないと自信をつけようとしている行為なことはわかってる

隊長はもう失敗したくないんだろうな

仕事内容を確認した隊長の目がいつもより輝いているのがわかる

端末には赤い服の少女がうつっている

きっと、あの狼とは違う未来を手に取ろうとしてるんだろうな

そう言って僕達は、バックを手に取り歩き出す