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雨兎
雨兎
雨兎
雨兎
雨兎
雨兎
伊織
こんなこと誰にも言えない。
いくら仲が良い親友であろうが信頼出来る親であろうが、言えない。
や、正しくは言いたくないだけなのかもしれない。偏見を持った古い人間しか俺の周りには居ないから。本当の俺を知ってる人間なんて居ない。
これから話すのは、誰にも話せなくて死にたかった俺を見つけ出したあいつと俺、伊織(いおり)の人生物語。
伊織の母
甲高い女の声が耳元に聞こえる。
俺、いや、「私」の母の声だ。
私は目の前の鏡を見て笑顔を作る。
伊織
にっこり笑顔を浮かべた自分に少し吐き気を催したがもう何年もこの調子だ。慣れてしまった。母は少なくともこんな現実を望んでいる。なら私は演じ切る、そう決めたではないか。
そう案じてから振り返る。母は満面の笑みを浮かべている。
大切な人の幸せは壊したくない。だから私は今日も女を演じる。
伊織
そういうと母は試着していた服を買ってくれた。更衣室からでるとすでに会計が済ませてあり、紙袋に入ったワンピースを持った母が待っていた。
伊織
そして母から紙袋を受け取る。きっと会話だけ見ていればただの母娘の会話だ。
私は少し母と話しながら駅まで歩いて、そのまま別かれた。そして電車に乗った。
伊織
トンネルに入ったので窓に自分が反射して鏡のようにくっきり見える。長い髪、ぱっちり開いた二重目、盛り上がった胸部、全体的に丸い体つき、リボンやフリルがたくさんついた服。
鏡は大嫌いだ。
大嫌いな自分の体を.... いや、「今」の自分を強調されるようで....。
そんなことを考えていると、すぐに学校寮の最寄り駅へ着いた。
雨兎