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シマエナガ
横浜に聳え立つポートマフィアのビル。
その最上階に私はいた。
光すらも通さぬ薄暗い部屋で、私はいつも通り仕事をしていた。
そんな時ふと、横に立っていた中也が口を開く。
中原中也
中原中也
ある一点を見つめ、中也はそう云った。
何かと思い、振り返りそれを見た。
……そこにあったのは、いつかの私が着ていたはずの砂色の外套。
何故ここにある?
少し記憶を整理すると、答えはすぐに出て来た。
……癖だ。
数年前、店を歩いていた時に癖で包帯と一緒に買ってしまった物。
私には必要ない物だったので、倉庫の奥から引っ張って、捨てようと出していた物だ。
太宰治
中原中也
太宰治
中原中也
__あぁ、捨てるくらいなら丁度良い。
太宰治
中原中也
太宰治
太宰治
太宰治
中原中也
押し付けるように中也に譲る。
………なんだか気分が悪い。
中原中也
良いが。なんて偉そうな口調で答える中也に、少し腹が立った。
何故私が其れを中也に上げたのかは分からない。
…分かりたいとも思わなかった。
…"向こうの私"が毎日着ている物。
…私には、"最初から"必要なかった物。
太宰治
__それを手放したからなんだ。
所詮は向こうと同じデザインなだけのただの外套。それがどうなろうが、私が気にすることじゃあ無い。
自分のワガママで出来たこの世界に、今更何も思わなかった。
中原中也side
仕事を終え、部屋に戻って来た。
…彼奴から貰った外套を前に、どうするべきか戸惑う。
本音を言うなら今すぐにでも燃やしたい。大嫌いで今すぐ殺したい相手に押し付けられたのだから。それくらいわかる。
……だが、これは首領から貰ったもの。 どうしようが勝手だが、一応取っておくのが部下というものなのだろう。
中原中也
なんだか、この外套に嫌悪感を抱く。
彼奴が俺から遠い場所に行くような。 とは云っても、首領である太宰とその部下である俺。
それは俺にとって十分すぎるほどに遠く、 孤独と永遠を感じさせた。
孤独と永遠。
そう感じたのが間違いではなかったことを、数日後に知る事になった。
中原中也
中原中也
太宰が、首領が。
本当は俺の手で殺したかった。
俺は此れからどうするのだろう。…厭、多分首領の座を継ぐ事になる。
…………俺は,
中原中也
1ヶ月後
その日はとても騒がしく、マフィア全体が動いていた。
それと同時に、ポートマフィアの屋上にとある人物が居た。
____現代首領、中原中也である。
中原中也
屋上では、心地よいほどの風が吹いていた。
まるで淵に立っている人を後押しするかのような、そんな風。
中原中也
屋上に、落下防止の柵はない。それ故に淵に立つと大変危険なのだ。
だが、それで良い。その方が都合がいい。
何故なら俺は、自 殺をしに来たから。
横浜に聳え立つとても高いビル、マフィアの拠点。
その屋上で吹く風はやはり勢いがあった。
中原中也
おれが手に持っていたのは、いつかの日に彼奴に押し付けられた砂色の外套。 捨てるにも捨てられなかった物。
何故俺が此処にまで其れを持って来たのかは分からない。ただ何となく、此奴と一緒に飛び降りると彼奴との心中みたいで癪だった。
ただ持って来てしまったのには変わりなく、どうする事もできなかった。
まぁ良い。
忌々しい此奴をズタズタにしながら死ねるならばちょうどいい。
中原中也
砂色の外套を手に握りしめた。
太宰治
ふと頭に響いた。世界一大嫌いな彼奴の声。
厭でも思い知らずにはいられなかった。
俺は最期まで、太宰の犬であり駒だったのだと。
それからしばらくして、俺は飛び降りる決心をした。
___屋上から姿を消し、空中へと身を投げた。
ポートマフィアの現首領、元最高幹部重力使いの中原中也。
その死因は落下自殺。
かつて相棒であり、首領であった者も同じ。
___落下自殺、重力を操る中也にとって、それは最も意味のない死に方だと言えた。
何故ならば地面に叩きつけられる1秒前、たった1秒前に異能を発動させるだけで、勢いは消える。
辞めようと思えばいつだって辞めれた。
でも辞めなかった。
中也は目を閉じて、重力に任せ、ゆっくり。でも着実に地面へと近づき…
______やがて地面に叩き潰れた。
シマエナガ
シマエナガ
シマエナガ
シマエナガ
シマエナガ
シマエナガ
シマエナガ