着ぐるみと男の子

俺はきんとき

今は仕事中

駅前の居酒屋なのだが

昼間は営業準備と朝まで 飲んでる常連さんの相手

親戚の店だし 住み込みだから楽だけど

なんで俺が着ぐるみ着て 営業しなきゃいけないの？

することないのはわかるけどさぁ…？

常連さんはもうこの光景に見慣れていて

ｶﾞﾗｶﾞﾗｯ

俺に一言声をかけて入っていく

駅前なのもあり、 夜は飲み歩いてる人ばかりで

ほんとにすることが無い

でも、最近は楽しみがある

それは…

いつも話しかけてくれる男の子

仕事帰りっぽいし、名札も付けっぱなし

みとくんと言うらしい

背が小さくて、いつもニコニコしてる

でも話し方は少し暗くて落ち着いている

この子が俺にとっての癒し

優しい声と可愛い顔

仕事で怪我をしたのか 沢山絆創膏が貼ってある手

着ぐるみがあってもわかる匂い

全部好き

ｶﾞｻｺﾞｿ

この子が笑うと俺も自然と口角が上がる

いつも５分くらいここで 立ち止まってくれる

毎回ハグをして、たまに 今日の出来事を話してくれる

俺はこの子のために働いてる 気がしてきた

もう行っちゃうのか…

俺は多分…この子のことが好きなんだと思う。

まだまだ知らないことだらけだけど

好きになる理由はいっぱいある

好きになったところで…？ って感じなんだけどね。

この子の話を聞いてる限り

ペットショップでトリマーをしている

だから引っ掻かれたり噛まれたりで

手に絆創膏がいっぱいなんだと思う。

俺は少しずつ距離を詰めてるが、

着ぐるみなのでこれが限界

名前…

意外とドジでほんとに可愛い

名前も覚えてもらえたし また1歩前進したな

ﾎﾟﾌｯ