佐藤。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
樫の木と草以外何もない森。
俺はずっとその中を食料を求めて彷徨っていた。
🐷
いつもなら食える動物なんてそこら中にいるのに、こういう時に限ってニワトリの一匹いやしない。
これが物欲センサーってやつか…と俺は肩を落とした。
数週間前から俺は新しいバイオームを求めて、まだあまり行ったことのない西の方角へと足を進めていた。
この遠征、はじめの方こそ上手くいっていたが、昨日いよいよ食料が尽きてしまい、流石に焦りを覚えていた。
そして今に至る。
もう諦めて手持ちの腐った肉でも食おうかな…とプライドを捨てそうになった時。
前方に小さな村が見えた。
🐷
彼処の村人達には申し訳ないが少しばかり小麦俵を頂戴することにしよう。
一気に活力が湧いた俺はその村へ走った。
村に足を踏み入れるや否や、俺は周りの村人に気づかれないようにこっそりと小麦俵をくすねていった。
もちろん罪悪感はあるが、やはり自分の生命維持の方が大事だ。ごめんなここの村人。
心の中で村人達に謝罪しながら俺は村を徘徊した。
…
__一通り小麦俵を回収し終え、村を後にしようとしたその時、視界の端に鉄でできた大きな生き物が見えた。
🐷
ああそういえば。俺鉄も不足してんだった。
彼にも俺の冒険のための糧となってもらおう。
俺は利き手に剣を持ち、まだこちらに気が付いていないアイアンゴーレムにゆっくりと近づいた。
🐷
刹那、俺の右肩に矢が命中した。
驚いて矢が飛んできた方向に目をやると民家の屋根の上で弓を構えている青年がこちらを睨んでいた。 他の冒険者か?
🍌
🐷
アイアンゴーレムを“おにぃ”と呼ぶ眼鏡の青年としばらく睨み合っていると、青年は屋根から飛び降りて弓を斧に持ち替えて、こちらに斬りかかってきた。
ガキン!!
🐷
🍌
🐷
相手の斧を咄嗟に剣で受け止めて、もう一度青年と睨み合う。 こうやって会話している間にも青年はぐぐ…と斧を受け止めている俺の剣を押してくる。
オイオイオイ、こんな細い腕のどこにこんな力があンだよ…!?
そんなことを考えている間に剣が弾き飛ばされてしまった。
🐷
青年は焦った表情を浮かべる俺にすかさず足払いをかまし、彼よりも幾分も体格の大きい俺をいとも簡単に地面に引き倒して喉元に斧を突き立てた。
🍌
青年は冷たい目で俺を見下ろしながらそう言った。
🐷
バクバクとうるさく鳴る心臓が落ち着かないまま俺は青年を見上げながらこう訊いた。
🍌
🐷
🍌
🍌
そう答えると青年は斧を大きく振り上げた。
🐷
🍌
バレてた。ホントにこいつ何者だよ。
🍌
___ばいばい。
斧は振り下ろされた。
視界が真っ赤に染まり___
死んでしまった! ooharaMENはQnly_qdmに殺害された
ハッと目を覚ますと見慣れた天井。
自分の拠点のベッドの上だった。
🐷
あの村、この拠点からめちゃくちゃ遠いのに。
首筋を滴る冷や汗が酷く不快だ。
俺はベッドから降りつつ大きなため息をつき、俺をこのリスポーン地点まで引き戻した張本人を思い出し、胸をざわつかせた。
🐷
まあここでアイツを恨んでいるだけじゃ何も始まらない。 気持ちを入れ替えて、もう一度西へゆっくりと進んでいこう。
先程全ロスした俺の装備達を惜しく思いながら、俺は再び旅に出る体制を整えるべく、拠点のドアを開けて外へ出た。
数日後。
色々苦労もあったが、なんとか遠征のための装備を整えて、ようやく俺はあの時食料を求めて彷徨っていた森まで戻ってくることができた。
茂る草を踏み締め、歩いていくうちにあの青年と出会った村がぼんやりと見えてきた。
___あそこにはいい思い出がない。
俺はあの時の失敗を思い返して、村を見ないフリしてそのまま歩みを進めた。
が、
🐷
何やら村の様子がおかしいことに気がついてしまった。
矢が激しく空を斬る音。
酷くうるさい角笛の音。
つんざく悲鳴。
これはまさしく。
🐷
そう、あれは襲撃だ。 村が襲撃者に襲われるなんてよくあることだ。 何度も目の当たりにしてきた光景。
でも…
🐷
今まで見てきた襲撃よりも明らかに多い数のピリジャーが村にずかずかと入り込む様子に、違和感を覚える。
とても嫌な予感がした。
あの村には頼もしいアイアンゴーレムも、人間離れした強さを持つあの青年もいるというのに。
このままじゃ、あの村は終わる。
嫌な予感が、確信へと変わった。
俺は再びあの村へと走った。
ここはゴーストタウンか。
村に足を踏み入れて、現実を目の当たりにした時まず最初にそう思った。
ドアを固く施錠して引きこもる村人達。
外には誰一人としていない。
不穏な空気が漂う村の中をしばらく歩いていると、一人の村人が三体のピリジャーに囲まれているのを発見した。
隠れそびれてしまったのか。
俺は一旦物陰に身を潜めた。 さて、どうやってあの村人を救おうか。
しばらく様子を窺っていると、ガクガクと震える村人の脳天にクロスボウを向けて、ピリジャーのうちの一人がこう言った。
__「あの男は何処だ。」
__『し、知らない…!』
🐷
__「まだこの村の中にいることは分かっているんだ。殺されたくなければ大人しく奴の居場所を吐け。」
__『…答えられない!!』
村人がそう声を上げるとピリジャーは矢を装填した。
__「ならばお前に用はない。死ね!」
🐷
俺は物陰から勢いよく飛び出して素早く三体のピリジャーを斬りつけた。
__「なんだ、お前は…!?」
ピリジャーは驚いたような表情を浮かべ呆気なく息絶えた。
🐷
そう聞くと村人は大きく頷いた。
🐷
__『た、助かったよ…!ありがとう…!あ、あの』
🐷
__『頼む、彼を助けてくれ…!』
🐷
__『そうだ。奴らからかなりダメージを受けてしまっている上に、アイアンゴーレムを殺されてしまって心身ともにもうボロボロで…!』
🐷
__『…彼のことを庇ってピリジャーに殺されてしまったんだ。彼はまだなんとか生きているようなんだが、今も奴らに追われているんだ…!』
🐷
__『ああ、あのピリジャーどもは以前この村に一度襲撃に入ったんだが、彼とアイアンゴーレムによって追い返された奴らなんだ。恐らく今日、さらに仲間を引き連れて彼に復讐をするつもりでこの村にやってきたんだ!!』
__『彼は俺たちの恩人なんだ!どうか、彼を救ってくれ!!』
🐷
🐷
__『本当にありがとう…!!この恩は決して忘れない!!』
そういって村人は自分の住処へと走り去っていった。
そんな彼をしかと見届け、俺は指をボキッと鳴らし、戦闘体制に入った。
🐷
🐷
そうやって己を鼓舞し、俺は前方に見えるピリジャーに剣を振りかざした。
これで何体目だ?
少しずつ襲撃者の数は減ってきてはいるだろうが、まだ角笛の音が木霊している。
未だにあの青年も見つかっていない。
🐷
村の中心にある家の屋根に登って、辺りを見渡した。
すると北の方向から何やら怒号が聞こえる。
__「いたぞ!あっちだ!」
__「アイツを逃すな!捕まえろ!」
🐷
予想通りの人物が、ピリジャー達に追いかけられていた。
彼はしばらく逃げ回っていたが、とうとう敵に囲まれてしまったようだ。
このままじゃ殺られちまう!
俺は屋根から屋根へと飛び移り、彼のいる方へとどんどん進んでいった。
ああ、もう終わりなんだ。
せっかくおにぃが守ってくれたのに。
でも、もうダメだ。
__「ようやく追い詰めたぞ。」
略奪者は地面に膝をついて項垂れている俺にクロスボウを向けた。
🍌
__「冒険者は殺しても死なない。それは貴様が一番わかっているはずだ。」
__「俺たちの基地まで同行してもらおうか、貴様をどう処分するかはそのあと決める。さあ立て。大人しく着いてこい。」
🍌
満身創痍の身体でせめてもの抵抗でこちらに伸ばされた手を 振り払うが、その抵抗も虚しく、がっしりと腕を掴まれてしまう。
これまでか、と全てを諦めそうになった時。
空から剣を持った冒険者が落ちてきた。
そいつは俺を庇うように着地したあと、俺を連れて行こうとしていたピリジャー達を容赦なく叩き斬った。
鮮やかで、無駄のない動き。
この剣捌き、どこかで。
🐷
🍌
ああそうだ。こいつは、あの時の。
🐷
なんで、この男が?
___なんで、お前がここに?
そうとでも言いたそうな表情の青年は、あの村人の言う通り確かにボロボロだった。
身体中傷だらけで、武器も持っていない。壊れてしまったのだろうか。
🍌
🐷
🍌
🐷
🍌
🐷
🍌
__「いたぞ、あの黒髪だ!」
何か言いかけた青年の声を俺たちの姿を捉えたピリジャーたちが遮った。
🐷
__「もう片方の奴はなんだ!?」
__「この際どうでもいい!どっちも捕まえろ!」
🐷
🐷
🐷
🍌
青年を雑に担ぎ上げて、走って逃げる。
たくさんの矢がこちら目掛けて飛んでくるがなんとか躱しながら全力で走る。
…とりあえず逃げ切ったか?
敵を一旦撒いたあと、適当な物陰に隠れて、俺は青年を地面に下ろした。
🐷
俺はそう問いかけるが、青年は未だ俯いたままだ。
そして力なき声でこう言葉を紡いだ。
🍌
🍌
🍌
🐷
🍌
🍌
なんだよ、それ。
俺は弱音を零す青年の腕を無理矢理掴み上げた。
🐷
🍌
🐷
🍌
青年の瞳は少し光を取り戻した。
🐷
俺は真っ直ぐ青年を見据えて、再び剣を取り出した。
🐷
🍌
そうだよ。
俺がこの村に何かしてやる義務も責任もないはずだ。 それどころか、俺は一度アンタに殺されてんだよ。 あのままこの村を見捨てたって良かったはずだ。
だけど、俺は___
🐷
🐷
🐷
そういって俺は微笑んで、掴んでいた青年の手を離し、優しく彼に手を差し伸べた。
青年はしばらく固まったまま俺の手を見つめていたが、ゆっくりと手を伸ばし、やがて俺の手を取った。
🍌
🍌
🐷
彼の返答に気を良くした俺はにかっと笑って、彼の手を強く握り返し、地面から引き上げた。
🐷
🐷
彼の名を尋ねようとした俺の足元に矢が突き刺さった。
追っ手がきたか。
俺は剣を握りしめた。
🍌
🐷
🍌
青年は俺から受け取った斧握りしめ、ピリジャー達の方へ向き直った。
🍌
🐷
🍌
二人同時に、足を踏み出し。 武器を振りかぶって略奪者達に向かう。
さぁ、反撃開始。
そこからはまぁ速かったこと。
怪我を負いながらも最後まで諦めずに彼は戦った。 そんな彼を上手くカバーしつつ俺も戦った。
気がつけば略奪者は残り一体だった。 すっかり戦意をなくし、命乞いをしてきたそいつを冷たく見下ろして俺はトドメを刺した。
襲撃は終わった。
…
打って変わって明るく、騒がしい村。
俺たち二人は村を救った英雄として村人達に崇め称えられた。
__今夜は宴だ!
一人の村人が高らかに叫んで、わっと歓声が上がった。 そして、その宴の準備をするために、俺たちの周りに集まっていた村人達は散り散りになった。
一気に人がいなくなり、沈黙が支配する。 そんな沈黙を破ったのは彼だった。
🍌
🐷
🍌
🐷
🍌
初めて、彼が笑った。
なんだか柔らかくて、可愛らしい。
🍌
🍌
🐷
🐷
🍌
俺は少し考える素振りを見せ、こう答えた。
🐷
🍌
彼は素っ頓狂な声をあげた。 ふは、顔おもろ。
🐷
🐷
🍌
🐷
🍌
🐷
俺は若干重い足取りで拠点に戻るために彼に背を向けた。 またあの距離を歩くのか。あーヤダヤダ。
___あ、そういえば。
大事なことを忘れてた。俺は彼の方に振り返る。
🐷
青年は目を逸らしながら小さな声で名乗った。
🍌
🐷
おんりーチャンは「なんでちゃん付けだよ」とでも言いたげな表情でこちらを見つめてきたが、俺は気づかないフリをして彼に背を向けて自分の拠点の方角へと向き直った。
🐷
🐷
🍌
彼の返事も聞かないまま、俺は歩き出した。
『ありがとう。』
彼がそういってくれた気がした。
この森に足を踏み入れるのは、果たして何度目だろう。
そんなに通り慣れているわけでもないのに妙に懐かしいような。
道に迷うことなく、ずんずんと森の中を進んでいく。
木々の間から差し込む日光や動物達の鳴き声がとても心地よい。
____ねえおんりーチャン。
俺、ホントはこの村の交易相手なんてどうでもいいんだ。 拠点を雑に造ったってのも嘘なんだ。
ただ、アンタとまだ一緒にいたかったってだけ。
何故って?
アンタがこの村を守り続けたアイアンゴーレムに胸を打たれたように。
俺も、アンタに惹かれたのさ。
さて、この森から拠点までちょうど3000マス。 今回はどのくらいでここまで戻ってこられるかな?
俺はおんりーチャンとのこれからの暮らしに胸を躍らせながら手持ちのパンに齧り付いて、一歩踏み出した。
拠点まで残り2999マス。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
佐藤。
コメント
2件
感動しました…!!
好きです .ᐟ( 唐突な告白 ) やっぱ🐷🍌はてぇてぇですねぇ… 良ければ🍆🍌書いて欲しいです! 応援してます!!!!!