コメント
2件
めっっっっっっちゃ好き
後日
バーが暫くの間休業し、唯一の手掛かりである電話帳も 生憎機能せず
"あの人"の手掛かりは今だに見つからないままだ
店が開くまで何をしようか考えた時
"あの人"に言われた通り 僕の描きたいものを描こうと思う
今日は 其の"描きたいもの"が家に来る日
僕は早々に部屋を片付ける事にした
散らかった酒瓶をまとめ、突起した筆を束ねていた 丁度その時
ピンポーン
一本のドアチャイムが 隙間なく響き渡った
フランス
フランス
手に持っていた物を乱雑に置き 玄関へと向かった
フランス
ガチャ
ドアを開けると
紺色のモーニングコートに 青のネクタイ
微かに光る金の片眼鏡 年季の入ったシルクハット 雪の様に白い手袋を身につけ
如何にも紳士らしい男が 立ち尽くしていた
イギリス
フランス
フランス
イギリス
キョトンとした表情で 台本をスラスラと読む様に話す君
フランス
目を細めて微笑みかけた
フランス
イギリス
イギリス
イギリス
イギリスは咄嗟に目を逸らし
自分の心情を掴まれまいと 顎に手を当て口を隠している
さっきと比べて やけに早口
フランス
フランス
フランス
イギリス
フランス
誰かを家に招き入れるなんて 何時振りだろうか
イギリス
イギリス
イギリス
フランス
革靴の音が止まる
イギリス
フランス
左手を右肘に当て 右手で顎を触り 考える仕草をしてみる
フランス
フランス
イギリス
イギリスは眉を顰めた
フランス
フランス
イギリス
イギリス
紳士紳士って…堅いなぁ
フランス
フランス
フランス
フランス
フランス
イギリス
イギリス
イギリスの顔がほんのり熱っているのは 気のせいだろうか
フランス
フランス
顔をわざと近づけて悪戯に口角を上げた
イギリス
お湯が沸騰したように赤くなる君
イギリス
イギリス
僕の意図に気づき、我に帰ってしまった様だ
これ以上は…控えておこう
フランス
フランス
イギリス
フランス
僕は窓横に置かれたダイニングチェアを指差した
イギリス
イギリス
畳んだ上着を差し出す君
フランス
イギリス
ポールハンガーに服を着させる様に服を丁寧に掛けて 椅子に腰をかけるイギリス
窓の光が君を照らし 其の空間だけが明るくなっていた
ずっと毛嫌いしていた朝を 少し良いなと思った
フランス
両手の親指と人差し指を重ねて 額縁を作ってみる
僕が描かなくても 一つの絵画として完成してしまいそうだ
イギリス
フランス
フランス
フランス
食器棚からティーカップとソーサーを 取り出しに行く
カチリと音を立てて君の前に差し出した
フランス
イギリス
フランス
フランス
イギリス
フランス
フランス
フランス
フランス
イギリス
フランス
フランス
イギリス
フランス
フランス
フランス
イギリス
フランス
フランス
イギリス
口元がティーカップで覆われ 声が籠って聞こえた
フランス
フランス
イギリス
僕はキャンパスの方へ向かって歩き出した
スツールに腰をかけ、木箱から無作為に鉛筆を取り出す
フランス
カッターナイフで先端を削り、屑を床に落とす
果てしなく広がる白い布に 一本の鉛筆を走らせる
まず輪郭から描き体全体のバランスを整える
…………
何だか…久し振りの感覚
思う様に出来ない
人の体は複雑
指の細かい構造まで分析しなければ
そして、もう一度 解剖学の勉強をしなきゃ…
数時間後…
イギリス
イギリス
僅かに手を痙攣させる君
其れでも平常心は保たれている様に見えた
フランス
フランス
イギリス
呼吸を荒くさせ
ティーカップをソーサーの上に静かに置いた
幾ら体が疲れているとはいえ 物を丁寧なまでに扱う
君は、本当に紳士だ
イギリス
僕の心の声が漏れてしまったのかな
フランス
イギリス
イギリス
椅子からゆっくりと立ち
硬直した体を解しながら
僕の方へ向かってきた
イギリス
フランス
フランス
イギリス
イギリス
まじまじと見る君の横顔が僕の目に映る
フランス
君の美しさを絵で表現するなんて 100年早いかも知れないな…
其れからも僕は絵を描き続けた
夜
フランス
フランス
手を頭の後ろに持っていき カリカリと掻く
イギリス
イギリス
イギリス
フランス
イギリス
後ろへ導かれる様に君は背中を向けた
フランス
僕は見えなくなるまで 其の背中を見送った。
続