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林の中。 草木が、ある1箇所を囲うように伸びている。
風に吹かれ、草が触れ合い、カサカサと。
紛れ込むように、少し濁った川が、 ザアザア流れていく。
梅雨の少し手前。
じめじめと、肌が気持ち悪く感じる。
それでも、天候は季節に並び、空気を読むもの。
いや、「 ぼくたち 」にとっては
「 引き寄せる 」ものなのかもしれない。
ぽつ...
1つの雫が地面に打ち当たる。
ぽつぽつ...
2つ、3つ。どんどん数え切れないくらい、音が多くなる。
小雨
ちゃぽん...っ
大きな雫が、川の流れに連れてかれた。
小雨
小雨
ざあざあ
柔らかい雨から、少し強まる雨。 密かにレインコートに当たるのがわかる。
それを、どれくらいの人が嫌うだろう。
小雨
小さな音。
草木に雫が当たり、ぽたぽた、と 音をたてる。
それは、きっと。 ぼくにとって、大切な居場所。
小雨
小雨
小雨
ザリ...ザリ...
小雨
小雨
あのね。ぼくはね。
小雨も悪くないと思うんだ。
ざり、ざり...
雨は、まだ降っている。ただ、それはぼくにとって、嬉しいものだった。
地面が濡れて、小さな雫が引っ付いてくる。
少し、足元に目を凝らして夢中になってしまう。つい、たのしくて。
通りすがりの人
あ。
不意を突かれた。 そう瞬時に思い、嬉しさに身を任せていた足が止まる。
通りすがりの人
通りすがりの人
ぴちゃぴちゃ。 通りすがりの人が走っていった時、 聞こえた音。
小雨
小雨
小雨
ざーざー...
ざーざー...
ざーざー...
小雨
もやもや、と。
霧に包まれそうになる。 目の縁があつい。
ぱしゃん...っ
小雨
ぴちゃ。ぴちゃ。
水たまりに つい、飛び込んでしまった。
もちろん、レインコートは濡れた。長靴も濡れた。 ぽたぽたと、雫が落ちる。
目からも、雫が落ちる。
小雨
涙を拭った。 仕方ないとわかってる。天候を引き寄せれるだけであって、
全ての責任を背負う訳では無い。 わかってるのに。
心は、悲痛と責任を感じてしまう。
小雨
レインコートをぎゅっと握りしめる。強く、強く。 どうにもならない気持ちを抑えるために。
小雨
今は、ただ
あの人に、側にいて欲しい。
ざーざー。
先程よりも増して、雨が荒くなる。
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??
??
??
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ぴちゃぴちゃ、雨音が響きながら。 男は意地悪く笑い、傘を広げ、歩いていった。
雨やどり 前編