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プロローグ
助けたいと思うたびに流れる涙。 何度、一体何度絶望しただろう。 君に救われた生命すら、価値がないと言われ続ける日々。 そんな世界で生きているなんて、僕には無理だった。 諦めることはひどく簡単で、 だからこそ、 僕は、他の誰でもない君のために。
〈1〉
今日もなにもない空っぽな日々が 遅く遅くゆっくりと過ぎていく。 何色にも染まることのない モノクロの世界に嫌気が差して、 屋上の端に立つ。 あと一歩進むだけで、このモノクロの世界に終止符を打つことができる。 そう思うと、不思議と心が軽くなった。
僕
ぼそっとうわ言のように呟いて、力なく体を果てしない空へと投げ出す。 誰に向けたものなのか、 自分でもわからないけれど、 ふっと頭に浮かんだのは 「ごめんなさい」 の一言だった。
一瞬の時間のはずなのに、世界は スローモーションに切り替わる。 こんな日に限ってきれいな青空、 見せないでほしかったな。 ポロポロと無意識にこぼれだす涙は 後悔か、贖罪か、 いや、もうどうでもいいことだ。
パシッ!
手が、強く引かれた気がした。空中にいるはずなのに高度は下がらない。
ヒカル
高めの明るい、 力強い声が上から聞こえてくる。 虚ろな目で、 自分の手を掴むなにかを見つめる。
僕
自然に出てきた言葉。 望んでいるはずなのに体が震える。 涙は止まってくれない。
ヒカル
なんで、こんなに必死なんだろう。僕は、この人と話したこともないのに。 僕の手を、死んでも離さないという表情で掴む彼に、ドロドロとした感情を覚える。
僕
ズルズルと、彼も空中に身をさらす。 あぁ、僕のせいでこの人は死ぬのか、そう思ったときだった。
バンッと屋上の扉が勢いよく開く音がした。
ヒスイ
やや低い声のメガネを掛けた男が近寄ってきた。
ヒカル
ヒスイという人に声をかけられて気が緩んだのか彼はバランスを崩した。
ヒスイ
一瞬ガタッと落ちた高度が再び止まり、ゆっくりと上っていく。 上で二人が一緒に引き上げているらしい。
ヒスイ・ヒカル
息の切れた二人がじっとこちらを見つめている。 ヒカルと呼ばれていた、僕を最初に助けてくれた人は満足げにこちらに笑いかけてきた。
ヒカル
その優しさは眩しすぎて、 今の僕には最も苦しい言葉だった。 今は、今だけはこんな人に 会いたくはなかった。 助けてなんてほしくなかった。 彼の言葉になんの反応もせず、 またフラフラと屋上の端へ向かう。 足を乗せ、準備ができたら、 また一歩、前に踏み出す。 一度やったらひどく簡単だった。
今度は、ヒスイと呼ばれていた人に 急に手を引かれ、 後方へと飛ばされた。 ドサッという鈍い音がした。 どこかにぶつけたのだろうか、 痛みのせいで動けない。
ヒスイ
キッと睨みつけられる。 眼鏡越しでも伝わる鋭い視線の威圧感が僕の心に突き刺さる。 それでも、今は何も聞く気にはなれなかった。 二人のどちらとも目を合わせず、 急ぎ足で屋上を出る。
僕
ぼそっと呟いた言葉は二人には届いていない、はずだった。 バタン、とドアが閉まると同時にヒカルはハッとした。
ヒカル
ヒカルが走って追いかけようとするが、ヒスイが静止した。
ヒスイ
ヒスイはあんな態度を取られたことにイライラした様子でヒカルを説得しようとする。
ヒカル
あまりにも真剣なヒカルの様子に圧倒され、ヒスイは口をつぐむ。
ヒカル
ヒスイ
ヒカル
ヒカルはヒスイに飛びついて喜ぶのだった
ヒスイ