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‘ 気持ち悪い ’
‘ アンタなんか産まなきゃよかった ’
‘ 消えちまえばいいのに ’
‘ いなくなってしまえ ’
‘ 嫌だ ’
‘ 捨てないで ’
‘ イイコにするから ’
‘ 僕を見捨てないで ’
‘ 僕をそんな目で見ないで ’
‘ 僕を 、助けて __ ’
空が 、まるで石灰を溶かしたように白濁としていた 。
煤けた病棟の窓越しに見える景色の隅には小さく桜が咲いていて 、僕は今が春であることを初めて知った 。
ここに来て 、何日経ったのだろうか 。
時計もない 、日記も禁止 。
カレンダーですらどこにも見当たらない 。
10歳の誕生日に家を追い出されて 、訳の分からない白衣を着た連中に押し付けられて 、それから僕は月日を一度も見ない間に15歳になって 。
時間の感覚すら 、色と共に消えていく 。
虚しくなって 、僕はそっと自分の病室に戻ることにした 。
日光の当たらないこの病室で過ごす僕にとっての朝は 、看護師が薬を渡しに来るところから始まる 。
看護師
そんな無機質な声と共に差し出される白い錠剤 。
「 色が戻る薬 」 __ という名目だが 、効果は一時的だ 。
寧ろ 、反動で身体がやつれていく副作用の方が目立つ 。
正直 、味もクソ不味いので飲みたくはない 。
看護師
看護師
看護師
看護師
看護師
看護師
そう淡々と告げる看護師とは裏腹に 、僕は酷く動揺していた 。
この 、時が止まって死んだような療養院に人がいたこと 。 そして 、全てとの関わりを僕に拒絶させようとするここの管理者が 、それを許可したこと 。
そのこと全てが信じられない 。
………… ただ何故か 、僕の心臓は灼けるように興奮している 。
そんな期待にも似た感情を押し戻すように 、僕は薬を噛み砕いて飲み込んだ 。
喉仏が震えた 。
いつもより少しだけ 、その錠剤を苦いとは思わなかった 。
コツ 、コツンと規則正しいリズムを刻みながら 、僕は看護師の後ろについて行った 。
看護師
看護師
看護師はそれだけ返して 、また黙った 。
ここの看護師は … いや 、ここの大人は 、僕と必要最低限の会話しか交わさない 。
関係を持つことを拒絶するような 、突き放すような口調があまり僕は好きではなかった 。
………… だって 、両親のことを思い出すから 。
ペット以下の扱いを受けて過ごした最低最悪の10年間を 、少しでも思い出してしまった自分が嫌で嫌で仕方がない 。
そしてそれと同時に 、僕は考えてしまう 。
薄っぺらい価値観で子供を虐げる大人しかいない家と 、死んだような目をした大人しかいない療養院 。
どっちが 、マシなのかって 。
そう悶々としている横で 、足音が止まった 。
看護師
看護師がそう言って扉を開け 、小さく僕を手招く 。
そこには 、4人の少年少女たちがいた 。