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琴音
祐太朗
この10年、私は毎朝、 祐太朗の家の前で彼を待つ。 学校に遅刻することは 慣れている事だ。 朝起きて1時間の私と、5分の祐太朗 呆れもいつか普通の事に変わる。 玄関のドアを勢いよく開けて飛び出した祐太朗は振り向かずに走り出す。 少し後ろを走る私は祐太朗に向かってカバンを投げる。祐太朗は両手にカバンを持ち、大きな声で「おせーよ!」と私を馬鹿にする。 私は走るのが苦手だ。 少し走り、赤のままの信号を気にもとめず走り抜く。後ろで男の人の罵声が聞こえる。 学校が見え始めた頃、丁度先生がその門を閉める。私達が見えているはずなのに知らん顔だ。ガチャンと閉まる音と共に、祐太朗が「クソが」と言い放つ。 学校の門が見えても簡単にはたどり着かない。学校は大きな坂の上にある。これが1番の難関だ。時間が無くても容赦ないこの長い坂道は私達の身体に汗を流させる。
俊
琴音
私の背中を叩き、前を走る祐太朗の頭を叩いて私達を追い抜き、前を走るのは俊。 祐太朗にやり返されて「痛てー」と大きな声で叫ぶ。祐太朗は力加減が出来ない。 今も俊の2倍、勢いが強かった。 私達は騒ぎながら坂道を走る。 俊は振り向き「明日は置いてくなよ」と口を大きく開き笑っている。 走っているのに余裕そうなのは運動神経が人一倍優れているからだ。 学校の門は飾り同然。 私達は当たり前のように飛び超える。 俊が先に行き、祐太朗が投げた2つのバックを持って靴箱に向かう。 祐太朗は飛び越えたあと、当たり前のように私の手を引く。 靴を履き替えてからは荒い息を整えながら、ゆっくりと教室に向かう。 学校には着いた。 だから焦る必要はない。 なんて、既に遅刻しているやつが言うことだろうか。
祐太朗
俊
祐太朗
琴音
俊
祐太朗
琴音
祐太朗
琴音
祐太朗の背中をバンッと強く叩く
俊
琴音
1980年8月、私達はいつもと変わらない毎日を過ごす。 感じるのは段々と夏が暑くなっていくことと、 都会が遠い存在になっていくこと それぞれ別の方を向いていることには 誰も気づいていなかった