[はじめに]検索避けの為に、名前などはぼかして記載します。
さの×すえです。
よろしくお願いします。
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「せーやくん、どうしたん?」
「うん?うん」
せーやは、ソファに座りながらぼぅっと宙を見ていた。
さのの見てる限り、かれこれ数分はそうしている。
手に持っているお茶は、とっくに冷えきっているだろう。
時刻はもう夜。
そろそろベッドへ入っても悪くない時間だ。
さのは明日のタイマーをかけて、スマホを充電器にさした。
せーやは、ぼんやりどこを見るでも無く視線を泳がしていた。
今日、仕事中なんとなく見たさのの顔が、自分の認識している子供のような顔では無く、いつの間にか大人の顔になっていた。
それに気付かないふりを、ずっとしていたが、最近どうにもならなくなってきた。
子どもの成長は早い。
自分は、もう老けるだけだが、さのはまだまだ大人の見た目になっていくだろう。
そう感じるのは、嬉しいよりも、複雑な気持ちの方が強かった。
「⋯⋯せーやくん、今日はせぇへん? 」
さのが、申し訳無さそうに誘いにくる。
「あ、ううん!ベッド行く行く」
せーやは、一旦考え事は頭の隅に置いて、さのの待つベッドへと駆け寄った。
さのとのこの時間は、いつだって甘い。
大切にされていると感じるし、それを疑ってなどいない。
「さの⋯」
だからこそ、自分はいつだって抜け出せるように、仕事を頑張ろうと思った。
恋人が居なくなっても、仕事と夢があれば自分として生きていける筈だ。
そういった逃げ道⋯でもないが、自分の世界を持っているのは大切な事だと思う。
「せーやくん、好き」
そう言ってくれるのは、あとどれくらいだろうか?
「ん⋯ッ」
この、いつまでもぎこちない手。綺麗な身体。
ずっと自分のものであって欲しいと、そう思う反面、自分のものでいる筈が無いと、心のどこかで強い警告が鳴る。
「⋯せーやくん、なんで泣いてんの?」
「⋯⋯泣いてへん」
しまった、と思ってももう遅い。
「泣いてますって。⋯今日嫌な事あった?言いたく無い事?」
優しさが辛い。
「⋯⋯言いたく無い⋯」
「⋯⋯⋯そっか」
さのは自分には、打ち明けてくれないのだと、しょんぼりするが、とても言えるわけが無い。
せーやは、自分の未熟さに腹が立った。
こんなところで、泣いてしまうなんて。
しかし最近、常に不安に感じていて精神的に参ってきているのは本当だった。
「⋯なんか、おれにできる事ないですか?」
さのは、依然心配そうにせーやの肩をさすった。
「⋯⋯じゃあ⋯、隠し事せんとってほしい。おれが傷付く事でも、全部言うて欲しい」
「別に何も隠してないですよ?」
考えている事がバレるかとも思ったが、そうでも無かったみたいだ。
「これから!これからなんかあったらで」
「⋯うーん、わかりました。あ、でも企画とかは⋯」
「いやそれは全然ええ。プライベートの話な」
さのは真面目やなぁと、少しだけ微笑ましくなった。
「うん。嘘つかないです」
さのの真っ直ぐな目。
いつか、この目も曇る日がくるのかもしれない。
いつか、素直な女性に心奪われて、自分との事は黒歴史になるかもしれない。
自分に隠し事をして、別れを切り出すのを濁った目で伺う日が来るかもしれない。
そうなる日が、いつくるのかと怯える事しかできないのが辛かった。
そうなっても、さのを責めるつもりは無いし、自分との事は無かった事にしても良いと思っている。
ただ、絶対に有耶無耶に関係を続けられるのだけは、嫌だと思っていた。
「⋯絶対な。⋯絶対、⋯ほか⋯ッ」
ぶわっと感情が出てしまい、喋れなくなってしまった。
「⋯ごめ、ん。おれ」
「せーやくん、疲れてるんですよ」
さのは、せーやを強く抱き締めたまま、後ろに倒れ込んだ。
せーやは、さのの上でうつ伏せのまま涙を服に染み込ませた。
「⋯ねえ、せーやくんも、おれに正直でいてくれます? 」
「え、なに」
ドキッとした。自分に言われると、困る。この感情を知られるのはまずいと思うから。
「おれねぇ、ほんまはせーやくんといつまで付き合えるかなぁて、思う事あるんです」
「⋯⋯うん」
本人の口からこう言われると、胸がチクリと痛かった。
「今はこんな感じですけど、そのうち女の人抱きたなるんちゃうかなーとか、こんな歳下とやってられっか、ってならんかなぁとか。あと、もっと忙しなったらおれが邪魔になるんやないかなーとか」
さのは、ポツポツと低い声でもらした。
「⋯⋯⋯⋯それは、さののほうやろ」
せーやは、うつ伏せのまま目を見れなかった。
「さのは、まだ若いし⋯絶対なんぼでも相手おる⋯。おれはもう、若い時色々したから、そんな気ぃおきへんもん⋯」
「もん⋯って可愛いな」
さのは、せーやの髪を撫でながら笑った。
「うーーーん。せーやくんが今日悩んでたんってそれですか?」
「⋯⋯⋯⋯うん」
バレてしまっては仕方ない。
「⋯わかった!ほな約束しましょう!」
さのは、強制的にせーやの顔を持ちあげた。
「おれかて不安なんですから!お互い気になる事とか、絶対どんな手段でも伝える約束!」
「手段」
「言いにくかったら、手紙でもええし、伝言でもええ。とにかく伝える事は絶対にしましょ!話はそれからやないですか?」
「⋯⋯絶対やで?」
せーやは、少しだけ納得したように頷いた。
「せーやくん、おれの事見くびってると思うねんなー。せーやくんが振らんかったら、おれ、せーやくんの老後介護する所まで計画いってますからね」
「⋯なんそれ(笑)」
若さ故の自分への自信だな、とも感じるが、もしかしたらもしかするかもしれない。
「⋯ちょっとだけ、安心した」
せーやは、さのの目をみてコテンと頭を傾けた。
確かに今起こっていない事を心配しても、どうしようもない。
「おれは、せーやくんと離れる気無いですからね」
今はこの言葉を信じよう。
「おれも⋯」
せーやは、今夜は沢山愛情を伝えよう、と、さのに深いキスをした。
《おわり》
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