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からんころん…
「…は?」
誰も居なかった。
常に誰かしらは飲んでるのに…、珍しいな。
いつも居るのは…安吾とオダサク…それから檀と太宰…、佐藤と永井も昨日居たし…芥川や久米、菊池だってちょくちょく来ているはず。
なのに…、なんで誰も居ねぇんだよ?
クソ、太宰は何処にいる?
…檀だ。
檀のヤローなら知ってる筈。
食堂か?中庭か?…食堂だ!
先刻迄気持ち良く酔っていたというのに、酔いはとっくに覚めていた。
散々考えたせいか、酔いのせいか、不安のせいか分からないが、酷い頭痛がする。
頭痛に顔を顰めながら早歩きで食堂に向かった。
中原中也side-1
携帯電話をそっと仕舞う。
持っていたら、きっと彼奴に連絡してしまうと思って。
まだ頭がぼんやりしている。今、何をしたら良いのか分からない。
こういう時、いつもは彼奴に連絡して、大好きな彼奴の声を聞いて安心するのに。
『良く頑張ってるね。中也は大丈夫だよ、私が付いてる。』
って、優しく、慰めて……
「ッぅ…、グスッ」
嗚呼、不味い、涙が出てきた
目の前には司書が居るのに。
初対面の人間に、涙なんて見せたくない。
恥ずかしくて、見られたくなくて、しゃがみ込んだ。
「…中原さん」
今話し掛けないで欲しい。でも、声を掛けられたからには答えないと、でも、…
後ろを向いてしゃがんだ儘答える。
「…ンだよ」
「中也先生が太宰先生を連れて来るまで分からないですけど…、」
泣いてる俺を気遣ってるのか、遠慮がちに話し始める司書。
「僕が知る限り太宰先生は浮気なんて…」
あ、駄目だ。
今の状態で人と話したら駄目だ。
精神がやられてネガティブになってるだけか?
此奴のフォローが駄目々々にしか聞こえない、
「ッすまん、いま、話かけないでくれ…、」
自分が思ったより声が出なかった。
「…ごめんなさい、」
ぽつんと謝罪を呟かれると此方まで罪悪感を抱くから辞めて欲しい。
顔を隠すように帽子を深く深く被った。
中原中也side-2
食堂に入ると、思った通り檀が居て、料理を作っていた。
「なぁ、檀」
「ん?…嗚呼、中也。どうした?」
「太宰何処だ?」
檀は少しも考える素振りを見せずに、安吾の部屋でオダサク達と飲んでる、と即答した。
矢っ張り此奴太宰の事なんでも知ってンな、
俺、恋人なのに。
ただ、今は太宰をオレンジ髪のアイツに会わせて、浮気を問い詰めるのが優先だ。
何となく分かるんだ、オレンジ髪のアイツが今すげぇ傷ついてる事。早くしねぇとな。
礼を言って、走り出した。
バンッ
「…太宰」
檀の言った通り、太宰は安吾とオダサクと飲んでいた。今、俺等がどんな気持ちか分かっててやってンのかよ?
「ち、ちゅうやさん…?怒って…」
「つべこべ言わずに着いて来い!」
太宰のシャツの襟を掴んで引っ張る。
ちょっともたついたが、直ぐ体制を立て直して俺の隣を歩く。此方をちらちら見ながら、俺の顔色を窺って来る。
そんな太宰に苛ついて、ふいっ、と顔を背けてから声を掛けた。
「…なぁ」
「ハッはい」
「………」
声を掛けたは良いが、今此処で話して良いものか迷う。オレンジ髪のアイツと一緒に話した方が良いか…。
「やっぱなんでもねぇ。急ぐぞ」
「ぇ…、ぁ、うん」
中原中也side-1
気まずい空気が司書室に流れる。
こんな風になるくらいだったら声を掛けなくて良かったのにな、
早く帰ってきてくれよ、もう一人の俺(?)…!
嗚呼…そろそろ限界だ。
太宰、太宰…、
携帯電話を取り出して、通話釦を押そうとした所で司書室の扉が開く。
やっと来てくれた、太宰…、
今はもう浮気とかどうでも良くなって、太宰に会いたかった、兎に角太宰の声が聞きたかった。
なのに。
来たのは、もう一人の俺(?)と、身長の高い赤髪の誰か。
太宰は…?太宰は何処だ?
「…連れて来た」
「な、なぁ中也…、この人、誰…?」
「あ”ぁ”…?」
ふと気付くと、司書は退室していた。
なんでこういう空気は読めるのに…、
「分かってンだろ」
「なぁ、」
もう一人の俺(?)には聞きたいことが有る。
まず、
「此奴誰だよ?」
「は、? 誰、って…
太宰に決まってるだろ」
此奴が、この赤髪が、太宰?
どういう事だ?俺の大好きな太宰は、もっと、違う、
「違う、俺、此奴の事知らねぇ」
「はぁ…?此奴は太宰だろ、テメェの言う太宰ってなんだよ」
俺のだいすきな太宰、写真なら沢山持ってる。
だから、1枚選んでもう一人の俺(?)に見せた。
「…此奴誰だ」
「太宰だぞ」
二人の…否、三人か、の間に沈黙が流れる。
もう一人の俺(?)が言う太宰は、目の前の赤髪の奴で、俺の太宰は、今此処には居ない…
じゃあ、浮気、はしてない…?
「偶々、中原中也の彼氏が太宰治、が二組有っただけ、って事か…?」
「そうじゃねぇと、説明がつかねぇ」
「だ、だって、俺の太宰赤髪じゃねぇもん…」
太宰(?)は状況が呑み込めてねぇのか、おろおろしてる。
もう一人の俺(?)は、安心したように溜息を付いて、太宰(?)にもう帰れ、って言って帰らせた。
太宰(?)は最後まで戸惑ってたけど、もう一人の俺(?)が後で説明するらしい。
「太宰に連絡して良いか…?」
「嗚呼。」
携帯電話の連絡帳、太宰は一番上。
通話釦を押すと、ワンコールで出た。
「…もしもし、」
『中也、どうしたんだい?』
「なぁ、会いたい」
『…!甘えるなんて珍しい…』
「……」
『なんかあったんだね。今直ぐ帰るから待ってて』
「ありがと…」
もっと話していたかったが、電話を切った。
早く太宰に会いたい。
「…疑い、晴れたな」
「嗚呼、よかった、太宰が浮気してなくて…」
「こんな偶然あるんだな」
そう微かに笑うもう一人の俺(?)。
窓の外を見詰めて、それから自分の手を見て、一度目を閉じて決心したように此方を見た。
「…また、会わねぇか?」
丁度俺もそう思ってた。だからその提案は嬉しかった。だから、勿論承諾したし、次はお互いの太宰連れて来て彼奴等驚かせようぜ、なんて話もした。
帰る時、もう一人の俺(?)は、図書館の玄関迄送ってくれた。
「じゃあな、」
手を振ってもと来た道を戻る。
帰ったら沢山太宰に甘えよう。不安が吹き飛ぶくらい、甘い時間を、
蟹を買うことを忘れたけど、太宰は笑って許してくれるだろう。
…今日は、疲れたな。
愛しい恋人の待つ家の扉を開けた。
どうだったでしょうか?
最後の方台詞多めになってしまった
深夜テンションお許しを…
2024/09/16追記
書けなくなってしまった為この話は完結になります。
楽しみにしていた皆様ごめんなさい。