カーステレオのラジオから流れたあの子から教えてもらったあの音楽が流れた。あの子と私は曲の趣味が少し似ていて、彼女が好む物は私も多少好んでいる物が多かった。
ピアノの音が響き、それから段々と他の楽器の音が交わる
どこか悲しいメロディが流れる。
メロディが流れ、26秒後 ゆったりとした歌声が耳に入る
…歌詞の内容は、まるで、人魚姫がハンサムな王子様に恋をした時のような。
潰れた声を枯らしてまで愛してますと叫んだ
という。
あぁ、私もそんな純粋な恋愛をしていた。
あの子と一緒に。
あの子が教えてくれた 好きな曲
昔を思い出せば意思とは反対にはらはらと涙が流れていく。
気付けば鼻は赤らんでいて、とても情けない表情だった。
あぁ…私は彼女にこんな顔みせなかったな。
そもそも、こんな情けない表情みせれないな。
ダメだ、あの子を考えちゃ。
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ダメ
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止まれ
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止まれ
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いけない
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それ以上先は
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脳が赤信号を出している。
でも、止めない。止まらない。昔を思い出すのを止められない。
ぽた、ぽた、と塩っぱい雫を瞳から零していく。
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あぁ、もう、
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愛していた。
ずっと愛してたんだ。
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大事にしたかった
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もっと、もっと、これから先も、幸せにしてあげたかった。
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分かってる、分かっていた
未来なんてわかっているはずだった。
そもそもの話、同性カップルなんて結局は永続きしない事なんて知っていた。
でも、どこか心の隅で期待してた。
137日間、続いたから。
嬉しかった。本当に嬉しかったんだ
ここまで永続きしたのは彼女が初めてだったから。
幸せで、幸せで、幸せ過ぎて涙さえも出た。
彼女も嬉しくて幸せで泣いていた
お互い嬉し泣きをしていた
それぐらい、純愛を互いの間で育ててきた。
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いつの間にか曲は後半に来ていて、
言い訳が欲しかっただけなの
と女の人の歌声が発していた。
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助手席側に乗った私は、隣で運転をしてくれている母にバレないよう
窓を眺める風にしては涙で肩を濡らしていく。
ああ、また目が腫れてしまう。
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───…愛していたのになぁ。
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︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
心の中でそう呟いて、
一旦 過去を甦らせるのは強制的にやめた。
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