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ー・ 一週間前 ・ー
「それでさ、まふゆが『 あまりわからない』って!」
「いつものことじゃんー!」
「でもー」
そんな他愛もない会話。
下校しようとして廊下を歩いていたとき、たまたま絵名と会った日だった。
「ばーか!」
「お前さ、そんな顔でよく出歩けるねwww」
廊下の突き当たりで、三人程の人が誰かをいじめていた。
「・・・」
「無視するなよ」
「痛っ!」
いじめられっ子は殴られ、頬が真っ赤に腫れている。
悪口だけでも酷いのに、殴るなんて。
堪らず、いじめられっ子に声をかけた。
「君、大丈夫!?保健室行こ!」
ボクはいじめっ子に話しかけられる前にいじめられっ子の手をとり、少し強めに腕を引っ張った。
絵名がボクに追いついた頃には保健室についていた。
「大丈夫です。私はもう帰ります」
いじめられっ子の言葉。
「あんなに思いっきり殴られて大丈夫なわけないでしょ」
絵名が引き止める。
ふと時計を見ると、もう授業の10分前になっていた。
「絵名、この子はボクが見てるから、授業行ってきなよ」
「でもこの子・・・」
戸惑っていたが・・・これはあれを使うしかない。
「絵名、朝に弱いからって夜間制にしたのに作業に時間とられて単位ギリギリって言ってたじゃん」
そう、ボクが授業に出てもらいたかったのは単位をとってもらいたかったから。
この子は気になるが・・・絵名に留年されるのはなんだかとても嫌だ。
「単位ギリギリって・・・私は大丈夫ですので、授業出てきた方がいいんじゃないですか?」
いじめられっ子も授業に出そうと必死だ。
「そう言われても・・・」
まだ躊躇っているのか。それならここでトドメの一言を。
「陰険自撮り女ーっ!」
「陰険自撮り女!?」
「えななんのことだし、作業と称して加工でもしてたんでしょー?」
さすがに本心ではない。
「うぐっ・・・」
・・・・・・図星だったようだ。最近遅くまで起きていると思ったら写真の加工をしていたのか。
「卒業できなかったら大変だからさ、この子はボクがちゃんと見とくから行ってきなよ」
「・・・わかった。ちゃんと見といてよ」
絵名は諦めたようだ。
「じゃあ行こうか」
「はい」
行こうと言っても、保健室の前で話していたので保健室に入るだけなのだけれど。
「あの・・・」
いじめられっ子が養護教諭に話しかけた瞬間、養護教諭は気づいたようでこう言った。
「またあなたなの?いじめなんて自分でなんとかしなさい。あたしは手貸さないからね」
え?
本当にこの人はちゃんとその道の勉強をしている人なのだろうか。
普通、こんなに顔が真っ赤に腫れている生徒を前にしたらガーゼくらいは貼るだろう。
それも養護教諭なら尚更。
「こうなるから断ってたんです。」
「痛いですけど、治療してもらえないし」
言葉が出ない。ボクのときと全く違うから。
殴られ誰にも理解してもらえない苦しみは、そう簡単に理解できるものではないから。
「・・・とりあえず、校庭で話そっか」
やっと捻り出した言葉。
「そうですね」
いじめられっ子は、悲しそうな、苦しいのを我慢しているような困り眉でただ笑っていた。