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ガレオス兵の案内で、俺たちは二手に分かれることになった。俺とナビナはガレオスが隠していた転移装置の間に。ウルシュラとミディヌは帝国に入るには目立ちすぎるという理由で、外でのかく乱行動を取ることになった。
特にウルシュラは一度帝都を追い出されている。それだけに監視の中を進むのは厳しいというのが理由だ。
「えー!? 私がミディヌと行動するんですか~?」
「……何だよ、あたしとじゃ不安なのか?」
「だって魔法とか使えないですよね? 私は戦えないのに、どうやって宮廷魔術師を相手にするんですか~」
「あたしには剣がある。あんたは……魔道具で何か作ればいいだけの話だ。だろう? それに――」
確かにミディヌ一人の負担が増える。そう思っていたところで、意外な話が舞い込んできた。ミディヌの視線の先にあるのは、”協力者”の姿だ。
「久しぶりじゃな。ミディヌ」
「へっ、爺さんもな。とっくに引退してたんじゃなかったのかよ?」
「相変わらず口が悪いのぉ。まぁそれはともかく、そちらがルカス・アルムグレーンさんですな?」
それがミディヌの旧友を紹介する……という話だった。
「え、ええ、まぁ。あなたは?」
ミディヌとウルシュラはログナド大陸から来た人間。かつての仲間や友人がラトアーニ大陸に来ていてもおかしくはない。
「わしはただの爺……いや、元は魔術を少々……といったところですな。ガレオスにはたまたま旅行に来ていたんですが、暇を持て余しておりましてな。少しの助けとなれば幸いですじゃ」
ログナドから来てるせいもあるのか、素性は明らかにしてくれないのか。しかしミディヌを知っているし、今回だけでも協力してくれるならありがたい。
「助かります。ではそちらはログナドパーティーということで、お願いします」
「……ほぅ? ではこちらのお嬢さんもログナドから――おや?」
うん?
ウルシュラを見る爺さんの目がおかしいけど、知り合いかな?
「あーあーあー!! ルカスさん、ナビナ! 私、頑張りますから。ルカスさんも頑張って遂げて下さいね!」
「ああ。そうするよ。君も気を付けて!」
「ウルシュラのスキル、最高だしあなたしか使えない。大丈夫! ルカスも期待してる」
「ほ、本当ですか?」
期待に満ちた目で俺を見るウルシュラはたぶん褒められると伸びるタイプ。そもそもウルシュラが一人でギルドを立ち上げていなければ、仲間になることもなかった。
ここはやる気を出させる為にも応援してあげないと。
「本当だよ。ウルシュラの装備のおかげで動けるようになったからね。それに魔道具が作れるなら、十分戦えると思う!」
俺の言葉に感動してしばらく返事が無かったが、
「ルカスさん! ご安心ください!! ミディヌと一緒に宮廷魔術師たちを改心させてやりますよ!」
「うん、頑張って」
話を終え転移の間に行こうとする俺に、
「ルカス・アルムグレーンさん。この先、ログナドに来ることがあるのなら、家名を隠さず名乗ることをおすすめしますぞ」
「しかしアルムグレーンは帝国にはく奪を――」
正確には兄リュクルゴスが一方的に奪ったに過ぎない。名乗るのは簡単だ。だが、俺の身分を隠さなければ訪れる村や町に迷惑をかけることになる。
「ふむ……帝国支配の大陸に居座るのならばそれでもよいでしょう。じゃが、他ではそうはいきませぬ。今後貴族や高い身分の者と会う際は、家名が武器となりましょうぞ」
そう言って爺さんはミディヌたちと外へ向かって行った。
家名か。でも今はリュクルゴスのことが先だ。
「ルカス、城にはどれくらいの宮廷魔術師がいる?」
「え? う~ん……城の中に魔術学院があるから、数は相当数いると思うけど……どうして?」
「賢者を外に出したいなら、存在する宮廷魔術師を全て消さないと駄目」
「消す……って」
もちろん生命的な意味じゃないと思われるが。それも力で何とかするしかないか。
「ルカスは大丈夫。ナビナ、力を使う。使って、賢者以外……全て」
ナビナは戦えないんじゃなかったのだろうか?
俺と行動をともにするということは、何かしてくれそうな気も。
「じゃあバルディンに行くよ、ナビナ」
「うん」
ガレオス兵に見送られながら俺とナビナはバルディン帝国に転移した。