五条悟は薄暗く、札が多く貼られた部屋に足を踏み入れた。
部屋の四隅に申し訳程度に置かれている行燈が嫌に不気味だ。
五条は部屋に入った途端に感じる威圧感に思わず笑った。
部屋の中心には、その威圧感の正体である少女が座っている。
正確には、五条でも威圧感を覚えるほどの呪いに、呪われた少女がだ。
五条は血まみれのナイフを、指で摘み上げた。
「これは何かな?
――崇徳碧海ちゃん」
『ナイフですね』
崇徳は、天井の一点を見つめたままダルそうに答えた
『それより、ここは処刑場か何かですか?私はここで死ぬのでしょうか?』
目の下に隈を作り、気怠げとした様子で少女ーー崇徳碧海はそう言った。
暗いね、と五条は小さくつぶやいた。
五条はナイフを床に落とし、崇徳の前に立つ。
「君はどうして村の住民を殺した後、自殺をしようとしたのかな?」
『どうして、ですか___』
崇徳は五条に少し視線を向け、微笑んだ。
『呪いに開放されたかった、からですかね』
・・・
『完全秘匿での死刑執行?あり得ないでしょ』
『しかし本人が了承した』
・・・
五条は上層部との会話を思い出した。
了承したとは脅迫されて、などではなく、本当に自分の意思らしい。
『貴方は、人を殺したことがありますか?』
「____あるね」
『最悪な気分でしょう』
五条は天井の一点を見つめている崇徳を見つめ、包帯で隠した瞳を細める
「実はね、君の処刑が延期されたんだ」
崇徳はその言葉にぴくりと反応した。
五条は構わず続ける。
「君には呪術高専で力の使い方を学びながら、ちゃんと前を向いて歩くことができる」
崇徳は、恐る恐る五条に視線を向けた。
「一人は、寂しいよ」
コメント
1件
続き待ってます!