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返事ありがどう"…マジ嬉しい
案外上手くできた気がする…! …自画自賛だけど
旅人が璃月での事が終わった後のお話…
その日、公子タルタリヤは往生堂の客郷鍾離に綺麗に欺かれた事を気にしながら帰路についていた。
はぁ、と1つ負の感情がまざったため息をつきながらダラダラと歩いていた。
ふと、自身を欺いた鍾離の事が気になった。
「先生、今なにしてるんだろ…?」
深夜を過ぎたため、もう辺りは真っ暗で灯を見ると目を瞑りたくなるほどだった。
「…しかもまだ俺先生の事好きなのが意味わかんないな…」
そう、今一番頭を悩ませている原因は鍾離についての思いである。
幾つか食事をしている間にいつの間にか鍾離の事を好いていた。
自分はそんな事に振り回される事はないと思っていたが、初恋を、人でもない他国の男。
側から見ればこの人を好きになることなど中々ないと思う、そして”公子”という立場でその考えに確証が出てくる。
が、しかし好いてしまったのは仕方がないと思い、璃月を離れる際に告白をしようと思っていた。
(にしても、ちょっとイライラしてきたな…)
自分が一番欲しかったものが近くにあり、それがあまり鍾離に関わってもいない、同僚に奪われたのだから。
そして何故か嫉妬心も湧いていた。
「…腹いせに今までの借り返せって言おう。」
と、公子が思いついた事をぶつぶつ言いながら璃月内を歩き回っていた。
少し歩いて事件の発端 迎仙儀式、事件の終わり 送仙儀式があった場所に1人ぽつんと見覚えのある背中が見えた。
今更だけど、自分で自分の葬式するって肝座ってるな…なんて思いながら、少し驚かしてやろうと右手の岩裏に隠れた。
数十分後、鍾離が動いたためタルタリヤはその後を追う。
まだ此方には気づいていないようで、夜中の散歩をしているようだった。
璃月の中にある北国銀行辺りから橋がかかっている所まで来た時、足を止めてなにやら少し見えるほぼ見えない海をぼーっと見ているようだった。
よし、今だ。と思った時、
「…俺の責務はもう果たした、友人が、なくなることもない…民からなにも、恨み言も…」
ぽつりぽつりと自身に言い聞かせるように言っていて、公子の耳に届いた為驚きからか、公子の動きが止まった。
まだ璃月の事気にしてるのかな、と思いながら壁に背中を預けてぼーっと突っ立っていると、鍾離は何も言わなくなってしまった。
深夜をいくつかすぎ、段々眠くなって来たため自分がなにをしにきたか忘れかけていた頃、
「っ…はぁ…ぅ…」
何やら後ろ辺りから泣いている声が聞こえた。
もしや、とばっと振り向くと静かにポロポロと涙を流している鍾離がいた。
容姿端麗、どんな時でも綺麗だな…と見惚れてしまった。
数秒後、見惚れている場合ではないと気づいたのか、
「!鍾離先生?」
と、少し早口で名を呼んだ。
すると
「こ、うし殿、っ…何故…?」
途切れ途切れで名前を呼んだきた。
「…っ、すまない、見苦しい所を…ぅ…見せたな…」
そんな事、公子の耳には驚きで聞こえず、
「先生どうしたの⁈なんかあった⁈」
と焦ったような口調で鍾離の手を両手で掴んだ。
なにか言って公子の手を振り払い立ち去ろうとしたが、全力で阻止しようと公子が鍾離の体を真後ろから抱き寄せた。
「っ、公子殿はなせ…っ」
「嫌だよ、なんで泣いてるの…?」
「関係ないだろう…っ、ぐす…」
そんな会話を何回か続けた後、逃げる事を諦めたのか力を抜いていても離れなくなった。
顔を見て話したいと思い、鍾離をこちらに体ごと向かせた。
「先生、どうしたの?」
「…長くなるが、いいか」
うん、と優しい声で返事をした。
鍾離が言うには、旅人達が次は稲妻だと話終わった後これまでの璃月の民からの視線や、旧友の死が減ると言う事で安心し、余裕ができたらしい。
心が軽くなり、気分がいいので橋を歩いてこれまで事を思い出していると、余裕ができた為か、いつの間にか泣いてしまった、と言っていた。
「っぅ…ぐず…っ」
「そんなに余裕なかったんだ…」
「璃月の民の事を、っ考えないといけなかったから、…っうぅ」
と、治ってきた涙がまた出てきた。
いつもとは違う鍾離の一面を見れて嬉しいとは思うが、好いている相手だとやはり苦しかった。
「泣けたのはいいことなのかもね…」
「っ…だれにもみられたくなかった…公子、殿なら尚更…はっ…」
絶望が混じったような息が近くで吹いた。
「なんで?」
「あんな事が、あったから…っひかれるのではと…ぐす」
もうこの人は凡人なんだ、なんて思いながら
「そんな事ないよ、なんなら好きだから安心して?」
「…っ?好き、なのか…?」
本当、その時は時が止まった気がした。
「えっ、あ、っと」
「…友人として、そこまでだったのは嬉しいな…っず…」
鍾離を愛している事がバレなくて安心したが、
嗚呼、本人には伝わってないのか。なんて心の隅で思った。
その心の隅で思った事が
「…愛してるって意味なのにな…」
「…っえ」
ぽろっと出ていた。
言い訳をしようと口を開いたが、もうああ言ったらばれているだろう、と思いそのまま口を馬鹿みたいに開いてしまっていた。
「っ…俺もだ…公子殿の事が好きだ…」
と、まだとまっていない涙を流しながら返事をくれた。
もう嬉しさで鍾離の体を痛いくらいに抱きしめた。
「嬉しい、嬉しいよ先生…!」
自分がこんな声を出しているのにも驚いたが、一番驚いたのは、鍾離は涙の量が増している事だった。
「けれど…っ公子殿は俺と付き合ったら…っぅ…」
「立場?それとも人じゃないから?」
「俺も摩耗が進むだけで…っ、公子殿に不都合しかないっ…」
鍾離は、不安が詰まったような喋り方だった。
言いたい事があったため、一度息を大きく吸って
「俺はいい、鍾離先生になら殺されても。先生の事誰よりも愛してるから。」
「あと、鍾離先生は俺の事好きなんでしょ?なら摩耗しないように俺絶対死なないから。」
「…凡人なら自己中に生きていいんだよ…」
言いたい事を全て言い終わった後ふぅ、と先程驚いた時の心音を鎮めるために息をゆっくり吐いた。
その時、鍾離からかひゅ、と喉から変な音がなり、
「ゔ、っあ”っはひゅ、っゔぅっぐ、」
急に息ができないのくらい大泣きしはじめた。
何か悪い事をしたか、と焦りつつ全力で背中をさすった。
「せ、先生息して!死ぬよ⁈」
「こっ、しどの、ゔゔっ」
段々鍾離の焦点が合わなくなってきて、流石にまずいと思い、
「先生、息吸って…吐いて…」
大きく息を吸って吐いてを繰り返し、鍾離を落ち着かせようとできる限りの事をやった。
「っず、ふ、ゔ…」
段々鍾離が落ち着いてきたので、
「もしかして悪い事言ったかな?」
一番疑問だった事を尋ねてみると、
「安心したっ、ら…息、できなくなっ、て…」
途切れ途切れ話ながら目を擦っていた。
内心すごく安心していたが、
「安心でそんなにって、鍾離先生本当に泣いた事ないんだね…」
泣き疲れたのか、公子に身を預けて深呼吸をしていた。
「…ははっ、今なら先生の事殺れそう。」
「なに、考えてるんだっ…」
「ごめんごめん。」
なんて、さっきまでなにもなかったように会話していた。
その時、鍾離が少し笑った気がした。
まだ真っ暗な璃月港に月光が差し込んで、まるで昼間のようだった。